チョコ王子─どん・び〜・レ〜ト─

ケーニッヒ

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2.ようこそ。ここは可笑しなお菓子の博物館 

4.サヨナラも言えずに

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 突然だけど、今日はお別れの日だ。さっきも言ったけれどセンセイの博物館は今日で閉館する。

 子供達の笑い声も大人達の感心する声も、トムが怒鳴りつけられる声も空調のガコンという音でさえも、もう聞こえなくなるんだ。

 センセイはボクをとっても大事にしてくれているから廃棄って奴にはせず側に置いてくれると思うんだけど、そんな事よりずっと耐え難いお別れがあった。

 「いいか! 傷一つ、指紋一つ付けたらワシの短い人生すべてを使ってお前達を呪うからな!」

 「へいへい。うるさいなー」

 飴細工の少女像あの子だけはその出来を買われて隣町の大きな美術館に飾られる事になった。

 なってしまった。

 トムと見た事の無い若いお手伝いさん数人が彼女の足元にある黒い大理石の台を持ち上げる。

 センセイは非力な上に腰を痛めているのでただ、運び方にケチを付けて誘導するだけだった。

 そっか。キミは遠くへ行ってしまうんだ。幼児が5、6歩進めば着く位しか無かった距離がずっとずっと、遠のいてしまう。せめて顔を……。

 「ちょ、タンマタンマ! 重いわ! 一回下ろそうぜ!」

 「お、おい! 一人だけ力抜くなよ!」

 「バカ! 揺れる揺れる!」

 不味い、バランスが崩れたらしい。ボクには何も出来ない。頼むよ、おバカ達……。

 「休むなー! とっとと運べーぃ!」

 ……行っちゃった。

 あの子はもう、ボクの視界からすっかりと消えてしまった。せめて、首だけでも動かせればまだ違った。悔しい。凄く寂しくて、悲しい。

 夕方。オレンジの光が射し込む。ただし、アイツが照らしているのはもう、あの子じゃなく床に散らばったホコリやチリだけ。キレイともなんとも思わない物。とっとと沈んでしまえ。ボクのキモチのように。

 なんて、何の罪も無いお日様に悪態をついているとボクは天窓から射し込む光とは別に床でギラッとした不自然な白い光を見つけた。

 なんだろう。そうだ。アレは、指輪だ。彼女の麦わら帽子を抑えていない方。ピンッと後ろに伸びている方の手の指に付けてたダイヤの指輪だ。

 ホンモノか偽物か、ボクには分からないけれどそれはギラギラと眩しく輝いていた。

 こんな時、声が出せればセンセイ達を呼び戻せるのに。歩く事が出来たら届けに行けるのに。

 けれどもボクはただの像。チョコの塊。ボクには何も出来ない。ただただ、溶けるのを待つだけ。

 ただ、それだけ。悲しいけれど悲しくは無い。

 これが現実なのだから。
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