妹よりブスな姉の幸せ

Saeko

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第三章 旅立ち

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何やら講堂の方が騒がしいな?何かあったのか?

俺達が入っている学園の寮の窓を開けると、真正面に講堂が見える。
いつもはそこで、貴族科がダンスレッスンをしているのだが、今夜は卒業生の舞踏会が行われているはずだ。

音楽が聞こえるのは分かるが、人がざわめく声しか聞こえて来ないのはどうしてなんだろうか……。
俺はそう思いながらなんの気なしに視線を上に向けた。
するとそこには無数に飛び交う光の球の様な物の中心に、一際大きく光る球体…いや、よく見るとそれは人型をしている光の塊が見えた。

アンジェーヌ様だ!
咄嗟に俺はそう思った。
何故俺がそう思ったのか。

それは、俺がまだ領地にいた頃、兄上が仰っていた言葉を思い出したからだ。

それは……

我ウィンザード領には、アンジェーヌ様とおぼしき方が住まれている一軒の家がある。
たまたま用があった兄上がその家の前を通りかかった時、庭にいらした女性が、キラキラと光るモノ達と楽しげに会話をしていたのをご覧になったというんだ。

そしてきっと、兄上がご覧になったという光の球は、今まさに俺が見ている飛び交う光の球達のようなものだろう。
兄上が見かけられた光の球達と話す女性というのがアンジェーヌ様だったとしたら、講堂上空にある大きな光は彼女に違い無い。

多分あの光の球は、俺と兄上が小さい頃からずっとそばに居てくれる存在と同じ物だろう。
彼女も加護持ちだったんだな。

今度領地へ帰ったら、それについてもお話が出来たらいいな。

と思いながら光の球達それを見ていると、小さな光達と大きな一つの光の球が同じ方向へと飛び去って行った。

それを見届けた俺は直ぐ様自室へと戻り、便箋と封筒を出すとインクで手紙をしたためた。
そして寮の別室に控えている俺の従者に、兄上に早馬でこの手紙を届ける様にと指示を出したんだ。

「御意に」
と一言言って出ていった従者が扉を閉める音を背中で聞いた俺は、領地がある方向を見つめ、
「兄上。アンジェーヌ様が領地そちらへ向かうと思われます。頑張って口説き落としてくださいね?そうして、アンジェーヌ様が俺の未来の義姉上になって頂ける様、頑張って下さい。」
と呟いたんだ。

~ジェフェリー=ウィンザードside 終~

*☼*―――――*☼*―――――*☼*

ふぅ~ 
はぁ……疲れた
舞踏会場から飛んで来た私は、アパルトマン近くにある緑地帯(前世でいうところの 公園ぽい所)の奥まった場所に着地致した。

え?「疲れた」とは、飛ぶのに疲れたのか?って?
いいえ いいえ。飛ぶのはとても超楽しかったよ。空から見下ろす王都もなかなかのものだったし、これで見納めだと思ってるから。
それに前世で見た事があるどこそこの夜景程じゃなかったけど、そこそこ綺麗だったしね。


疲れたってのは、舞踏会での殿下達との絡みの方よ。
ホント、マジでおつむの弱い方とお話するのは疲れるんだよね。


さて
私がこの緑地帯に着地したのには、れっきとした理由があるの。
それは…
『追っ手が来る』と思ったから。

妖精が見える私からすると、リリアン達の姿をちゃんと見る事が出来るけど、彼等を見えない方々からすると光の球に見えるみたいなんだ。
また、私には彼等の声がちゃんと聞こえるから普通に会話が出来るんだけど、他の方々には当然彼等の声は聞こえないから、私が何も無い方を見て一人で話している様に見えるせいで気味悪がられるんだよね。

全く失礼な話だと思うけども、それは仕方の無い事。
だって、人は自分の目に見えるものだけを信じる方が大半を占めるんだもん。

でもまぁ、今はその件に関して論議している場合じゃないよね。
何故なら、学園から私が飛び去る姿をご覧になった方達は、きっと、私の身体が光って見えていた筈で、そんな私を追い易くなっているだろうから。

だからこそ、早く着地して羽根を仕舞い、てか妖精の力を解除して貰って、人に見つからない様にする為にも速攻で移動しなくちゃならないの。
ドレスの色をアイボリーに致したのは、夜の闇に容易に紛れる事が出来ると思ったからだしね。


緑地帯の奥まった所に着地した私は、直ちに妖精の力を解除して貰い、リリアン達を持っていたストールで包み込むと、人が集まって来る前に緑地帯をまんまと抜け出す事が出来た。
そしてマーサが待つアパルトマン迄、暗闇に紛れて一気に走り抜いたんだ。

勿論
明日からの事に、期待に胸を踊らせながらね。
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