65 / 179
第五章 ウィンザード領での生活
10
しおりを挟む
妖精達に植物の種を依頼した翌日の朝。
部屋の窓を開けた私のところに、ザック様の風の妖精ヴァンが訪ねて来たの。
「ジェーン様。これ、アイザックス様からだよ。」
と言って渡されたのは、一通の手紙でした。
封を切って読んでみると、一昨日お渡し致しましたハンバーグの感想だったの。
【親愛なるジェーンへ】
先日はご馳走様でした。
それから、サンドイッチと茶葉もありがとう。
とても美味しくて、おかげで仕事が捗ったよ。
実は先程、王都にいるジェフェリーに、ジェーンの出来たての手料理を食べた事を自慢する手紙を書いて、早馬で送っておいたんだ。
きっともう直ぐ彼のところに届く頃だと思う。
彼がどんな反応をするか?とても楽しみだ。
返事が来たら、君にも見せてあげるからね。
それからジェーン
また近いうちに会いに行ってもいいだろうか?
君に会うと、何故だか力が漲ってきて、仕事が捗るんだ。
もう君がいない生活は有り得ない。
それくらい私の中は、ジェーンへの気持ちで溢れているよ。
君が私を好きになってくれたら嬉しい。
アイザック=ウィンザード
ザック様からのお手紙を読み乍、きっと顔は盛大に真っ赤を通り越して茹で上がった蛸の様だったでしょうね。
だって仕方ないでしょう?
前世でだって、あの裏切り者からでさえ貰った覚えがない、情熱的で感情をストレートに出したLove letterだったんですもの。
ザック様に、耳元で囁かれてある感覚に襲われ、思わず己の身体を抱き締め悶えている挙動不審な私の顔を恐る恐る見上げ乍、
「アンジー様。アンジー様。あのね?僕………」
と言っているヴァンに気がついたの。
慌てた私は「コホン」と一つ咳払いをしてから
「どうしたの?ヴァン」
と尋ねてみたの。
するとヴァンは何故かモジモジしながら、
「アンジー様にお願いがあるんだ。」
「私にお願い?なにかしら。」
「あのね?アイザックス様にお返事書いて欲しいんだ。アイザックス様からアンジー様からのお返事を貰って来て欲しいって言われたの。だから……。」
「え?お返事ですの?今から?」
「うん、今。」
今……ね………
ザック様ってば、ヴァンになかなか強引な頼み事をなさったのね。
お返事ねぇ……
ただお返事を書くだけじゃ面白くないわよね……
そうだ!いい事考えた
ピンッと名案が浮かんだ私は、
「リリアン?」
と私の妖精に呼びかけたの。
すると、光と共にリリアンが現れてくれたのよ。
「ね、リリアン。昨日に引き続きまた今日もお願いで申し訳ないのだけれど、ピンクのガーベラを一輪お願い出来るかしら?」
とリリアンにお願いすると、「はい、どうぞ」と彼女は何も無いところからパッと、ピンクのガーベラを出してくれたの。
流石花の妖精リリアンよね。
「ありがとリリアン。素敵なガーベラだわ。」
とリリアンにお礼を言った私は、急いで隣りの部屋へと向かい、収納棚の箱の中から真っ白な手巾を取り出したの。
私はそれに、ウィンザードの紋の刺繍を施し、ザック様のお色の糸で、彼のイニシャルも刺繍した手巾を封筒に入れて、ヴァンに託す事にしたのよ。
「お待たせしてごめんなさいね、ヴァン。此方をザック様に渡して貰えるかしら?」
と言ってヴァンに渡すと、ヴァンは受け取った物を見ながら
「アンジー様?アイザックス様へのお手紙は?」
と、ヴァンは心配そうな顔で聞いてきたの。
きっと頼まれていたものと、渡された物が違っていたので、不安になったのでしょうね。
だけどそれは想定の範囲内。
「大丈夫よ、ヴァン。貴方が加護をしている彼はとても聡い方でいらっしゃるでしょ?」
「はい!アイザックス様はとても聡いお方です。」
とヴァンが胸を張って答えたの。
「だからこそなのよ、ヴァン。これだけでザック様はお分かり下さるわ。心配しなくても大丈夫。ではよろしくね。」
と言うと、
「アンジー様ありがとう!」
と、ヴァンは嬉しそうに飛んでったの。
私はそれを見送った後、一階へ下りて朝食の支度を始めたんだけど、返事をヴァンに託して一刻もしない内に、我が家に訪ねてこられたザック様に、驚きの声を上げてしまったのは許して欲しいの。
だって本当に驚いたんだもの
そんな私をご覧になったザック様は、たいそう可笑しそうに笑っておられたわ。
ったくもぉ!誰のせいだと思ってんのよ!
部屋の窓を開けた私のところに、ザック様の風の妖精ヴァンが訪ねて来たの。
「ジェーン様。これ、アイザックス様からだよ。」
と言って渡されたのは、一通の手紙でした。
封を切って読んでみると、一昨日お渡し致しましたハンバーグの感想だったの。
【親愛なるジェーンへ】
先日はご馳走様でした。
それから、サンドイッチと茶葉もありがとう。
とても美味しくて、おかげで仕事が捗ったよ。
実は先程、王都にいるジェフェリーに、ジェーンの出来たての手料理を食べた事を自慢する手紙を書いて、早馬で送っておいたんだ。
きっともう直ぐ彼のところに届く頃だと思う。
彼がどんな反応をするか?とても楽しみだ。
返事が来たら、君にも見せてあげるからね。
それからジェーン
また近いうちに会いに行ってもいいだろうか?
君に会うと、何故だか力が漲ってきて、仕事が捗るんだ。
もう君がいない生活は有り得ない。
それくらい私の中は、ジェーンへの気持ちで溢れているよ。
君が私を好きになってくれたら嬉しい。
アイザック=ウィンザード
ザック様からのお手紙を読み乍、きっと顔は盛大に真っ赤を通り越して茹で上がった蛸の様だったでしょうね。
だって仕方ないでしょう?
前世でだって、あの裏切り者からでさえ貰った覚えがない、情熱的で感情をストレートに出したLove letterだったんですもの。
ザック様に、耳元で囁かれてある感覚に襲われ、思わず己の身体を抱き締め悶えている挙動不審な私の顔を恐る恐る見上げ乍、
「アンジー様。アンジー様。あのね?僕………」
と言っているヴァンに気がついたの。
慌てた私は「コホン」と一つ咳払いをしてから
「どうしたの?ヴァン」
と尋ねてみたの。
するとヴァンは何故かモジモジしながら、
「アンジー様にお願いがあるんだ。」
「私にお願い?なにかしら。」
「あのね?アイザックス様にお返事書いて欲しいんだ。アイザックス様からアンジー様からのお返事を貰って来て欲しいって言われたの。だから……。」
「え?お返事ですの?今から?」
「うん、今。」
今……ね………
ザック様ってば、ヴァンになかなか強引な頼み事をなさったのね。
お返事ねぇ……
ただお返事を書くだけじゃ面白くないわよね……
そうだ!いい事考えた
ピンッと名案が浮かんだ私は、
「リリアン?」
と私の妖精に呼びかけたの。
すると、光と共にリリアンが現れてくれたのよ。
「ね、リリアン。昨日に引き続きまた今日もお願いで申し訳ないのだけれど、ピンクのガーベラを一輪お願い出来るかしら?」
とリリアンにお願いすると、「はい、どうぞ」と彼女は何も無いところからパッと、ピンクのガーベラを出してくれたの。
流石花の妖精リリアンよね。
「ありがとリリアン。素敵なガーベラだわ。」
とリリアンにお礼を言った私は、急いで隣りの部屋へと向かい、収納棚の箱の中から真っ白な手巾を取り出したの。
私はそれに、ウィンザードの紋の刺繍を施し、ザック様のお色の糸で、彼のイニシャルも刺繍した手巾を封筒に入れて、ヴァンに託す事にしたのよ。
「お待たせしてごめんなさいね、ヴァン。此方をザック様に渡して貰えるかしら?」
と言ってヴァンに渡すと、ヴァンは受け取った物を見ながら
「アンジー様?アイザックス様へのお手紙は?」
と、ヴァンは心配そうな顔で聞いてきたの。
きっと頼まれていたものと、渡された物が違っていたので、不安になったのでしょうね。
だけどそれは想定の範囲内。
「大丈夫よ、ヴァン。貴方が加護をしている彼はとても聡い方でいらっしゃるでしょ?」
「はい!アイザックス様はとても聡いお方です。」
とヴァンが胸を張って答えたの。
「だからこそなのよ、ヴァン。これだけでザック様はお分かり下さるわ。心配しなくても大丈夫。ではよろしくね。」
と言うと、
「アンジー様ありがとう!」
と、ヴァンは嬉しそうに飛んでったの。
私はそれを見送った後、一階へ下りて朝食の支度を始めたんだけど、返事をヴァンに託して一刻もしない内に、我が家に訪ねてこられたザック様に、驚きの声を上げてしまったのは許して欲しいの。
だって本当に驚いたんだもの
そんな私をご覧になったザック様は、たいそう可笑しそうに笑っておられたわ。
ったくもぉ!誰のせいだと思ってんのよ!
応援ありがとうございます!
11
お気に入りに追加
3,418
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる