貴方の駒になど真っ平御免です

Saeko

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第1章 新しい家族

第6話 人気者

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学園に到着すると、理事長室に入っていく父と桃花、母親の皐月が見えました。

きっと両親で桃花の編入の挨拶にでも来たのでしょう。

私の時はお母様だけだったのに……。
お父様にとって桃花だけ・ ・が大切な娘って事ね。
まぁとっくに諦めてるからいいわ。

私はふぅと溜息をついて自分の教室に入りました。

「おはよう百合。」

「おはよう菜々。」

私を見つけ菜々が駆け寄って来た。

自席まで一緒に歩きながら菜々子が話しかけてくる。

「さっき百合のお父様を理事長室の前でチラッと見かけたけど何?」

「例の……」

「あ~アレか~。」

「そう、アレよ。ホント面倒な事になりそうね。」

「本当にね。」

苦笑いを浮かべ席に座る私の頭を、菜々子はそっと撫でてくれた。






ホームルームが始まると、担任の仙道 遥也せんどう はるや先生が桃花を連れて入ってこられた。

よりにもよって同じクラスにするとか……、父の嫌がらせとしか思えないわ。

「え~。今日からこのクラスで一緒に勉強する事になった 白金桃花さんだ。桃花さんは、白金百合香のご姉妹きょうだいになる。皆仲良くしてやってくれ。白金桃花さん、クラスメイトに自己紹介をしなさい。」

「はい。えと~ 白金桃花です。百合香お義姉様のお家に昨日お引越しをしてきました。前は公立高校にいたので、こんなに可愛い制服が着られて嬉しいです。この学園の事は何も分からないので、色々教えて下さい。宜しくお願いします。」

ペコっと効果音が聞こえるかのようなお辞儀をする桃花に、

「え?桃花さんて。あの地味香と同じ家に住んでるの?」
「あ~そういえば地味香のママいないから、継母の子供なんじゃない?」
「てか、桃花さんめちゃくちゃ可愛い!!明るいし良い人みたいよね?」
「ホント地味香とは大違い。」

学園での私の愛称『地味香』
まぁ確かに地味子(にしてる)だから仕方ない。
それから…。この手の陰口には慣れているから全然平気だ。
てか、聞こえない様に言っているつもりなんだろけど、全部聞こえてるってば。

私はクラスメイトの陰口等に馬耳東風を決め込み、窓の外に浮かんでる雲を眺めていた。

私の席は窓側の列の前から3番目。
丁度目線を動かすだけで、形を刻々と変えながら流れていく雲を見る事が見える。

そんな私の耳に先生からの声が届いてきた。

「桃花さんの席は…あ~西田さん。」

「はい。」

「桃花さんを百合香さんの隣の席にしたいから、西田さんは濱田さんの隣に移動してくれ。」

「はい。」

そう先生に言われた西田さんは、私物を全て持ち、菜々子の隣に移動して行った。

隣に来た桃花は輝かんばかりの笑顔を作って、

「お義姉様。よろしくね。」

と言ってきた。

「はい。わかりました。」

私は桃花の言葉にボソッと答えると、聞こえない様に溜息した。


1時間目の休み時間になると、桃花の席の周りには人垣が出来、それは私の席をも巻き込むくらいの人数になったので、私はやむ無く菜々の席まで避難する事にした。

桃花は、さっきの授業内容が全く分からなかったようで、私のノートを書き写していた。

「わぁ!桃花さんてお勉強家なのね。」
「凄~い!桃花さんの字、とても綺麗。」
「これって地味…あ!百合香さんのノート?」
「さすが学年トップのノート。分かり易いわね。」
「え?お義姉様って学年トップなの?」
「そうだよ。知らなかった?」
「えぇ。私、昨日パパ…あ!お父様の家に引越ししたばっかりで、お義姉様と会ったのも昨日が初めてだったから。」
「そうなのね。あ!このクラスには学年2位の桐谷 翔きりや  かける君もいるから。勉強教えて貰うなら、翔君の方がいいかも。」
「そうなんだ~。教えてくれてありがとう。」

と、話している。ていうか……皆さん声、大きくないですか?

「おい翔!桃花さんに勉強教えてやれよ!」

と言われた桐谷君は、爽やかな笑みをたたえながら、桃花の席まで歩いて行った。

「初めまして桃花さん。僕は桐谷コーポレーション社長の息子で、翔ていうんだ。百合香君より勉強を教えるのは上手いと思うから、分からないところは僕に聞いた方がいいよ。」

桐谷君の言葉に「うん。ありがと。」と言いながら見せた桃花の笑顔(私の所からは見えないが、多分今朝見たあの顔を見せたんだろう)に、クラスメイト全員が桃花ファンになった瞬間だった。

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