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第四章 決別
第4話 決行までのカウントダウン 0
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「卒業おめでとう、桃花。婚約者として鼻が高いよ。」
「桃花、おめでとう。ママ、あんな有名な学校を卒業した事、誇りに思うわ。」
「そうだな、桃花は自慢の娘だ。」
「ありがとう、パパ ママ 利くん。桃花は嬉しいです。」
今日は大学の卒業式。リビングでは桃花の卒業を祝う会みたいなのが行われているらしい。
一応申し訳程度に誘われたんだけど、明日の事もあるので丁重にお断りした。
卒業式自体は午前中に終了し、午後は謝恩会やら飲み会やらがあるのだけど、私は卒業式が終わると静かに退席したんだ。まぁ私がいなくても、それに気づく人はいない。
なので、屋敷に早々に戻って来たんだよね。
夜、時子さんが自身の家に帰る前に部屋に来て、
「お嬢様。明日のお支度はお済みですか?」
と言いながら入ってきた。
「あらまぁ!綺麗さっぱりですこと。」
とクスクス笑う時子さんに、
「必要な物は全て配送済だし、不要な物は明日、あの人達が出ていった後 業者が回収に来てくれるわ。」
と私もクスクス笑いで返した。
「この鬘も、この眼鏡も、明日の朝食の後で終わりですね。」
「そうね。」
簡素な机と揃いの これまた簡素な椅子の上に無造作に置かれた変装用のウィッグと眼鏡。
明日からは、本来の自分に戻り自由になる。
「明日は忙しくなりますよ。ですからお早くお休み下さい、お嬢様。」
「ありがとう時子さん。そうするわね。おやすみなさい。」
「おやすみなさい、お嬢様。」
部屋の電気のスイッチをパチンと消して、時子さんは部屋を出ていった。
部屋の鍵を閉めベッドサイドのスタンドの明かりを付ける。
「お母様。明日はいよいよ長年お母様を裏切っていたお父様を捨てる日となりました。お母様。どうか私を見守っていて下さいね。おやすみなさい。」
階下ではまだ宴会が続いているようだ。
明日、起きられなくても知らないけどね。
――✽+†+✽――✽+†+✽――✽+†+✽――
翌日
この屋敷で食べる最後の朝食を食べていると、彼等がバタバタと階段を降りて来た。
「こんな浮腫んだ顔じゃやだ~(飲みすぎです。元々?あら、違ったかしら)」
「桃花?ドレスは持ったの?(体型隠せるといいわね)」
「うん」
「皐月!俺のスーツは?(お父様、大人ならご自分でどうぞ)」
「は?知らないわよ!そんな事自分でやって下さい。(それが正解ね)」
と朝から煩い3人。
一応彼等の分も用意されているらしいが、それに手をつける時間が無いらしい。
彼等は慌ただしく屋敷を出ていった。
「やっと静かになりましたね、お嬢様。」
「そうね。昨日の朝回収する予定だった物を回収してしまいましょう。時子さん、手伝ってください。」
「承知致しました。」
私と時子さんは手分けして、仕掛けておいたビデオカメラや盗聴器等を回収してまわった。
「これで全部ね。」
「そうですね。これらは時子が大旦那様にお渡ししております。お嬢様は、お行き下さい。もう直ぐ回収業者が参りますので。」
時子さんの言葉を聞いた私は、ボストンバッグに先程まで使用していた食器を紙に包んで丁寧に終い、部屋の前で待っていてくれる時子さんに鍵を渡した。
「はい、確かにお預かり致しました。全てが片付いたら、お父様の書斎の机に置いておきますね?お嬢様のお手紙の上に。」
徐にウイッグを取りいつもと同じ様に机の上に無造作に置く。背中に落ちる自身の本当の髪の重さを確かめる様に頭を一振し前髪をかきあげた。
ボストンバッグを持ち上げ部屋の前で一礼をした後、そのまま思いを断ち切る様に階段を駆け下りる。
玄関まで来ると、既に業者さんが待ち構えていた。
「全て彼女にお願いしてあります。彼女の指示に従ってください。」
と時子さんを指し示しこちらの意向を伝えると、業者の方々は屋敷の中に入って行った。
22年間過ごした屋敷に未練がないなんて嘘になる。が、こんな窮屈な所にはもういられない。
私は自由になる!
父の思うように動く駒なんて真っ平御免だわ。
「行きましょう、お嬢様。あの方々が気づいて動き出す前に。」
「そうですね。参りましょう。大貫さん、時子さんに宜しくお伝え下さい。」
「あぁ、分かったよ。大旦那様のお屋敷でまた。」
「はい!」
私が車に乗り込むと、羽田さんは静かに車を発車させた。
後ろを振り返ると、小さくなっていく屋敷が見えた。
『さようなら』
私は心の中で屋敷に別れを告げた。
「桃花、おめでとう。ママ、あんな有名な学校を卒業した事、誇りに思うわ。」
「そうだな、桃花は自慢の娘だ。」
「ありがとう、パパ ママ 利くん。桃花は嬉しいです。」
今日は大学の卒業式。リビングでは桃花の卒業を祝う会みたいなのが行われているらしい。
一応申し訳程度に誘われたんだけど、明日の事もあるので丁重にお断りした。
卒業式自体は午前中に終了し、午後は謝恩会やら飲み会やらがあるのだけど、私は卒業式が終わると静かに退席したんだ。まぁ私がいなくても、それに気づく人はいない。
なので、屋敷に早々に戻って来たんだよね。
夜、時子さんが自身の家に帰る前に部屋に来て、
「お嬢様。明日のお支度はお済みですか?」
と言いながら入ってきた。
「あらまぁ!綺麗さっぱりですこと。」
とクスクス笑う時子さんに、
「必要な物は全て配送済だし、不要な物は明日、あの人達が出ていった後 業者が回収に来てくれるわ。」
と私もクスクス笑いで返した。
「この鬘も、この眼鏡も、明日の朝食の後で終わりですね。」
「そうね。」
簡素な机と揃いの これまた簡素な椅子の上に無造作に置かれた変装用のウィッグと眼鏡。
明日からは、本来の自分に戻り自由になる。
「明日は忙しくなりますよ。ですからお早くお休み下さい、お嬢様。」
「ありがとう時子さん。そうするわね。おやすみなさい。」
「おやすみなさい、お嬢様。」
部屋の電気のスイッチをパチンと消して、時子さんは部屋を出ていった。
部屋の鍵を閉めベッドサイドのスタンドの明かりを付ける。
「お母様。明日はいよいよ長年お母様を裏切っていたお父様を捨てる日となりました。お母様。どうか私を見守っていて下さいね。おやすみなさい。」
階下ではまだ宴会が続いているようだ。
明日、起きられなくても知らないけどね。
――✽+†+✽――✽+†+✽――✽+†+✽――
翌日
この屋敷で食べる最後の朝食を食べていると、彼等がバタバタと階段を降りて来た。
「こんな浮腫んだ顔じゃやだ~(飲みすぎです。元々?あら、違ったかしら)」
「桃花?ドレスは持ったの?(体型隠せるといいわね)」
「うん」
「皐月!俺のスーツは?(お父様、大人ならご自分でどうぞ)」
「は?知らないわよ!そんな事自分でやって下さい。(それが正解ね)」
と朝から煩い3人。
一応彼等の分も用意されているらしいが、それに手をつける時間が無いらしい。
彼等は慌ただしく屋敷を出ていった。
「やっと静かになりましたね、お嬢様。」
「そうね。昨日の朝回収する予定だった物を回収してしまいましょう。時子さん、手伝ってください。」
「承知致しました。」
私と時子さんは手分けして、仕掛けておいたビデオカメラや盗聴器等を回収してまわった。
「これで全部ね。」
「そうですね。これらは時子が大旦那様にお渡ししております。お嬢様は、お行き下さい。もう直ぐ回収業者が参りますので。」
時子さんの言葉を聞いた私は、ボストンバッグに先程まで使用していた食器を紙に包んで丁寧に終い、部屋の前で待っていてくれる時子さんに鍵を渡した。
「はい、確かにお預かり致しました。全てが片付いたら、お父様の書斎の机に置いておきますね?お嬢様のお手紙の上に。」
徐にウイッグを取りいつもと同じ様に机の上に無造作に置く。背中に落ちる自身の本当の髪の重さを確かめる様に頭を一振し前髪をかきあげた。
ボストンバッグを持ち上げ部屋の前で一礼をした後、そのまま思いを断ち切る様に階段を駆け下りる。
玄関まで来ると、既に業者さんが待ち構えていた。
「全て彼女にお願いしてあります。彼女の指示に従ってください。」
と時子さんを指し示しこちらの意向を伝えると、業者の方々は屋敷の中に入って行った。
22年間過ごした屋敷に未練がないなんて嘘になる。が、こんな窮屈な所にはもういられない。
私は自由になる!
父の思うように動く駒なんて真っ平御免だわ。
「行きましょう、お嬢様。あの方々が気づいて動き出す前に。」
「そうですね。参りましょう。大貫さん、時子さんに宜しくお伝え下さい。」
「あぁ、分かったよ。大旦那様のお屋敷でまた。」
「はい!」
私が車に乗り込むと、羽田さんは静かに車を発車させた。
後ろを振り返ると、小さくなっていく屋敷が見えた。
『さようなら』
私は心の中で屋敷に別れを告げた。
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