42 / 97
第四章 決別
第5話 愚か者の窮地(序章)
しおりを挟む
「なんだと?アイツが来ていないだと?」
パーティ開始の10分前になっても俺たちがいるスイートルームに挨拶に来ない金蔓だった元嫁の子供 百合香の様子を見に行かせた部下からの報告に、俺は声を荒らげた。
「よく探したのか?」
「はい……ですが社長。ただ 黒髪で眼鏡をかけた地味な20代の女を探せと仰られても……」
部下にそう言われても、アイツの特徴なんてそれしか思いつかない。
俺がもう一度探してこい!と部下に言おうとした時、ドレスアップした皐月が来た。
「どうしたの?あなた。」
「どうもこうも、アイツが来てないんだ。」
「アイツって……あ~、金蔓?」
「あぁそうだ。百合香のヤツがまだ会場に来ていない。」
「別にいいんじゃない?あんなのいなくたって。どうせこの場に来ても、ただそこにいるだけなんだから。家に帰って、あとで本人に言えばいいでしょ?」
皐月はそう言うが、実はこのパーティはライブ配信する予定だった。
桃花の副社長就任
桃花の婚約発表
婚約者 京極利樹の専務就任
その利樹の秘書に百合香をつける
それ等を生で配信する事で、一気にのし上がろうと思っていた。
更に、
京極家は、医療機器
元嫁の実家は医者
IT関連企業を経営する俺は、事業拡大の為にウチが開発した医療にも使えるシステムを京極 櫻井の両方に導入して貰い、更なる飛躍をする予定だった。
だからこその人事だったのに、アイツが来なければ全て台無しになってしまう。
イライラしながら部屋の中を歩き回っていると、
「白金様。予定のお時間が参りました。会場へお入り下さい。」
ホテルの支配人潮田が俺を呼びに来た。
「わ、分かった。皐月、桃花、利樹君。お客様が待ってる。行こう。」
「はい!パパ」
桃花が元気よく返事をするが、それに対していつもの笑顔を返す事は出来なかった。
「皆様、大変長らくお待たせいたしました。sirogane.co 社長白金貴生様 秘書で奥様の皐月様 御息女で一人娘でいらっしゃる桃花様 KGコーポレーションご次男京極利樹様のご登場です。皆様、大きな拍手でお迎え下さい。」
司会者の声に合わせ、会場の観音開きのドアが開けられスポットライトを浴びる。
今日はマスコミも会場に入れているから、こちらが目を細めないといけないくらいのフラッシュの光もあった。
拍手の渦の中、俺はステージまで歩くこの瞬間が大好きだ。若い頃苦労してきた事が一気に吹き飛んでいく気がするからだが、今日はとてもじゃないがそんな気持ちにはなれない。
ライブ配信で世界中の人々が見ている中での新しい人事発表予定だったのに……。
「あなた、顔を上げて。世界中の人が見てるんだから。金蔓の事は、体調不良でここに来れないとでも言ったらいいじゃない。」
「あぁ、そうだな。アイツは体が弱いから、そう言えばいいか。皐月、ありがとう。流石だな。」
俺は皐月の考えに賛同し、皐月をエスコートする為に彼女の腰を抱いてステージまでの道のりを堂々と歩み始めた。
この後の質疑応答で、窮地に追い込まれるとは、この時は微塵も思ってはいなかった。
パーティ開始の10分前になっても俺たちがいるスイートルームに挨拶に来ない金蔓だった元嫁の子供 百合香の様子を見に行かせた部下からの報告に、俺は声を荒らげた。
「よく探したのか?」
「はい……ですが社長。ただ 黒髪で眼鏡をかけた地味な20代の女を探せと仰られても……」
部下にそう言われても、アイツの特徴なんてそれしか思いつかない。
俺がもう一度探してこい!と部下に言おうとした時、ドレスアップした皐月が来た。
「どうしたの?あなた。」
「どうもこうも、アイツが来てないんだ。」
「アイツって……あ~、金蔓?」
「あぁそうだ。百合香のヤツがまだ会場に来ていない。」
「別にいいんじゃない?あんなのいなくたって。どうせこの場に来ても、ただそこにいるだけなんだから。家に帰って、あとで本人に言えばいいでしょ?」
皐月はそう言うが、実はこのパーティはライブ配信する予定だった。
桃花の副社長就任
桃花の婚約発表
婚約者 京極利樹の専務就任
その利樹の秘書に百合香をつける
それ等を生で配信する事で、一気にのし上がろうと思っていた。
更に、
京極家は、医療機器
元嫁の実家は医者
IT関連企業を経営する俺は、事業拡大の為にウチが開発した医療にも使えるシステムを京極 櫻井の両方に導入して貰い、更なる飛躍をする予定だった。
だからこその人事だったのに、アイツが来なければ全て台無しになってしまう。
イライラしながら部屋の中を歩き回っていると、
「白金様。予定のお時間が参りました。会場へお入り下さい。」
ホテルの支配人潮田が俺を呼びに来た。
「わ、分かった。皐月、桃花、利樹君。お客様が待ってる。行こう。」
「はい!パパ」
桃花が元気よく返事をするが、それに対していつもの笑顔を返す事は出来なかった。
「皆様、大変長らくお待たせいたしました。sirogane.co 社長白金貴生様 秘書で奥様の皐月様 御息女で一人娘でいらっしゃる桃花様 KGコーポレーションご次男京極利樹様のご登場です。皆様、大きな拍手でお迎え下さい。」
司会者の声に合わせ、会場の観音開きのドアが開けられスポットライトを浴びる。
今日はマスコミも会場に入れているから、こちらが目を細めないといけないくらいのフラッシュの光もあった。
拍手の渦の中、俺はステージまで歩くこの瞬間が大好きだ。若い頃苦労してきた事が一気に吹き飛んでいく気がするからだが、今日はとてもじゃないがそんな気持ちにはなれない。
ライブ配信で世界中の人々が見ている中での新しい人事発表予定だったのに……。
「あなた、顔を上げて。世界中の人が見てるんだから。金蔓の事は、体調不良でここに来れないとでも言ったらいいじゃない。」
「あぁ、そうだな。アイツは体が弱いから、そう言えばいいか。皐月、ありがとう。流石だな。」
俺は皐月の考えに賛同し、皐月をエスコートする為に彼女の腰を抱いてステージまでの道のりを堂々と歩み始めた。
この後の質疑応答で、窮地に追い込まれるとは、この時は微塵も思ってはいなかった。
11
あなたにおすすめの小説
幼馴染の許嫁
山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
〖完結〗その愛、お断りします。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚して一年、幸せな毎日を送っていた。それが、一瞬で消え去った……
彼は突然愛人と子供を連れて来て、離れに住まわせると言った。愛する人に裏切られていたことを知り、胸が苦しくなる。
邪魔なのは、私だ。
そう思った私は離婚を決意し、邸を出て行こうとしたところを彼に見つかり部屋に閉じ込められてしまう。
「君を愛してる」と、何度も口にする彼。愛していれば、何をしても許されると思っているのだろうか。
冗談じゃない。私は、彼の思い通りになどならない!
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
初恋だったお兄様から好きだと言われ失恋した私の出会いがあるまでの日
クロユキ
恋愛
隣に住む私より一つ年上のお兄さんは、優しくて肩まで伸ばした金色の髪の毛を結ぶその姿は王子様のようで私には初恋の人でもあった。
いつも学園が休みの日には、お茶をしてお喋りをして…勉強を教えてくれるお兄さんから好きだと言われて信じられない私は泣きながら喜んだ…でもその好きは恋人の好きではなかった……
誤字脱字がありますが、読んでもらえたら嬉しいです。
更新が不定期ですが、よろしくお願いします。
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる