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第四章 決別
第9話 愚か者の窮地(反旗)
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「今朝、百合香から私のところにメールが入った。こんな内容だ。
『柊伯父様 おはようございます、百合香です。
』」
櫻井柊が読み上げていくアイツ 百合香からのメールが、読み上げられると同時にライブ配信の画面にテロップとして出ているらしい。
マスコミ各社の記者達は、己のスマホやパソコンの画面を食い入るように見ている。が、カメラマンは俺の表情の変化を見逃しはしない!とでもいうかの様に、全部が俺にレンズを向けている。
俺はどういう顔をしたらいいのか分からず、ただひたすらテーブルの上のマイクを見つめていた。
『伯父様、朝から申し訳ありません。私、百合香は、本日、白金の家を出る事に致しました。
ずっとずっと、幼い頃からお父様に認めて頂きたくて、愛して頂きたくて頑張って参りましたが、もう限界です。お父様が私を見て下さる事はなかった。どんなに頑張っても一度も褒めては下さらなかった。
悲しくて辛くて…それでもいつかは……と思い頑張って参りました。が、それは無駄な努力だったようです。何故なら、本日私は、皆さんの前でお父様から断罪されるらしいのです。sirogane.coの次期社長は長女の私ではなく、皐月お義母様の娘 桃花に就任させ、京極利樹さんが専務に…。そして私は、桃花の婚約者でもある利樹さんの秘書になるとの事でした。
私に、『いつか』なんて来る筈が無かったのですね。自分の愚かさかげんに嫌気がさしてしまいました。
お父様は私や麗羅お母様を愛しては下さらなかった。多分それは一生変わらないと思います。いつだったか、お父様と皐月お義母様が、私の事を【金蔓】だとか【太客】だとか仰っていたのを耳にした事があります。太客の意味が分からず調べてみましたところ、太客とは接客を伴う飲食店で、お店で働く方にプレゼントやお金を落として下さるお客様の事をいうと出てきました。私はお父様達にとって、お金をもたらすお客様だったのです。』
太客 金蔓 の言葉に、会場中がざわめき始める。
「親なのになんて酷い言葉を!」
「ありえないわ!信じられない!!」
「子供をなんだと思ってるんだろう。」
「所有物としか思ってないんだろな。酷い話だぜ。」
「何が愛する自慢の家族だよ!虐待してんじゃないか!」
「百合香さんが可哀想よ。」
初めは漣だったざわめきは、やがて大きな波になって舞台上の俺達に押し寄せてきた。
『全てが無駄だったと分かった今、あの屋敷にいる必要はないと考えました。
私も二年前に成人致しました。ですから一人の力だけで頑張ってみようと思っています。
これからも、お父様に愛される事無く、だだの駒にされて生きる人生なんて、真っ平御免です。
お爺様伯父様
お二人のおかげで、私は昨日無事に大学を卒業する事が出来ました。今まで本当にありがとうございました。感謝の念に耐えません。
いつか必ず受けたご恩はお返し致します。
どうかお幸せに。いつまでもお元気で。
白金 百合香』
『柊伯父様 おはようございます、百合香です。
』」
櫻井柊が読み上げていくアイツ 百合香からのメールが、読み上げられると同時にライブ配信の画面にテロップとして出ているらしい。
マスコミ各社の記者達は、己のスマホやパソコンの画面を食い入るように見ている。が、カメラマンは俺の表情の変化を見逃しはしない!とでもいうかの様に、全部が俺にレンズを向けている。
俺はどういう顔をしたらいいのか分からず、ただひたすらテーブルの上のマイクを見つめていた。
『伯父様、朝から申し訳ありません。私、百合香は、本日、白金の家を出る事に致しました。
ずっとずっと、幼い頃からお父様に認めて頂きたくて、愛して頂きたくて頑張って参りましたが、もう限界です。お父様が私を見て下さる事はなかった。どんなに頑張っても一度も褒めては下さらなかった。
悲しくて辛くて…それでもいつかは……と思い頑張って参りました。が、それは無駄な努力だったようです。何故なら、本日私は、皆さんの前でお父様から断罪されるらしいのです。sirogane.coの次期社長は長女の私ではなく、皐月お義母様の娘 桃花に就任させ、京極利樹さんが専務に…。そして私は、桃花の婚約者でもある利樹さんの秘書になるとの事でした。
私に、『いつか』なんて来る筈が無かったのですね。自分の愚かさかげんに嫌気がさしてしまいました。
お父様は私や麗羅お母様を愛しては下さらなかった。多分それは一生変わらないと思います。いつだったか、お父様と皐月お義母様が、私の事を【金蔓】だとか【太客】だとか仰っていたのを耳にした事があります。太客の意味が分からず調べてみましたところ、太客とは接客を伴う飲食店で、お店で働く方にプレゼントやお金を落として下さるお客様の事をいうと出てきました。私はお父様達にとって、お金をもたらすお客様だったのです。』
太客 金蔓 の言葉に、会場中がざわめき始める。
「親なのになんて酷い言葉を!」
「ありえないわ!信じられない!!」
「子供をなんだと思ってるんだろう。」
「所有物としか思ってないんだろな。酷い話だぜ。」
「何が愛する自慢の家族だよ!虐待してんじゃないか!」
「百合香さんが可哀想よ。」
初めは漣だったざわめきは、やがて大きな波になって舞台上の俺達に押し寄せてきた。
『全てが無駄だったと分かった今、あの屋敷にいる必要はないと考えました。
私も二年前に成人致しました。ですから一人の力だけで頑張ってみようと思っています。
これからも、お父様に愛される事無く、だだの駒にされて生きる人生なんて、真っ平御免です。
お爺様伯父様
お二人のおかげで、私は昨日無事に大学を卒業する事が出来ました。今まで本当にありがとうございました。感謝の念に耐えません。
いつか必ず受けたご恩はお返し致します。
どうかお幸せに。いつまでもお元気で。
白金 百合香』
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