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第四章 決別
第10話 愚か者の窮地(断罪)
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電話の向こうで、「百合香~」と言って泣き出した女の声が聞こえる。
「お母様。そんなに泣かないで下さい。百合香はきっと大丈夫ですから。」
今、柊はお母様と言ったか?櫻井柊の母親は確か元フランス大使館の娘だったはずだ。自分にそっくりな娘を溺愛していた。
なおも続く櫻井柊の母親らしい泣き声。
「百合香に何かあったら……百合香に……このままでは麗羅に会えない…麗羅…麗羅……ごめんなさい麗羅。貴女の大事な娘 百合香を酷い目に…………あぁ!お父様。私は酷い娘です。お父様の大事な曾孫を不幸にしてしまいました。お許し下さい…………。彌生さん。今すぐフランスのお兄様に国際電話をかけなくては………………。」
フランス元大使館に泣いて詫びている様子の櫻井柊の母親は、その後どこかへ行ってしまったのか、スマホから声が聞こえなくなった。どうやら俺は、フランス大使館に縁がある人物さえも敵に回してしまったようだ。俺は、とんでもない間違いを犯してしまったのか!
頭の中で打開策はないのか?そればかり考えていると、
「貴生君。」
櫻井柊の低い声が聞こえる。
「は、はい……。」
「百合香は君達夫婦にとって、金蔓 太客だったとは……可哀想な百合香。可哀想過ぎるだろう。あんなにいい子なのに……。」
「貴生君、百合香を探し出しなさい!もし、私の可愛い孫娘に何かあった場合は……私は今後、siroganeへの資金援助を行わないと決めた。」
兼近の口から衝撃的な言葉が告げられ、
「え?そ、それは……本当ですか?」
思わず声が裏返ってしまう。
「あぁ本当だ。お前にとっての金蔓の百合香がいなくなったのなら、こちらとしても、お前を援助する意味は無くなったのだからな。」
「そうですね。妹 麗羅の葬儀に愛人を連れて来るような男でも、可愛い姪の百合香のたった一人の親だからと目をつぶっていましたが、百合香がいなくなったのなら必要ありませんね。」
柊が畳み掛けてくる。
「貴生君。」
「はい…。」
「一年だ!」
「え?一年?ですか?」
柊の言葉の意味が分からず聞き返す俺に、
「一年以内に百合香の行方が分からなかったら、我々櫻井家はsiroganeから手をひき、百合香の名誉毀損で君を訴える所存だ。」
と言い放った。
「百合香の為なんかに一銭も出すつもりはない!!だったかな?」
「え?なんの事「百合香が子供の頃、誘拐されかけたと聞いた時、そう言ったのを忘れたのか?貴生君。」なっ!」
そうだ……確かに俺はアイツに金なんてと言った。
「それなのに、百合香を探す為に金を使う事になろうとは、屈辱以外のなにものでもないだろ。いい気味だ!」
「…………」
「まさか、この期に及んで百合香と金を天秤にかけてはいないだろうな?」
「め、滅相もありません。」
「そうか……その言葉が真であれば良いがな。本日から一年後が楽しみだ、貴生君。百合香の親として、誠意を見せてくれ。」
そう言って柊から一方的に電話を切られた直後、記者達が矢継ぎ早に質問をしてくる。
「今の話は本当ですか?白金社長!」
「お答え下さい!虐待してたんですか?金蔓と言っていたのは本当ですか?」
「社長!!」「白金社長!」
「こ、これにて記者会見を終わらせて頂きます。」
俺は、マイクを握りそう言い捨てると、皐月や桃花達を置いて一目散に会場から逃げ出した。
翌朝
新聞や情報番組のトップ記事に、
『sirogane.co社長 白金貴生氏 虐待!』
『実の娘を 金蔓 と』
等と見出しが躍る事になったのは言うまでもない。
「お母様。そんなに泣かないで下さい。百合香はきっと大丈夫ですから。」
今、柊はお母様と言ったか?櫻井柊の母親は確か元フランス大使館の娘だったはずだ。自分にそっくりな娘を溺愛していた。
なおも続く櫻井柊の母親らしい泣き声。
「百合香に何かあったら……百合香に……このままでは麗羅に会えない…麗羅…麗羅……ごめんなさい麗羅。貴女の大事な娘 百合香を酷い目に…………あぁ!お父様。私は酷い娘です。お父様の大事な曾孫を不幸にしてしまいました。お許し下さい…………。彌生さん。今すぐフランスのお兄様に国際電話をかけなくては………………。」
フランス元大使館に泣いて詫びている様子の櫻井柊の母親は、その後どこかへ行ってしまったのか、スマホから声が聞こえなくなった。どうやら俺は、フランス大使館に縁がある人物さえも敵に回してしまったようだ。俺は、とんでもない間違いを犯してしまったのか!
頭の中で打開策はないのか?そればかり考えていると、
「貴生君。」
櫻井柊の低い声が聞こえる。
「は、はい……。」
「百合香は君達夫婦にとって、金蔓 太客だったとは……可哀想な百合香。可哀想過ぎるだろう。あんなにいい子なのに……。」
「貴生君、百合香を探し出しなさい!もし、私の可愛い孫娘に何かあった場合は……私は今後、siroganeへの資金援助を行わないと決めた。」
兼近の口から衝撃的な言葉が告げられ、
「え?そ、それは……本当ですか?」
思わず声が裏返ってしまう。
「あぁ本当だ。お前にとっての金蔓の百合香がいなくなったのなら、こちらとしても、お前を援助する意味は無くなったのだからな。」
「そうですね。妹 麗羅の葬儀に愛人を連れて来るような男でも、可愛い姪の百合香のたった一人の親だからと目をつぶっていましたが、百合香がいなくなったのなら必要ありませんね。」
柊が畳み掛けてくる。
「貴生君。」
「はい…。」
「一年だ!」
「え?一年?ですか?」
柊の言葉の意味が分からず聞き返す俺に、
「一年以内に百合香の行方が分からなかったら、我々櫻井家はsiroganeから手をひき、百合香の名誉毀損で君を訴える所存だ。」
と言い放った。
「百合香の為なんかに一銭も出すつもりはない!!だったかな?」
「え?なんの事「百合香が子供の頃、誘拐されかけたと聞いた時、そう言ったのを忘れたのか?貴生君。」なっ!」
そうだ……確かに俺はアイツに金なんてと言った。
「それなのに、百合香を探す為に金を使う事になろうとは、屈辱以外のなにものでもないだろ。いい気味だ!」
「…………」
「まさか、この期に及んで百合香と金を天秤にかけてはいないだろうな?」
「め、滅相もありません。」
「そうか……その言葉が真であれば良いがな。本日から一年後が楽しみだ、貴生君。百合香の親として、誠意を見せてくれ。」
そう言って柊から一方的に電話を切られた直後、記者達が矢継ぎ早に質問をしてくる。
「今の話は本当ですか?白金社長!」
「お答え下さい!虐待してたんですか?金蔓と言っていたのは本当ですか?」
「社長!!」「白金社長!」
「こ、これにて記者会見を終わらせて頂きます。」
俺は、マイクを握りそう言い捨てると、皐月や桃花達を置いて一目散に会場から逃げ出した。
翌朝
新聞や情報番組のトップ記事に、
『sirogane.co社長 白金貴生氏 虐待!』
『実の娘を 金蔓 と』
等と見出しが躍る事になったのは言うまでもない。
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