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第1章 異世界召喚

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僕達は勇を先頭に、順にクリスタルに触っていった。

クリスタルの反応での判定結果は次のとおりだ。

【勇者】相田 勇  Lv.10   HP 300/300  MP100/100   魔法スキル/火属性

【賢者】田代 賢  Lv.10   HP 100/100  MP150/150   魔法スキル/風属性

【魔法使い】  中山 昴Lv.10   HP 100/100  MP300/300   魔法スキル/水属性

【聖女】  西山 愛子  Lv.5   HP 100/100  MP500/500   魔法スキル/光属性

【戦士】中島洋平  Lv.2   HP 50/50  MP 0/0   魔法スキル/無し

【僧侶】 寺田 昭弘  Lv.10   HP 100/100  MP100/100   魔法スキル/木属性


「俺が勇者。ま、当然だな。」
「私は賢者ですか……。まぁ賢明な人選ですね。」
「僕は魔法使いかぁ。ま、いいや。ちょっと面白そうだからね。」
勇 賢 昴が自分のステータスや属性の判定に対して満足しているのに対し、
「え?愛子、聖女様なの?マジ?キャー!やったぁ~。ね?ね?王子さま~。愛子聖女様だよ~。」
と、王子に抱き着きに行こうとする愛子だったが、騎士達に止められ
「もぉ~なによぉ。愛子は聖女様なのよぉ~。聖女様は~、王子様と結婚する運命なんだからね~。」
と、頬を膨らめていた。

一方、Lv2の戦士判定になった中島は、
「俺がLv2だって?そんな事有り得ないだろう!もう一回やらせろ~!!」
と吠え、僧侶判定の寺田は、
「僕の方が賢者に相応しいと思うんだよな。田代なんかより僕の方が博識なのに……。」
と不満タラタラだった。


そんな彼等を横目で見ながら、僕はクリスタルに手を乗せると……

【平民】渡瀬 望 Lv.1   HP 10/10 MP10/10   魔法スキル/無し  ユニークスキル/鑑定・付与

と出た。それを見た勇が
「おい、皆。見ろよ!渡瀬のヤツ、Lv1で魔法スキル無しとかどんだけだよ。」
と言って笑うと、
「本当ですね。まさかアノ中島先輩より劣るとは……。」
と賢は肩を揺らし、
「MP10とかってゴミじゃん。魔法なんてぜぇったい使えないよね。渡瀬、可哀想。」
と昴もケラケラと笑っている。
「まぁ、お前よりマシな判定だから、僕もこれで良しとするか。」
と、自分より結果が悪かった望を嘲笑う寺田。
彼等の中には、誰も望を励ましたり慰めたりする者はいなかった。



「では、皆様には、これより魔物討伐に向けた訓練を受けて頂きます。勇者の勇様はあちら、賢者の賢様はこちら。昴様は……、寺田様は……」
と司祭が次々に訓練へ向かう場所を指示していく。
そして残った僕の前に立つと、
「望様は平民でしたので、討伐隊ではなく、市井に下りて頂き平民として暮らして頂きます。」
と言った。それから、
「こちらは陛下からのご温情でございます。当面の生活資金としてお使い下さい。」
と言って銀貨と銅貨が入った小さい麻袋を渡してきた。


そこで僕は
「あのぉ。一つだけ教えて欲しいのですが…。」
とずっと疑問に思っていた事を司祭にぶつける事にしたんだ。
「何でしょう、望様。」
人の良さそうな笑みを浮かべながら司祭は言う。
「此処に召喚される前に、僕達の世界で、地震が起きました。あれって召喚に関係があった事なんですか?」
と聞くと、
「異世界から人を呼び寄せる時には、時空を曲げる必要がございます。私や他の司祭の者と共同で魔法陣を構築し、召喚を行うのでございますが、その際どうしても、多少ではありますが、召喚される側の世界の地盤が揺れてしまうのでございます。」
と答えてくれた。

(あの揺れは、全然多少じゃなかったけどな。)と思ったが、僕は敢えて口にはしなかった。どうせ僕は此処から追い出される身なのだから、言っても無駄だと思ったからだ。

黙り込んだ僕に、
「では、望様。お元気で。」
と言いながら司祭が右手をサッとあげると、二人の騎士が僕の両脇をガシッと持ち、半ば引ずる様に大広間から連れ出した。

長い長い廊下を、騎士二人が僕の両脇にピタリとくっついたまま無言で歩く。多分この建物の出口迄誘導されるのだろう。

暫く歩くと、目の前に大きな扉が現れた。騎士二人がそれを開き、その1人が僕に向かって、
「このまま真っ直ぐ進むと城の門があります。前の道を左に進むと貴族街、右に進むと平民達が暮らす平民街があります。どうぞお元気でお暮らし下さい。」
と無表情ながらも優しく教えてくれた。そしてもう1人の騎士は、
「これは魔石です。貴方の様に魔力が無い人でも、これがあれば魔物から貴方を護ってくれます。どうそお持ち下さい。」
と、僕に赤い石の様な物を一つくれた。

「ご親切に有難うございます。お二人も魔物討伐に行くのでしょうが、くれぐれもお気をつけ下さい。では、さようなら。」
そう言って、僕は後ろを振り向く事無く真っ直ぐ歩き出したんだ。
「とりあえず、腹ごしらえだよな。」
と脳天気に言って、見知らぬ世界に放り出された不安を頭から追い出す事にして。
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