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第二章 異世界での生活
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一方、勇は伸び悩んでいた。
というのも、元の世界でスポーツを得意としていた勇が中高で所属していた部活は、サッカー部と陸上部であり、『剣術』は未経験だからだ。
剣術と聞いて真っ先に結び付くのは剣道という事になるのだが、剣道なんて体育の授業でしかやった事が無い。よって、要領が上手くつかめず、ただ闇雲に剣を振り回しているだけだったのだ。
また、召喚時に判定を受けた魔法スキルも、あまり上手く使いこなす事が出来ないでいた。
そんな中、
「勇者殿。どうか此方をお使いくだされ。」
と、伸び悩む勇に剣を渡してきたのは、召喚時に王に呼ばれ、勇達に魔獣討伐について話をした司祭より上の身分の『司祭長』だった。
「司祭長。これは?」
と言いながら、勇は差し出された剣を持つ。するとどうだろう。勇の手にしっくりとくるグリップ(剣の柄)と、そこに埋め込まれた赤い魔石。それを触れるだけでも感じる強い魔力。また、重くもなく軽くもない、勇にとって丁度いい重さの剣は、彼の為に誂えられたのか?と思える程、勇に馴染んでいる。
「これはいい!」
剣をブンブンと振り回す勇の表情は、先程の鬱々としていた時のそれとは比べ物にならないくらい生き生きとしていた。
そんな勇の様子を見ていた司祭長は、
「では、勇者殿。そのグリップに埋め込まれた赤い石を触りながら、魔力を流してみなされ。」
そう言われた勇は、
「魔力を流せったってやり方が分かんねぇんだって。」
とブツブツ言っている。すると司祭長は、
「分かりやすく言うとじゃな。念じれば良いのじゃ。例えば……。」
そう言った。そして、司祭長は辺りを見渡すと、
「あそこに木で出来た的があるだろう。あそこに火球を当ててみなされ。」
とそちらを指さした。
「(火球て事は火の玉か?……だったらマリオみたいなやつって事でいいのか?)『FIRE BALL!』(てベタ過ぎだろ。)」
と剣を的に向けながら半信半疑でそれっぽい言葉を言うと、剣に異変がおきた!
ブレードの部分が赤く染まり、その先端から火球が落ちたのだ。
「え?なんだ!?今の??」
驚く勇に、
「今のが魔力を流した結果ですぞ、勇者殿。」
(今のが……。)剣を見つめる勇に、
「忘れない内にもう一回やってみなされ。今度は、剣を振り下ろしてみたら如何かな?的に向かい球を投げる事を想像してみるのですぞ。」
と言う司祭長の言葉に一つ頷き、剣を上に掲げ
「FIRE BALL!ハーッ!!」
と言うと同時に剣を振り下ろす勇。
すると、赤く光ったブレードの先端から先程と同じ様な火球が勢いよく的目掛けて飛んだのだ。
火球は的の左端の上部に当たると、その木を黒く焦がして消えた。
「やった!出来たぜ!」
「やりましたな、勇者殿。では、その調子で出来るだけ中心に当てて参りましょうか。鍛錬を積めば、連続で火球を出すことも出来ると思いますぞ。」
そう言って司祭長は、訓練所から去っていった。
その後勇は、何時間も何時間も練習を重ね、連続で火球を出すことも、またそれらを8割の確率で的の中心部に当てる事が出来るようになっていた。
まさかこの剣が、あれだけ馬鹿にしていた同級生の手によって作られていたとは思いもせずに。
~勇者様 勇side~
というのも、元の世界でスポーツを得意としていた勇が中高で所属していた部活は、サッカー部と陸上部であり、『剣術』は未経験だからだ。
剣術と聞いて真っ先に結び付くのは剣道という事になるのだが、剣道なんて体育の授業でしかやった事が無い。よって、要領が上手くつかめず、ただ闇雲に剣を振り回しているだけだったのだ。
また、召喚時に判定を受けた魔法スキルも、あまり上手く使いこなす事が出来ないでいた。
そんな中、
「勇者殿。どうか此方をお使いくだされ。」
と、伸び悩む勇に剣を渡してきたのは、召喚時に王に呼ばれ、勇達に魔獣討伐について話をした司祭より上の身分の『司祭長』だった。
「司祭長。これは?」
と言いながら、勇は差し出された剣を持つ。するとどうだろう。勇の手にしっくりとくるグリップ(剣の柄)と、そこに埋め込まれた赤い魔石。それを触れるだけでも感じる強い魔力。また、重くもなく軽くもない、勇にとって丁度いい重さの剣は、彼の為に誂えられたのか?と思える程、勇に馴染んでいる。
「これはいい!」
剣をブンブンと振り回す勇の表情は、先程の鬱々としていた時のそれとは比べ物にならないくらい生き生きとしていた。
そんな勇の様子を見ていた司祭長は、
「では、勇者殿。そのグリップに埋め込まれた赤い石を触りながら、魔力を流してみなされ。」
そう言われた勇は、
「魔力を流せったってやり方が分かんねぇんだって。」
とブツブツ言っている。すると司祭長は、
「分かりやすく言うとじゃな。念じれば良いのじゃ。例えば……。」
そう言った。そして、司祭長は辺りを見渡すと、
「あそこに木で出来た的があるだろう。あそこに火球を当ててみなされ。」
とそちらを指さした。
「(火球て事は火の玉か?……だったらマリオみたいなやつって事でいいのか?)『FIRE BALL!』(てベタ過ぎだろ。)」
と剣を的に向けながら半信半疑でそれっぽい言葉を言うと、剣に異変がおきた!
ブレードの部分が赤く染まり、その先端から火球が落ちたのだ。
「え?なんだ!?今の??」
驚く勇に、
「今のが魔力を流した結果ですぞ、勇者殿。」
(今のが……。)剣を見つめる勇に、
「忘れない内にもう一回やってみなされ。今度は、剣を振り下ろしてみたら如何かな?的に向かい球を投げる事を想像してみるのですぞ。」
と言う司祭長の言葉に一つ頷き、剣を上に掲げ
「FIRE BALL!ハーッ!!」
と言うと同時に剣を振り下ろす勇。
すると、赤く光ったブレードの先端から先程と同じ様な火球が勢いよく的目掛けて飛んだのだ。
火球は的の左端の上部に当たると、その木を黒く焦がして消えた。
「やった!出来たぜ!」
「やりましたな、勇者殿。では、その調子で出来るだけ中心に当てて参りましょうか。鍛錬を積めば、連続で火球を出すことも出来ると思いますぞ。」
そう言って司祭長は、訓練所から去っていった。
その後勇は、何時間も何時間も練習を重ね、連続で火球を出すことも、またそれらを8割の確率で的の中心部に当てる事が出来るようになっていた。
まさかこの剣が、あれだけ馬鹿にしていた同級生の手によって作られていたとは思いもせずに。
~勇者様 勇side~
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