バトロワゲーヲタの異世界無双物語

Saeko

文字の大きさ
63 / 130
第五章 変わったヲタ

8

しおりを挟む
「ふん!渡瀬のくせに。生意気なんだっつ~の!クソッ!!」
俺は、熊の魔獣に向かって歩きながら、俺を見下した目で見てきた渡瀬の事を思い出し苛立っていた。

少し前までは、デブで不細工だった渡瀬が、今は顔中にあった筈の面皰は無く、頬骨に付いていた肉のせいで埋没していた細い目が、身体だけで無く顔も痩せた事で、ヤツの意志の強さを表すかの様な、綺麗なアーモンドアイながらも二重瞼で切れ長の目になっていた。

また、服を着ていても分かる程の腕の筋肉の盛り上がり具合から、胸筋も凄い事になっていると、安易に想像出来た。
恐らくだが、腹もシックスパックだろう。

だが、何より俺が驚いたのは、彼奴の射撃の腕前だ。アレはマジで半端なかったと思う。
さっきのライオン退治の時。渡瀬彼奴が撃った弾丸は、ライオンの周りを逃げ回っていた中島や、その滑稽な様子を見て笑っていた俺達の間をすり抜け、少しの狂いも無くライオンの眉間を正確に射抜いた。しかも俺達の後ろから撃ったんだから、俺達に重なり見にくかったであろう中島の動きを予測して撃った事になる。
魔力0の渡瀬が魔獣と戦う為に得たのが、"射撃”の腕なのかもしれない。

しかし相手は魔獣だ。魔獣の中には、魔法による攻撃を仕掛けて来るやつもいる。俺達は全員魔力持ちだから問題はないが、渡瀬は魔力が無いから、いくら銃があっても、魔獣から魔法攻撃を受けたらひとたまりもないだろう。
そういった意味でも、俺の方が断然有利な筈だ。

「どうしたんですか?勇。いきますよ?」
とそんな事をグダグダ考えていた俺に、賢が話しかけてきた。
「あぁ……大丈夫だ。やるぞ!俺達の力を渡瀬彼奴に見せつけてやるぜ!!」
と右手の親指を立てながらそう返した。

すると、その様子を見計らったかのように、魔法で動きを止められていた熊が、突然動き始めたと同時に、
「ガァァァァ!」
と雄叫びをあげ二本の後ろ足で立ち上がった。その高さは4mくらいだろうか。さながらちょっとした巨人だった。
「で、デカい!」
と、後ろで寺田の戸惑いの声が聞こえた。
「先生!しっかり後方支援頼むぜ!賢、昴。いつもの行くぞ!」
「「了解!」」

俺と賢、そして昴がいつものポジションに着くと、先ず賢が
「風よ切り裂け!くらえ!【Wind sword風の刀】!」
と風魔法の刃を繰り出し熊の体に傷を付けると、
「水よ。凍てつく剣となれ!【Ice sword氷の剣】!」
昴が得意の氷魔法で作った無数の剣で熊を攻撃した。

「よし!これでとどめだ!【pillar of fire火柱】!!」
と、最後に俺が得意とする火柱を熊に打ち込んだその時!
賢と昴の攻撃にダメージをくらっていた筈の熊が、俺の炎を飲み込んだんだ。
「な、なんだと!?」
面食らった俺達3人が、その場に立ち止まっていると、
「相田!田代!中山!逃げろ!!早くっ!!」
と渡瀬の叫ぶ声が聞こえた。
「に、逃げろだと?」
と渡瀬に文句を言おうとしたが、
「中山!氷壁だ!早く!!」
と昴に指示を出している渡瀬の声に、訳が分からず氷壁を出そうと、昴が詠唱する。が、熊が大きく息を吸い込んだのを見た渡瀬の、
「ダメだ!間に合わない!!全員伏せろ!!」
という叫び声が響いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

不要とされる寄せ集め部隊、正規軍の背後で人知れず行軍する〜茫漠と彷徨えるなにか〜

サカキ カリイ
ファンタジー
「なんだ!あの農具は!槍のつもりか?」「あいつの頭見ろよ!鍋を被ってるやつもいるぞ!」ギャハハと指さして笑い転げる正規軍の面々。 魔王と魔獣討伐の為、軍をあげた帝国。 討伐の為に徴兵をかけたのだが、数合わせの事情で無経験かつ寄せ集め、どう見ても不要である部隊を作った。 魔獣を倒しながら敵の現れる発生地点を目指す本隊。 だが、なぜか、全く役に立たないと思われていた部隊が、背後に隠されていた陰謀を暴く一端となってしまう…! 〜以下、第二章の説明〜 魔道士の術式により、異世界への裂け目が大きくなってしまい、 ついに哨戒機などという謎の乗り物まで、この世界へあらわれてしまう…! 一方で主人公は、渦周辺の平野を、異世界との裂け目を閉じる呪物、巫女のネックレスを探して彷徨う羽目となる。 そしてあらわれ来る亡霊達と、戦うこととなるのだった… 以前こちらで途中まで公開していたものの、再アップとなります。 他サイトでも公開しております。旧タイトル「茫漠と彷徨えるなにか」。 「離れ小島の二人の巫女」の登場人物が出てきますが、読まれなくても大丈夫です。 ちなみに巫女のネックレスを持って登場した魔道士は、離れ小島に出てくる男とは別人です。

勇者パーティーの保父になりました

阿井雪
ファンタジー
保父として転生して子供たちの世話をすることになりましたが、その子供たちはSSRの勇者パーティーで 世話したり振り回されたり戦闘したり大変な日常のお話です

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...