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第二章 鏡映しの兄弟編
02.要塞店舗と名店主
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シキとネオンはエリーゼと名乗ったエーテル使いの黒髪少女と共に、彼女が勤める魔術雑貨屋へ向かっていた。
しかしシキは、彼女に案内された雑貨屋を前にして言葉を失っていた。
「…………本当に、ここなのか?」
「ええ、本当にここですよ。どうかしましたか?」
どうしたもこうしたもない。
事前にエリーゼから説明された魔術雑貨屋とは、森を出て丘を少し登った先にポツンとある、崖下の一軒家との事だった。
だが実際に連られて崖下に来てみると、そこには巨大な岩の塊しかなかったのだ。
シキはエリーゼを怪しむ。ネオンより少し年上ほどの見た目の幼さや雰囲気から美人局の線は薄いと思うが、盗賊や悪質な冒険者の一員である可能性が捨て切れなかったからだ。
死角から襲って来るかもしれないと考え、シキはいつでも反撃出来るように戦闘態勢を取った。その時だった。
「エリーゼ、やっと帰って来たのかい?」
どこからか、年老いた女性の乾いた声が響いた。
「おばあちゃん! 遅くなりました。ただいま戻りました」
出所も分からぬその声にエリーゼは元気良く返答した。すると、なんと巨大な岩の一部が音を立てて地面へと沈み込んだのだ。
「なんだと……!?」
シキは再び驚く。消えた岩の先には年季の入った立派な一軒家が、岩板へ囲われるように存在しているではないか。
雑貨屋の扉が開くと同時に、クローズと書かれた吊り看板がガタガタと音を立てる。
薄暗い店の奥からは、ほんのりとエリーゼに雰囲気の似た老婆が現れた。
「あんたどこで道草食ってたんだい! 全く、あんたまでいなくなったのかと…………ん、そちらさんは?」
いの一番にエリーゼを怒鳴りつけた老婆だったが、彼女に並ぶ男と少女に気付き続きの言葉を胸の内に留めた。
「旅人のシキさんとネオンさんです。私が行き倒れていたところを助けて頂きました」
「ただの空腹だがな」
紹介に預かったシキは軽く会釈をする。ネオンはというと食べ物を奪われた恨みをまだ忘れてないのか、老婆の顔をじっと見つめていた。
すると一転、老婆の様子が打って変わった。
「おや、こりゃどうも~。この子の祖母のエランダです~。全くうちの孫が世話になりました~。ほら、あんたもちゃんとお礼しな!」
「もう何度もしておりますよ……っていたた、ご迷惑をおかけしました……」
余所行きの声を出すエランダに腕を引っ張られながら、エリーゼは半ば無理やりに頭を下げた。
「それはいいが、何故またこんな岩の中に? 建築士もさぞかし苦労しただろうに」
「いやいやこの岩はアタシの術だよ。ちょっと訳ありでねぇ。話は長くなるし改めてキチンとお礼もしたいし、ひとまず中へ入っておくれ」
そう言うとエランダとエリーゼは建物の奥へと入っていく。
シキとネオンも続けて入ろうとしたが、扉を潜った段階でピタリと動きが止まった。
シキはネオンの両手を掴み、頑なに動こうとしないのだ。
「……シキさん? どうかされました?」
シキの様子を不思議に思ったエリーゼは、小首を傾げながら問いかける。
魔術雑貨屋の中にある様々な魔道具を見て、シキはあるトラウマを掘り返されていた。
「ああ……。えー……っと、その…………悪いが、裏口から入っても良いか?」
ネオンの手には、触れた魔道具を破壊してしまう暴君が潜んでいるのである。
よって、この魔術と名の打たれた雑貨屋は、全てが彼女の破壊対象なのであった……。
「助けてもらっておいて何ですが、変わった客人ですね……」
エリーゼは眉をひそめながら、建物裏にある崖の影を指差した。
シキ達は店を囲む岩と崖の隙間に出来た裏口から、恐る恐る一歩を踏み入れるのであった。
しかしシキは、彼女に案内された雑貨屋を前にして言葉を失っていた。
「…………本当に、ここなのか?」
「ええ、本当にここですよ。どうかしましたか?」
どうしたもこうしたもない。
事前にエリーゼから説明された魔術雑貨屋とは、森を出て丘を少し登った先にポツンとある、崖下の一軒家との事だった。
だが実際に連られて崖下に来てみると、そこには巨大な岩の塊しかなかったのだ。
シキはエリーゼを怪しむ。ネオンより少し年上ほどの見た目の幼さや雰囲気から美人局の線は薄いと思うが、盗賊や悪質な冒険者の一員である可能性が捨て切れなかったからだ。
死角から襲って来るかもしれないと考え、シキはいつでも反撃出来るように戦闘態勢を取った。その時だった。
「エリーゼ、やっと帰って来たのかい?」
どこからか、年老いた女性の乾いた声が響いた。
「おばあちゃん! 遅くなりました。ただいま戻りました」
出所も分からぬその声にエリーゼは元気良く返答した。すると、なんと巨大な岩の一部が音を立てて地面へと沈み込んだのだ。
「なんだと……!?」
シキは再び驚く。消えた岩の先には年季の入った立派な一軒家が、岩板へ囲われるように存在しているではないか。
雑貨屋の扉が開くと同時に、クローズと書かれた吊り看板がガタガタと音を立てる。
薄暗い店の奥からは、ほんのりとエリーゼに雰囲気の似た老婆が現れた。
「あんたどこで道草食ってたんだい! 全く、あんたまでいなくなったのかと…………ん、そちらさんは?」
いの一番にエリーゼを怒鳴りつけた老婆だったが、彼女に並ぶ男と少女に気付き続きの言葉を胸の内に留めた。
「旅人のシキさんとネオンさんです。私が行き倒れていたところを助けて頂きました」
「ただの空腹だがな」
紹介に預かったシキは軽く会釈をする。ネオンはというと食べ物を奪われた恨みをまだ忘れてないのか、老婆の顔をじっと見つめていた。
すると一転、老婆の様子が打って変わった。
「おや、こりゃどうも~。この子の祖母のエランダです~。全くうちの孫が世話になりました~。ほら、あんたもちゃんとお礼しな!」
「もう何度もしておりますよ……っていたた、ご迷惑をおかけしました……」
余所行きの声を出すエランダに腕を引っ張られながら、エリーゼは半ば無理やりに頭を下げた。
「それはいいが、何故またこんな岩の中に? 建築士もさぞかし苦労しただろうに」
「いやいやこの岩はアタシの術だよ。ちょっと訳ありでねぇ。話は長くなるし改めてキチンとお礼もしたいし、ひとまず中へ入っておくれ」
そう言うとエランダとエリーゼは建物の奥へと入っていく。
シキとネオンも続けて入ろうとしたが、扉を潜った段階でピタリと動きが止まった。
シキはネオンの両手を掴み、頑なに動こうとしないのだ。
「……シキさん? どうかされました?」
シキの様子を不思議に思ったエリーゼは、小首を傾げながら問いかける。
魔術雑貨屋の中にある様々な魔道具を見て、シキはあるトラウマを掘り返されていた。
「ああ……。えー……っと、その…………悪いが、裏口から入っても良いか?」
ネオンの手には、触れた魔道具を破壊してしまう暴君が潜んでいるのである。
よって、この魔術と名の打たれた雑貨屋は、全てが彼女の破壊対象なのであった……。
「助けてもらっておいて何ですが、変わった客人ですね……」
エリーゼは眉をひそめながら、建物裏にある崖の影を指差した。
シキ達は店を囲む岩と崖の隙間に出来た裏口から、恐る恐る一歩を踏み入れるのであった。
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