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第二章 鏡映しの兄弟編
34.ダーダネラの戦士
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ダーダネラの戦士達は、鏡映しとなるように奇妙な動きを繰り返しながら、敵を殲滅するための技を放つ。
「行くぞ!!」
シキの合図を皮切りに侵入者達はそれぞれの戦いを始める。
「祖母直伝の勝利を掴むための戦い方、行きます! 氷結精製:降雹の刃、氷裂の槌、氷河の盾、そして雪崩の浸食! からの氷柱の監獄ッ!!」
強度と威力に特化した術を使い分け、さらにその術を連射するエランダが教え込んだ最強の戦い方。それを今、エリーゼは守るべき戦いのために実践する。
「理想を灯す左手の太陽ァ!!」
ダーダネラの戦士は揺るがない。飛んで来た氷の短剣を焼き尽くし、降りかかる大槌を殴り壊し、そして目の前に立ち塞がった氷河のような壁に穴を空ける。
続いて現れた雪崩れ込む雪を消そうとしたところで、ダーダネラの戦士は違和感に気づいた。
「この雪……目眩ましか!!」
屋外で魔物共を飲み込んだ莫大な雪崩。しかし放たれた雪は質量が極端に少なく、襲い掛かるにしては威力に欠けていた。
違和感に気づいた直後、視界が灼熱の陽炎から真っ白な雪煙に変化したのを見て強い警戒をする。
そんな彼が警戒をする事を見越した上での、さらなる追撃。
「……ッ!? 氷の檻……ッ!!」
強固なる檻から抜け出す方法はただ一つ。
それは地面を貫き下層に逃げる事。そのはずだった。
「ヒヒッ、それはもうおせぇんだよ」
「……ッ!?」
ニヒルな笑みと共に檻の中の敵は紫のエーテルに身を包む。直後、敵は煙となって形を失う。
「なっ、偽物!? では本物は……!!」
「ここだァ!!」
混乱するエリーゼの目前に、二人のダーダネラの戦士が現れる。
それぞれ右手と左手に宿る紫炎を振りかざし、怯える氷の使い手へと燃え盛る腕を振り下ろす。
「させるか!!」
「ッス!!」
エリーゼの左からはチャタローがその巨体で体当たりを、右からはエーテルを喰らう短剣を振りかざしたシキが割って入った。
「皆さん!!」
直前でエリーゼへの攻撃は外れる。
左のダーダネラの戦士はチャタローに突き飛ばされ壁際へ。しかし右の敵はシキ一振りを避け燃え盛る紫炎で返り討ちにする。
「他人のエーテルを奪おうなど……コソ泥めがぁ!!」
「しまっ……!?」
避けられ隙の出来たシキに燃え盛る衝撃波が襲い掛かる。
防御も間に合わず直撃したシキは内臓を抉られ、そして大部屋の中心へとそびえ立つ氷の壁に叩きつけられる。
「ぐああああああ……がっ!!」
氷の壁の一部が崩れ、反対側のまだ白く染まっていない室内が現れる。そしてシキはそのまま壁の向こうへと連れ去られた。
「シキさん!! 氷結精製:氷柱の槍!!」
彼を連れ去るダーダネラの戦士の背中に氷の槍を放つ。しかしそのような単調な攻撃、ひらりと身を反らし避けられてしまう。
そのままシキは、エリーゼが作り出した壁の向こう側へと連れ去られてしまった。だが焦る暇もなく次の攻撃が、もう一人の敵より襲い掛かる。
「幻影を焦がす右手の太陽ァ!!」
それは絶望。
「なん……なんスか。これは……!!」
ネオンの手により数が減って行っていた炎の塊。その全てがなんと、忌まわしきダーダネラの戦士の姿へと変貌したのだ。
ゆうに二十を超えるダーダネラの戦士が、雪煙で霞む屋敷の中で立ち尽くしていた。
そして。
「理想と幻想を燃やす二つの太陽ァ!!」
その二十を超える敵全てが、国を揺るがす一撃を放とうとしていた。
絶望的な状況を前にミルカは放心状態になっていた。
こんなもの、どうやって勝てと言うのか。一人や二人でここまで苦戦していた相手に、何をしたら勝てると言うのか。
ミルカの脳裏に、死の一文字が浮かび上がりそうになった。その時だ。
「まだですミルカさん!! 全ての敵を今すぐ消し去るのです!!」
ハッと。未だに勝利を諦めていない少女の言葉が耳に入る。
そうだ。これは全て偽物。ネオンの手で触れれば消えるまがい物の絶望なのだ。
「ごめん……いや、分かったッス!! ネオンちゃん行くッスよ!!」
「…………!!」
癖っ毛少女は再び寡黙なる少女の手を取り、巨大な猫へと騎乗する。そして、尊敬するリーダーの力を借りて目の前の絶望を振り払う。
「もう一度行くッス!! チャタロー、風馬の威を借りる猫!!」
「フン、ニャアアアアア!!」
風馬の力を借りた巨大猫は、そのどの敵よりも早く戦場を駆け回る。そして立ち尽くす絶望へとネオンの手が触れるたび、敵は煙となって消滅してゆく。
「行けるッス!!」
目に付いたダーダネラの戦士を一人、また一人と消し進めるミルカ達。そして最後の一人を消そうとした、その時だった。
「ミルカさん離れて!! その人は違います……!!」
「えっ?」
ゆらりと立ち尽くす最後の一人へ近づく。手が届くほど接近したその瞬間、敵は突然ミルカ達の方へ振り向くとニヤリと笑った。
「馬鹿が、俺は本物だァ!!」
気の緩みが起こしたミスであった。大量の敵を前に、そしてそれを倒せる力を手にし、忘れてはならない基本的な事が霞んでいた。
本物が紛れているという事。その事実に気づいた時にはもう、燃え盛る紫の炎は目前に迫っていた。
「理想を灯す左手の太陽ァ!!」
「フンニャ!?」
「ッ、ネオンちゃん……!!」
ミルカは咄嗟にネオンを引っ張り、その身へ覆い被さる。
せめて彼女だけでも、このミスは自分が引き起こしたものなのだから、彼女だけでも……!!
灼熱の炎がミルカの背に触れた瞬間だった。
「氷結精製:氷裂の槌ァァァ!!」
氷を裂くほどの大槌が、ダーダネラの戦士の頭上へと降り注いだ。
ダーダネラの戦士は、咄嗟に燃え盛る手をミルカから大槌へと移す。
「ッ、クソが!!」
大槌を壊すと同時に、敵は姿を消した。いや、更なるダーダネラの戦士が四人に増えエリーゼへと襲い掛かっていた。
「さっきから邪魔なんだよ!! とっとと消え失せろォ!!」
絶望の叫びが四重に耳へと入ってくる。
「ッ!! 氷結精製:氷河の盾!!」
「無駄だァ!!」
咄嗟に作り出した強固な壁も、四人相手には羽虫程度の妨害にしかならない。
「これで終わりだ。理想と幻想を燃やす二つの太陽ァァァ!!」
「エリーゼさんッッッ!!」
ミルカの悲痛な叫びが真っ白な室内へと響き渡る。
国を揺るがすほどの絶望が、四方からエリーゼへと襲い掛かった。
「行くぞ!!」
シキの合図を皮切りに侵入者達はそれぞれの戦いを始める。
「祖母直伝の勝利を掴むための戦い方、行きます! 氷結精製:降雹の刃、氷裂の槌、氷河の盾、そして雪崩の浸食! からの氷柱の監獄ッ!!」
強度と威力に特化した術を使い分け、さらにその術を連射するエランダが教え込んだ最強の戦い方。それを今、エリーゼは守るべき戦いのために実践する。
「理想を灯す左手の太陽ァ!!」
ダーダネラの戦士は揺るがない。飛んで来た氷の短剣を焼き尽くし、降りかかる大槌を殴り壊し、そして目の前に立ち塞がった氷河のような壁に穴を空ける。
続いて現れた雪崩れ込む雪を消そうとしたところで、ダーダネラの戦士は違和感に気づいた。
「この雪……目眩ましか!!」
屋外で魔物共を飲み込んだ莫大な雪崩。しかし放たれた雪は質量が極端に少なく、襲い掛かるにしては威力に欠けていた。
違和感に気づいた直後、視界が灼熱の陽炎から真っ白な雪煙に変化したのを見て強い警戒をする。
そんな彼が警戒をする事を見越した上での、さらなる追撃。
「……ッ!? 氷の檻……ッ!!」
強固なる檻から抜け出す方法はただ一つ。
それは地面を貫き下層に逃げる事。そのはずだった。
「ヒヒッ、それはもうおせぇんだよ」
「……ッ!?」
ニヒルな笑みと共に檻の中の敵は紫のエーテルに身を包む。直後、敵は煙となって形を失う。
「なっ、偽物!? では本物は……!!」
「ここだァ!!」
混乱するエリーゼの目前に、二人のダーダネラの戦士が現れる。
それぞれ右手と左手に宿る紫炎を振りかざし、怯える氷の使い手へと燃え盛る腕を振り下ろす。
「させるか!!」
「ッス!!」
エリーゼの左からはチャタローがその巨体で体当たりを、右からはエーテルを喰らう短剣を振りかざしたシキが割って入った。
「皆さん!!」
直前でエリーゼへの攻撃は外れる。
左のダーダネラの戦士はチャタローに突き飛ばされ壁際へ。しかし右の敵はシキ一振りを避け燃え盛る紫炎で返り討ちにする。
「他人のエーテルを奪おうなど……コソ泥めがぁ!!」
「しまっ……!?」
避けられ隙の出来たシキに燃え盛る衝撃波が襲い掛かる。
防御も間に合わず直撃したシキは内臓を抉られ、そして大部屋の中心へとそびえ立つ氷の壁に叩きつけられる。
「ぐああああああ……がっ!!」
氷の壁の一部が崩れ、反対側のまだ白く染まっていない室内が現れる。そしてシキはそのまま壁の向こうへと連れ去られた。
「シキさん!! 氷結精製:氷柱の槍!!」
彼を連れ去るダーダネラの戦士の背中に氷の槍を放つ。しかしそのような単調な攻撃、ひらりと身を反らし避けられてしまう。
そのままシキは、エリーゼが作り出した壁の向こう側へと連れ去られてしまった。だが焦る暇もなく次の攻撃が、もう一人の敵より襲い掛かる。
「幻影を焦がす右手の太陽ァ!!」
それは絶望。
「なん……なんスか。これは……!!」
ネオンの手により数が減って行っていた炎の塊。その全てがなんと、忌まわしきダーダネラの戦士の姿へと変貌したのだ。
ゆうに二十を超えるダーダネラの戦士が、雪煙で霞む屋敷の中で立ち尽くしていた。
そして。
「理想と幻想を燃やす二つの太陽ァ!!」
その二十を超える敵全てが、国を揺るがす一撃を放とうとしていた。
絶望的な状況を前にミルカは放心状態になっていた。
こんなもの、どうやって勝てと言うのか。一人や二人でここまで苦戦していた相手に、何をしたら勝てると言うのか。
ミルカの脳裏に、死の一文字が浮かび上がりそうになった。その時だ。
「まだですミルカさん!! 全ての敵を今すぐ消し去るのです!!」
ハッと。未だに勝利を諦めていない少女の言葉が耳に入る。
そうだ。これは全て偽物。ネオンの手で触れれば消えるまがい物の絶望なのだ。
「ごめん……いや、分かったッス!! ネオンちゃん行くッスよ!!」
「…………!!」
癖っ毛少女は再び寡黙なる少女の手を取り、巨大な猫へと騎乗する。そして、尊敬するリーダーの力を借りて目の前の絶望を振り払う。
「もう一度行くッス!! チャタロー、風馬の威を借りる猫!!」
「フン、ニャアアアアア!!」
風馬の力を借りた巨大猫は、そのどの敵よりも早く戦場を駆け回る。そして立ち尽くす絶望へとネオンの手が触れるたび、敵は煙となって消滅してゆく。
「行けるッス!!」
目に付いたダーダネラの戦士を一人、また一人と消し進めるミルカ達。そして最後の一人を消そうとした、その時だった。
「ミルカさん離れて!! その人は違います……!!」
「えっ?」
ゆらりと立ち尽くす最後の一人へ近づく。手が届くほど接近したその瞬間、敵は突然ミルカ達の方へ振り向くとニヤリと笑った。
「馬鹿が、俺は本物だァ!!」
気の緩みが起こしたミスであった。大量の敵を前に、そしてそれを倒せる力を手にし、忘れてはならない基本的な事が霞んでいた。
本物が紛れているという事。その事実に気づいた時にはもう、燃え盛る紫の炎は目前に迫っていた。
「理想を灯す左手の太陽ァ!!」
「フンニャ!?」
「ッ、ネオンちゃん……!!」
ミルカは咄嗟にネオンを引っ張り、その身へ覆い被さる。
せめて彼女だけでも、このミスは自分が引き起こしたものなのだから、彼女だけでも……!!
灼熱の炎がミルカの背に触れた瞬間だった。
「氷結精製:氷裂の槌ァァァ!!」
氷を裂くほどの大槌が、ダーダネラの戦士の頭上へと降り注いだ。
ダーダネラの戦士は、咄嗟に燃え盛る手をミルカから大槌へと移す。
「ッ、クソが!!」
大槌を壊すと同時に、敵は姿を消した。いや、更なるダーダネラの戦士が四人に増えエリーゼへと襲い掛かっていた。
「さっきから邪魔なんだよ!! とっとと消え失せろォ!!」
絶望の叫びが四重に耳へと入ってくる。
「ッ!! 氷結精製:氷河の盾!!」
「無駄だァ!!」
咄嗟に作り出した強固な壁も、四人相手には羽虫程度の妨害にしかならない。
「これで終わりだ。理想と幻想を燃やす二つの太陽ァァァ!!」
「エリーゼさんッッッ!!」
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