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第四章 風の連理編
17.瞳の中の巨人
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シキ対アルパインの壮絶にはた迷惑な腕相撲勝負は引き分けに終わった。
露店通りに吹き荒れた砂煙の中を逃げるように飛び出したアルパインとスリービーは、本来の目的である探し物を見つけるためにナルギットの中を彷徨っていた。
「…………分かんねぇ」
「アルパイン、どうしたノ?」
「ありえねぇんだよォ」
いくつもある露店や商店に見向きもせず、アルパインは腕を組んだままどこか上の空で歩き続ける。
うんうんと唸る彼女を見て、スリービーは深く被ったフードをさらに引っ張り気合を入れ直す。
そして彼女がこのままじゃあ仕事にならないと、アルパインの抱える疑問を取り除こうとした。
「さっきも言ったけど、あの結晶は探してた物じゃない。騒ぎの間にこっそり確認したけど、中は普通のエーテルしか入ってなかったよ。心配しなくてもいいんじゃないかナ」
「そーじゃねェ」
「………?」
「アタシは本気を出したんだ。右目のコアだけじゃねぇ。『巨人』の力も解放して戦った。その上でアイツと引き分けたんだよォ……!」
アルパインが気にしていたのは、言い争いの元になった売り物の結晶ではない。結晶を求めて戦った背の高い赤髪の男、シキの存在であった。
アルパインは持ち前の腕力だけでなく、右目を隠す眼帯の下。瞳の代わりに埋め込まれた、緑のエーテルコアでもまだ足りない。さらにコアの記憶に刻まれた『巨人』と呼ばれる魔物の力を使って、その上で互角であったのだ。
思いがけぬアルパインの告白に、彼女の強さを知っていたスリービーは驚きを隠せないでいた。
そして彼女の起こした騒ぎの規模に、意地以外の要素が関わっていた事へ焦燥感を覚える。
「はぁ……!? 巨人もって……だからあれだけ騒ぎを起こしたノ!?」
「あったりめーだ。じゃなきゃアタシが一撃で倒せねー相手なんて、いねぇんだよォ」
「そうじゃないヨ! アルパインのコアと同等という事は、彼らがアレを持っているかもしれない……?」
「だから分かんねぇから困ってんだよォ……! ったく、早いとこアイツら探して確認取らねーと」
そう言うと、上の空を見つめていたアルパインは軽く俯くとふと振り返り、歩いて来た道を眺める。
その様子を見てまた彼女が思いつきで動くような気がしたスリービーは、深く被ったフードを揺らし、フードの影からアルパインを睨み付け制止する。
「待ってアルパイン。それも大事だけど、ウチらがナルギットへ来た理由。忘れた訳じゃないよネ。何があっても最優先は何か、分かってるよネ?」
スリービーの目はフードに隠れてよく見えない。
しかし彼女の凛とした佇まいは、一切の冗談が混ざっていないという事を語っていた。
緑のコアを持つアルパイン達が、何故わざわざ黄の国ナルギットを訪れているのか。
そこには観光や買い物といった娯楽目的ではない、真剣で無下には出来ない目的が潜んでいた。
「……おやっさんの頼み通り、この国のコアの回収だろ。あーもう! だったら先にそっちの要件だよォ! コア探してりゃアイツらもすぐ来るだろうから、そこで確認すりゃいい! それで文句ねーな、スリービー!」
国庫から売りに出されたという、黄のエーテルコア。
ただのエーテルの塊でしかないとされる、今までずっと眠っていたお宝。
だがアルパインの瞳には、巨人の魔物が眠っている。
露店通りに吹き荒れた砂煙の中を逃げるように飛び出したアルパインとスリービーは、本来の目的である探し物を見つけるためにナルギットの中を彷徨っていた。
「…………分かんねぇ」
「アルパイン、どうしたノ?」
「ありえねぇんだよォ」
いくつもある露店や商店に見向きもせず、アルパインは腕を組んだままどこか上の空で歩き続ける。
うんうんと唸る彼女を見て、スリービーは深く被ったフードをさらに引っ張り気合を入れ直す。
そして彼女がこのままじゃあ仕事にならないと、アルパインの抱える疑問を取り除こうとした。
「さっきも言ったけど、あの結晶は探してた物じゃない。騒ぎの間にこっそり確認したけど、中は普通のエーテルしか入ってなかったよ。心配しなくてもいいんじゃないかナ」
「そーじゃねェ」
「………?」
「アタシは本気を出したんだ。右目のコアだけじゃねぇ。『巨人』の力も解放して戦った。その上でアイツと引き分けたんだよォ……!」
アルパインが気にしていたのは、言い争いの元になった売り物の結晶ではない。結晶を求めて戦った背の高い赤髪の男、シキの存在であった。
アルパインは持ち前の腕力だけでなく、右目を隠す眼帯の下。瞳の代わりに埋め込まれた、緑のエーテルコアでもまだ足りない。さらにコアの記憶に刻まれた『巨人』と呼ばれる魔物の力を使って、その上で互角であったのだ。
思いがけぬアルパインの告白に、彼女の強さを知っていたスリービーは驚きを隠せないでいた。
そして彼女の起こした騒ぎの規模に、意地以外の要素が関わっていた事へ焦燥感を覚える。
「はぁ……!? 巨人もって……だからあれだけ騒ぎを起こしたノ!?」
「あったりめーだ。じゃなきゃアタシが一撃で倒せねー相手なんて、いねぇんだよォ」
「そうじゃないヨ! アルパインのコアと同等という事は、彼らがアレを持っているかもしれない……?」
「だから分かんねぇから困ってんだよォ……! ったく、早いとこアイツら探して確認取らねーと」
そう言うと、上の空を見つめていたアルパインは軽く俯くとふと振り返り、歩いて来た道を眺める。
その様子を見てまた彼女が思いつきで動くような気がしたスリービーは、深く被ったフードを揺らし、フードの影からアルパインを睨み付け制止する。
「待ってアルパイン。それも大事だけど、ウチらがナルギットへ来た理由。忘れた訳じゃないよネ。何があっても最優先は何か、分かってるよネ?」
スリービーの目はフードに隠れてよく見えない。
しかし彼女の凛とした佇まいは、一切の冗談が混ざっていないという事を語っていた。
緑のコアを持つアルパイン達が、何故わざわざ黄の国ナルギットを訪れているのか。
そこには観光や買い物といった娯楽目的ではない、真剣で無下には出来ない目的が潜んでいた。
「……おやっさんの頼み通り、この国のコアの回収だろ。あーもう! だったら先にそっちの要件だよォ! コア探してりゃアイツらもすぐ来るだろうから、そこで確認すりゃいい! それで文句ねーな、スリービー!」
国庫から売りに出されたという、黄のエーテルコア。
ただのエーテルの塊でしかないとされる、今までずっと眠っていたお宝。
だがアルパインの瞳には、巨人の魔物が眠っている。
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