東の魔王と西の魔女

ヒロイセカイ

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東の魔王と西の魔女

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 昔々東と西にそれぞれ1つの国がありました。
 山に隔たれた2つの国はお互いのことを知りません。

 ある日東に力の魔王、西に知の魔女が現れました。
 力の魔王は東の国を、知の魔女は西の国を滅ぼす宣言をしました。

 2つの国はそれぞれ1万の民を討伐に送り出しました。
 そして力の魔王、知の魔女を倒し国を守ることができました。

 しかし、国に戻った者は1人ずつでした。
 東の国に戻ったのは若い男でした。彼は剣術も弱く最後まで怯え出発を躊躇っていました。

 また西の国へ戻ったのは孫もいる老兵でした。1万人の先頭をかってでて知の魔女に挑んだため、戻ってからは誰からも英雄扱いされました。

 しばらく時間が経つと2つの国には不穏な空気が流れはじめました。
 東の国ではどうしても弱々しい若者が魔王を倒したことを信じられない者が多かったのです。彼は嘘をついていたわけではありませんでした。彼が魔王の前に立った時、すでに他のものはみんな死んでいましたが、魔王も話すことすらできない程の弱りようだったのです。その場でとどめを刺さなければまた1万人の力が必要だったでしょう。しかし、その場には彼しかおらず魔王はすでに彼の力でも倒せるほど非力だったのです。彼は勇気を振り絞って一振り。魔王を倒し魔王の持っていた剣を土産に帰還したのでした。

 西の知の魔女はどうだったのでしょう。
 知の魔女は得意とする魔法で老人以外の者を殺していきました。そしてついに生き残ったのは最初から戦い続けた老人だけとなったのです。
 魔女は言いました。
「お前は私を倒すことができる。しかし、お前は英雄にはなれない。私の最後の魔力で西の国を吹き飛ばすからね」

 狼狽えた老人に向かって魔女は話を続けました。
「お前が私と誓約を結ぶのであれば、お前は英雄となり国で幸せな生活を送れるぞ」
 国に子や孫がいる老人は悩み、そして魔女にたずねました。
「誓約とはなんだ」
 魔女は言いました。
「簡単なこと。お前はこのまま帰り英雄として迎え入れられる。私はここで人間どもの心に悪の魔法を注ぎ続ける」
 老人はどうしたのでしょうか。
 先述の通り老人は英雄として西の国に帰ることができました。

 魔女の魔法で西の国からは妬み、憎しみが溢れるようになりましたが老人は死ぬまで家族にも真実を話しませんでした。時が経ち西の王様が老人を称えるために作った像には鳩のフンが落ちても誰も気にしなくなりました。

 また東の国では勇者と崇められた若者が彼を妬む者たちからの嫌がらせや、殺された者たちの家族から恨まれる辛い日々が続いていました。彼は両親が亡くなってからまもなく国から姿を消したのでした。彼が帰還した際に魔王が持っていた魔法封じの剣もお城から消えていました。
 しばらくして彼を知る人はいなくなりました。

 数十年経ち東と西の国は国交を結び傍目には平和な暮らしを送っているように見られました。

 もちろん今でも魔女は魔法を注ぎ続けています。
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