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双子の過去
2人きり
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それは、あまりにも突然の事だった。
結婚記念日のその日、ドライブ中に車がガードレールを突き破り、乗っていた両親ともども海に転落した。
その衝撃で車は大破し、数日後には両親の死体が沖合いで発見されることとなった。
深い悲しみと絶望に陥った陸斗に残されたのは、多額の保険金と、たった1人の家族となった海斗だけだった。
その事故以来、海斗は美由が亡くなった時と同じように、すっかり塞ぎ込んでしまっていた。
陸斗は陸斗で、サッカーを辞めた後、先生に許可をもらって始めた新聞配達の仕事や、慣れない家事に明け暮れる多忙な日々を送っており、どうしても海斗に目をかける時間が少なくなっていた。
そんなある日の事、いつものように夕食の買い出しを終えて家に帰った陸斗は、海斗の姿が見当たらないことに気づいた。
「海斗、帰ったぞー。」
いつもなら返事くらいは返してくれるのだが、今は応答はない。
しかし玄関には、確かに海斗の靴があるため、家のどこかにいるのは間違いなかった。
ひとまず一階を見て回った後、ふとある予想が浮かんだ。
「もしかして、風呂か。」
まだ風呂に入るのには早い時間な気もしたが、ここまで気配がないならそういう事だろうと思い、陸斗は風呂場に向かった。
するとやはり明かりがついており、陸斗はホッと息をつくと、風呂場の扉の軽くノックした。
「海斗、ただいま。今帰ったぞ。」
しかし中からは返答は無く、陸斗は再度ノックした後、風呂場の扉をそっと開けた。
「──ッ!!」
そこには予想だにしなかった光景が広がっており、陸斗は慌てて風呂場に飛び込んだ。
「海斗!おい、海斗!!」
海斗は湯船に左腕を浸けたまま、その場に倒れ込んでいた。
その腕には深い切り傷があり、湯船を赤く染めていた。
それを見て焦った陸斗は、すぐさま海斗を抱き起すと、彼の名前を叫びながら何度も体を揺すぶった。
すると海斗の目が僅かに開き、ほんの少し笑った。
「……兄さん、帰ってきたんだ。」
その声はとてもか細くて、弱っているのは明白だった。
早く救急車を呼ばなければと思いつつ、どうしても理由を聞かずにはいられなかった。
「帰ってきたんだ、じゃない!何でこんな事したんだよ?」
感情を抑えきれず、つい強い口調で問いただしてしまう。
すると海斗は眉を下げて、目線を少し逸らした。
「………父さんも母さんもいなくなって、僕のために無理している兄さんを見ていたら……辛くて。僕がいなくなれば、兄さんもこんなに頑張らなくてもいいんじゃないかって──」
「バカッ!!俺は海斗がいるから、こうして生きていけるんだ。なのに、いなくなればとか言うなよ……。」
やはり、海斗を放っておいてはいけなかったと、この時後悔した。
いくら多忙だったとはいえ、もっと海斗との時間を作り、話し合うべきだったのだ。
「………ごめん、大声出して。俺が悪かった。だから、もうそんな事言うな。」
すっかり力の抜けてしまった海斗を抱き寄せながら、陸斗は誓いを立てた。
もう二度と、海斗を傷つけないということ。
そして、何が何でも、海斗を守り抜くということを──。
結婚記念日のその日、ドライブ中に車がガードレールを突き破り、乗っていた両親ともども海に転落した。
その衝撃で車は大破し、数日後には両親の死体が沖合いで発見されることとなった。
深い悲しみと絶望に陥った陸斗に残されたのは、多額の保険金と、たった1人の家族となった海斗だけだった。
その事故以来、海斗は美由が亡くなった時と同じように、すっかり塞ぎ込んでしまっていた。
陸斗は陸斗で、サッカーを辞めた後、先生に許可をもらって始めた新聞配達の仕事や、慣れない家事に明け暮れる多忙な日々を送っており、どうしても海斗に目をかける時間が少なくなっていた。
そんなある日の事、いつものように夕食の買い出しを終えて家に帰った陸斗は、海斗の姿が見当たらないことに気づいた。
「海斗、帰ったぞー。」
いつもなら返事くらいは返してくれるのだが、今は応答はない。
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ひとまず一階を見て回った後、ふとある予想が浮かんだ。
「もしかして、風呂か。」
まだ風呂に入るのには早い時間な気もしたが、ここまで気配がないならそういう事だろうと思い、陸斗は風呂場に向かった。
するとやはり明かりがついており、陸斗はホッと息をつくと、風呂場の扉の軽くノックした。
「海斗、ただいま。今帰ったぞ。」
しかし中からは返答は無く、陸斗は再度ノックした後、風呂場の扉をそっと開けた。
「──ッ!!」
そこには予想だにしなかった光景が広がっており、陸斗は慌てて風呂場に飛び込んだ。
「海斗!おい、海斗!!」
海斗は湯船に左腕を浸けたまま、その場に倒れ込んでいた。
その腕には深い切り傷があり、湯船を赤く染めていた。
それを見て焦った陸斗は、すぐさま海斗を抱き起すと、彼の名前を叫びながら何度も体を揺すぶった。
すると海斗の目が僅かに開き、ほんの少し笑った。
「……兄さん、帰ってきたんだ。」
その声はとてもか細くて、弱っているのは明白だった。
早く救急車を呼ばなければと思いつつ、どうしても理由を聞かずにはいられなかった。
「帰ってきたんだ、じゃない!何でこんな事したんだよ?」
感情を抑えきれず、つい強い口調で問いただしてしまう。
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「………父さんも母さんもいなくなって、僕のために無理している兄さんを見ていたら……辛くて。僕がいなくなれば、兄さんもこんなに頑張らなくてもいいんじゃないかって──」
「バカッ!!俺は海斗がいるから、こうして生きていけるんだ。なのに、いなくなればとか言うなよ……。」
やはり、海斗を放っておいてはいけなかったと、この時後悔した。
いくら多忙だったとはいえ、もっと海斗との時間を作り、話し合うべきだったのだ。
「………ごめん、大声出して。俺が悪かった。だから、もうそんな事言うな。」
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そして、何が何でも、海斗を守り抜くということを──。
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