Hの経験人数=レベルなので色々な男と寝ようと思います

ノルねこ

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11、パーティーランクC『炎熱地獄』

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 ーーコイツは強い。

 ハリーたちは冒険者の経験と本能でそう悟った。



  *



「良かったぁ、まだ宿にいて」

 俺たちの緊張などどこ吹く風でルネは軽やかに笑顔を見せた。するとルネの前にいた男の威圧がすっと消え、その場の空気が弛緩した。ルネに見つからないように小さく息を吐き、呼吸を整えて目の前の男を観察する。
 一見したところ、男はスラリとした体格の青年で強そうには見えないが、外見と強さはイコールではないと、冒険者なら誰もが知っている。
 その男が何かを探るような目つきで俺たち一人一人をゆっくりと見つめた後、振り返ってルネに聞く。

「こいつらがお前が言っていた護衛の?」
「うん。パーティーランクCの『炎熱地獄ブレイジング・インフェルノ』の三人」
「ふうん……」

 男の値踏みするような眼に背中がひりつく。ランクCだということをルネがすごいね、と褒めてくれるがそんな大したもんじゃないことを、俺たちが一番よく分かっている。

「俺たちはパーティーランクCって言ってもなり立てだし、田舎での評価だからな。王都じゃたいして通用しねえ」

 パーティーランクは、一般では上からAからFまでの6段階だ。Aランクのさらに上にSランクがあるが、これは全員がレベル50以上の勇者率いるパーティーに与えられた特別なランクで、普通の冒険者がいくら頑張ってもなれるものではない。Aランクはメンバーの半分がレベル50以上という規定があるため、これもまた数が少ない。基本的に王侯貴族に頼まれた依頼をこなしたり護衛をしたりで迷宮に潜ることはしない。アイツらは俺たちBランク以下の冒険者をバカにして下に見ることが多いので嫌いだった。
 
 Cランクは中堅どころだ。長く冒険者をやっていて、ちょっとだけ強いやつがメンバーにいれば大体の奴らがなることが出来る。週に一度くらい迷宮に潜れば普通に働くよりちょっといい生活が送られるくらいの収入が入るため、危険が多い上のBランクには上がりたくないと思う奴らが多いせいか、このランクから上を目指すやつは少ない。

 俺たちは迷宮の攻略回数や討伐数でCランクになったが、田舎ではたいして強い魔物がいる訳でもなく、迷宮もそんなに深くない。そう考えると俺たちが王都でCランクなんて烏滸がましい。実際は良くてDランクだろう。

「そんな事ないよ。一緒に王都まで来たから僕はハリーたちが強いって知ってる。護衛された僕が言うんだから間違いない」

 ルネがそう言ってくれて嬉しくなった。

「で、この黒い野郎は誰だ?」

 ルネを護るかのように立ちはだかったまま動かない黒い男に目線を動かす。

「あ、この人は娼館の人」

 ルネが応えると、男が迷う素振りもなくヘイデンの前まで歩いて来て右手を差し出した。
 デカくて厳つくていかにも強そうな外見のラルフではなく、明らかにこの三人の中で一番強いのがヘイデンだということが分かっている動きだった。確かにこの中で一番レベルが高いのがヘイデンだった。

「娼館『フォルトゥーナ』の副支配人モリオンだ。ジェイドが世話になったな」
「ジェイド?」

 不思議そうな顔をした俺にヘイデンの手を握ったままモリオンと名乗った男が、店では宝石の名前で男娼を呼ぶと教えた。ヘイデンが真っ赤な顔をして握られた手の痛みに耐えている。同じくヘイデンに手をグッと握られているはずのモリオンは涼しい顔だ。ヘイデンですら握力さえこの男に敵わないのか。

「これからルネのことはジェイドと呼べ。本名は言うな」

 俺とラルフはコクコクと頷くことしか出来なかった。モリオンがヘイデンの手をぱっと離し、ヘイデンが顔を歪めて赤くなった手をさすった。ルネは何が起きているのか分からずきょとんとした顔をしている。

「どうしたの?」
「……何でもねぇ」

 握力勝負で自分より細い男に負けたなんて恥ずかしくて言えないのか、ヘイデンが何でもない風を装ってまだ痛むであろう手を振った。
 ルネーーいやもうジェイドかーーはヘイデンとモリオンを交互に見つめていたが、まあいいかと小さく呟いてから笑顔で俺の方を向いた。

「そういえばハリー、お店のこと教えてくれてありがとう。今日から働くことになったから、遊びに来てね」

 その瞬間、俺はモリオンに首根っこを掴まれていた。いつの間に目の前に来た? 全く気が付かなかった。

「『フォルトゥーナ』に男娼がいることを誰から聞いた」

 耳元でモリオンの低い声が俺を刺した。襟元をグッと引っ張られて首が絞まる。
 店のことを教えてくれたアンドリュー・チルコットの能天気そうな顔が頭を掠めた。あいつとは初めて会ってから二度ほど顔を合わせて一緒に呑んだ。金払いが良く、明るくて話し上手なアンドリューの事を俺は友だちだとして好きになりかけている。ヤツに迷惑はかけたくないので名前は出さない方がいいだろうと判断した。

「ギ、ギルドで酒を呑んでいた兄ちゃんだよ。名前は知らねえ」
「ギルドで……な。そうか」

 掴まれていた襟をパッと離され息が出来るようになってゲホゲホと咳き込んだ。
 モリオンの反応に、あ、これは誰が店のことを教えたのかバレてるな、と思った。アンドリュー、すまん。

「うちの店に男娼がいるのは公然の秘密だ。店の男娼はほとんどが金持ちや王侯貴族相手の商品であって、お前たちみたいな粗野な冒険者を相手にすることは滅多にない。他の冒険者にはうちの店に男娼がいることを言うなよ」

 モリオンが低いが良く通る声で俺たちに釘を刺した。

「もうっ、モリオンはさっきから何やってんの」

 ルネがモリオンの腕を取ってモリオンに対して上目遣いで頬をふくらませる。モリオンが「触るな」と言いながら掴まれた腕を振り払ってルネの手を離した。

「ごめんね、ほんっと横柄なんだから。どっちが粗野だよ」

 片目を瞑り、手を合わせて男の代わりにルネが俺に謝った。

「モリオンはああ言ったけどね、三人には世話になったから店に来てくれたら僕はいつでも相手してあげるよ~。ね、いいでしょモリオン?」
「ダメに決まってるだろ。客が選べる立場かお前」
「あはは~。やっぱダメか」

 モリオンの背後に黒い炎が見えるのでそんなこと言うのほんっとやめてくれ。よくこんな態度でコイツに接することができるんだ。ルネが大物なのか、ただの鈍感なのか。

「あ、そうだ! ここに来た一番の目的忘れてた。モリオン、お金出して」
「金?」

 鸚鵡返しに訊ねると、モリオンがスーツの内ポケットから布袋を取り出して俺に投げた。ぽすんと手の上に落ちてきた布袋の紐を緩めて中を見ると、銀貨が八枚入っていた。

「ジェイドの護衛と宿代と治療代だ」
「ち、ちょっと待てよ。貰いすぎだ」

 正式な護衛金額に下級ポーション代諸々を含めても精々が銀貨五枚だ。

「それに護衛代は安くするって言ったろ? ……別のものでもう支払ってもらってるし」
「いいから受け取れ」

 モリオンが有無を言わさぬ口調で言った。
 この金を受け取ってしまうと、俺たちとルネとの接点は完全に断たれてしまう。そのことが寂しかった。俺の眼の端でモリオンが口先だけで笑うのが見えた。そうか。これは口止め料も含まれている。『ルネ』はジェイドになるのだから『ルネ』のことは忘れろと。
 パッと顔を上げてモリオンとルネを見る。そんな俺をルネは不思議そうに、モリオンはさっきの口先の笑顔を消した平静な顔をして俺の顔を見つめた。

「察しがいいヤツは嫌いじゃないぜ」

 モリオンの言葉が心を刺した。




 ーーさよなら、ルネ。
 きっともう会うことはないだろう。

「じゃあありがたく」

 俺は自分の荷物の中に布袋を押し込んだ。










 この時はもう二度と会うことはないと思っていた。
 しかしこの後、俺の方から『ルネ・ソエル』に会いに行くことになる。
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