Hの経験人数=レベルなので色々な男と寝ようと思います

ノルねこ

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12、軽薄な男

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 家具店で買った大きなものは配送してもらい、服などの細々した買い物と僕の荷物はモリオンに渡した。すると彼は持っていた自分のビジネスバッグを開けて、その中にポイポイと荷物を放り投げた。ビジネスバッグよりも大きいものもあるはずなのに、全てが中にしゅるんと入っていく。

「うわ、何それ!? どうしてそんなに入るの? 中どうなってるの? いいなぁ、僕も欲しい!」
「質問が多いな。なんだお前、マジックバッグを知らないのか。収納魔法が付与された鞄で、見た目以上の荷物を入れる事ができて便利だぞ。一つ一つの鞄には容量があって、容量が大きい物はめちゃくちゃ値段が高い」

 モリオンの手からバッグを引ったくり、逆さまにしたり中に手を入れてみたりと散々いじり倒していたら、モリオンが僕の手からバッグを奪い返した。

「これは店の物だ。それも一番容量の大きい物だぜ。壊したりしたらお前はしばらくタダ働きだ!」

 結局モリオンの持ち物はそのビジネスバッグだけ。荷物持ちをさせて嫌がらせしようと思ったのに、まったく面白くない。ぷんぷんしながら店に戻ると、店の前に二頭立ての質素な馬車が止まっていた。どこの家のものか分からないように紋章が消されているが、デイヴィス子爵家のお忍び用の馬車だろう。
 紫地に大きな牡丹の花模様がついた派手なスーツを着た男が年配の御者と仲良さげに喋っている。僕たちに気づいた派手な男が手を上げて、大きな声で話しかけてきた。

「よっ、お帰り。ありゃ、こりゃまた可愛い子を連れて」
「オーガスト」

 モリオンが男の名を呼んだ。なんとなくこの二人は相性が悪そうだなあと思う。一方は黒と白のモノトーンで表情があまり変わらず、一方は派手な花柄に、裏表がなさそうな満面の笑みだ。
 オーガストと呼ばれた男は御者の肩を軽く叩くと僕たちの前まで大股で歩いてきて、両手で包みこむように僕の右手を取って握ってきた。手を振りほどこうとしても僕の力では無理だった。

「初めまして、かわいらしいお嬢さん。俺はオーガスト・ガーファンクル。よろしくな。時間があったら今度俺とケーキでも食べに行かないか?」

 頭を下げたオーガストのブラウンの短髪がさらりと揺れ、耳に付けられた幾つもの金色のピアスが光る。服装や態度、甘い話し方から軽薄な感じが透けて見える。

「おい、いつまで手を握っているつもりだ?」

 モリオンが僕たちの間に入り、握っているオーガストの手を手刀で叩いてくれたおかげで手が離れた。ケーキには惹かれるけど、初対面で手を握ってデートに誘う奴なんて信用ならない。

「店の子に手を出すな! それにこの子はお嬢さんじゃない」
「店の? 初対面なんだが」

 モリオンも最初は僕のことをお嬢さんと呼んだクセに、自分のことは棚に上げてオーガストに指摘してる姿が可笑しくて思わず笑ってしまった。モリオンは笑った僕を見て一瞬だけばつが悪そうな顔を見せたけれど、すぐに元の顔に戻ってオーガストに僕を紹介した。

「この子は翡翠ジェイドだ。本名はルネ・ソエル。今日からここで働く。それにこの子は男の子だ! いいか? お・と・こだぞ! オーナーも気に入ってるから絶対に手を出すな。触るな。近寄るな。同じ空気を吸うな」
「むちゃ言うなあ」

 オーガストは僕の下から上に目線を動かし、最後に僕の顔を見てニカっと人懐こそうに歯を見せて笑った。深い蜂蜜色の瞳が細められる。僕の好みじゃないけれど、女の子ならポッとしてしまいそうな笑顔だった。歯並びが綺麗で歯が白い。筋肉質の大きな身体からふわりと甘い香水の匂いがした。オーガストのものか、女の残り香か。何にせよオーガストが色男ということは間違いない。

「ジェイド、こいつは娼婦たちの見張り・護衛と門番の仕事をしているオーガストで元近衛騎士だ。女で身を持ち崩して騎士団を辞めてうちで雇われいる。こいつと同じ雇われ仕事をする男がこの店にあと二人いる。外出するときはもれなく彼らが付いてくるから今度全員を紹介しよう。オーガストは誰にでも声をかけるし手が早いから気をつけろ」
「ええ……。サイアク……」

 わざとらしくモリオンの背に隠れると、オーガストも両手で胸を押さえてわざとらしく傷ついたフリをした。

「ああ……。最初からその紹介はねえだろ。俺は可愛い子がみんな平等に好きなだけだ。何なら君のような可愛い男の子相手でも勃つ自信があるぞ」

 ドン引きした。やはり第一印象通り軽薄な男のようだ。
 あれ? 雇われた門番が三人もいるんだったら、どうして昨日はモリオンが立っていたんだろう? 僕は素直にその疑問を口に出した。

「じゃあさ、昨日店の前にモリオンが立っていたのはなんで? モリオンも門番するの?」
「え? あっ!!」

 モリオンは今気づいたかのように叫ぶとオーガストの頸を肘で締め、拳で頭をぐっと押さえつけた。

「ジェイドのことがあってすっかり忘れてた! こいつが無断欠勤しやがったんだよ。昨日の門番はこいつのはずだったのに仕事に来ないから、仕方なく俺が店に立ったんだ。ええ? オーガスト? テメェが二日前の昼にうちのリコリスの護衛についてから昨日の夜まで一緒に連れ込み宿にいたって事を俺が知らないとでも!?」
「いててて! 悪りぃ。悪りぃ。だってさ、リコリスが一緒に逃げようとか言ってくるからさ、店から出てかないように慰めてたんだよ! 逆に俺に感謝してほしいね」
「だからって宿にしけこむとはどういった了見だ?」
「まあまあその辺で」

 言い合いが店の中まで聞こえたのか、受付のローズが店から出てきて二人の間に入った。顔に笑顔を貼り付けてはいるが、眉間に皺が寄っている。オーガストの顔が蒼白になった。美人は怒らせると怖いよな。

「オーガストとリコリスには私の方からよおく言い含めておきますから。モリオン、お客様をお待たせしてはいけないわ」

 そうだった。さっきから所在なさげに御者が馬を撫でながら立っていたんだった。その御者とバチッと目が合った。目元と口元の皺が目立つその人は僕を見て優しげに眼を細めて頭を下げた。一瞬、眼に光るものが見えたような気がしたけれど、きっと気のせいだろう。
 モリオンが服装の乱れを直してから御者に向き直った。

「お見苦しいところをお見せして大変申し訳ありません。今すぐに出かける用意をしてきますのでもうしばらくお待ちください。ローズ、お飲み物をお出しして」
「分かったわ」

 ローズが御者を店の中に案内する。後ろからオーガストもついていった。その間にモリオンが従業員用の入口のカーテンを開けて中に入っていく。

「ジェイド、とりあえず荷物を置いてから準備をしよう。お前の部屋に行くぞ」
「準備? ああ……」

 男と繋がる時は身体の中を綺麗にする準備が色々と必要だ。この時だけは準備が必要ない女が羨ましく思う。一連の準備は面倒だし変な気分になるからあまり好きじゃないけれど、ちゃんとしておかないと汚れるし病気になる可能性もあるから仕方ない。御者とオーガストに目礼をして、すたすたと歩いて行ってしまうモリオンを慌てて追いかけた。
 部屋に着いて荷物を置き、体内を洗浄するため手洗いに向かおうとしたらモリオンに止められた。

「なあに? モリオンが僕の身体の中を綺麗にしてくれるの?」
「ああ」
「は!?」

 冗談で聞いたのに! え、え。人に腸内洗浄とかされるのヤなんだけど!
 焦っているとモリオンに鼻で笑われた。

「何を勘違いしているのかは知らないが、お前の思っているようなことはしない。魔法か薬、どっちがいい?」

 モリオンがチェストの引き出しから青色のうずらの卵のような大きさと形のものを取り出した。

「これは男娼用に開発されたスライムで出来た腸内洗浄用のカプセルだ。体内に入れると腸の中のものを綺麗に食べてくれる。男同士の場合はだいたいみんなこれを使ってる。魔法なら俺が『浄化クリーン』を使えるからそれでもいいんだが、魔力を食うし俺がいない時に困るから出来れば薬を使え」
「体内に入れるって事は……。下から?」
「まあそうだな」

 さすが王都、便利なものがあるものだ。田舎にそんな物はなかったし、話も聞いたことがなかった。カプセルを手に取って親指と人差し指で持ってみる。羽のように軽くてツルツルしていた。これくらいの大きさなら濡らす必要もなく、無理なく身体に入るだろう。

「魔法の方が簡単なんだろうけど、モリオンが大変なんだったらこっちでいいよ」
「そうか。入れたら三十分くらいで溶けてなくなるからな。終わったら今日買った綺麗な服に着替えて受付へおいで。俺は受付で待っている」
「え、モリオンが入れてくれるんじゃないの?」

 にっこり笑ってそう言ったら、モリオンは大きくため息を吐いて部屋から出て行ってしまった。彼の人生の中で僕が彼に一番ため息を吐かせている回数が多いんじゃないかと思うと、ニヤニヤ笑いが止まらなかった。
 なぜか彼を困らせるのが楽しい。まだ出会って二日目だというのに彼から目が離せない。

 僕の中に幽かに湧き上がったこの感情を何と言うのか、十三歳の僕はまだ知らない。
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