“魔剣" リルムリート

さよなら本塁打

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序章3 新たなる恋? 川岸で、脱がされて……!

第4話 エロスの滝

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 隼人にとって会ってはいけない相手だが、会いたかったのは事実である。しかし、いざ会ってみると、なにを言えばいいのかわからず、一瞬、固まってしまった。だが、それでも勇気をふりしぼって、隼人は和美に訊いてみた。 


「ここに、なにしに来たんですか?」 


 EXPERが求める“探しもの"とはなんなのか?こんな田舎になにがあるのか?同じ超常能力者として、隼人は興味もあった。そして、本当に和美は“追っ手"ではないのか、確認もしてみたかったのである。 


「…………水浴び」 

「え?」 

「だって車中泊よぉ!あれ、お風呂はついてないんだもの」 


 和美が指さした方向に、白い軽のキャンピングカーが停まっていた。若葉マークがはってある。 


「“レディー"に、あんなもんの中で寝泊まりして、“調査"しろって言うのよ!信じらんない!!」 


 どうやら彼女は、隼人の質問の意味を間違って認識してしまったようである。それにまったく気づかず和美は、まくしたてた。ちなみに、そのキャンピングカーは、特定の“任務"にあたるEXPERに貸し出される公用のものである。 


「あれって、見た目よりずっと狭いのよぉ。寝返りうったら頭ぶつけちゃうし、室内のライトはなんだか暗いし、以前に乗ってたヤツのせいでなんかタバコ臭いし、アクセル踏んでもあんまスピード出ないし、日中は全然エアコンきかないし、経費削減でテレビはついてないし……」 


 よくしゃべる和美に圧倒されながらも、これではいけないと、隼人は間隙をぬってなんとか話しかけた。 


「あのう。“調査"って、お姉さんは警察官かなんかですか」 


 わざと、とぼけて聞いてみた。うまくいけば、ここから真相がつかめるかもしれないのだ。 


「お姉さん!お姉さんかぁ……うーん、うーんん……その呼ばれかたも捨てがたいんだけど、ちゃんと名前で呼んでほしいなぁ。和美って」 

「……………………和美」 

「“さん"くらいつけなさい」 

「和美さん」 

「よし、お利口!」 


 和美が隼人の頭をゴシゴシとなでた。意外と力強く。どうやら、かなう相手ではないようだ。


「ところで、わたしはねぇ……」


 滝というものは結構大きな音を立てるものだが、そんな中でも、なぜか隼人は、和美のハスキーな声を正確に聴き取ることができた。


「……ンまァ、警察官と似たようなものよ。わたしはバイトだけどね」 


 “プロ"の超常能力者であるEXPERたちの中には、本業が学生の者もいる。そういった者たちが正規に採用されるのは、卒業後ということになるのだが、長期休暇などを利用して“アルバイト"をする者がいる。組織側としては、実地研修を兼ねることができるので、むしろ積極的にそれを奨励しており、また、雇われる側にとっては、アルバイトクラスのEXPERに与えられる“任務"の難易度が低いわりには給料が良いので、都合好しということになる。意外と競争率は高い。 


 つまり、アルバイトにすぎない和美が、この首払村にて行っている“探しもの"とは、そこまでたいしたものではないか、“組織"にとって急を要するほどのものではない代物ということになる。これらの知識は、隼人も香代から聞いて知っていたが、奈美坂精神病院を脱走した11歳のいち少年を捕らえるということが、急を要するのか否か。隼人には判断しかねた。 


「えー、コホン」 


 和美が、わざとらしくせき払いをした。少ししゃべりすぎたと思ったのかもしれない。 


「そんなことより水浴びよ、水浴び!この川って冷たくて、やけに気持ちいいんだから!」 


 和美は急激に立ち上がると、突然にさっさと服を脱ぎ始めた。青いポロシャツの下は、純白のブラジャーだった。ただでさえでかい胸が、膨張色に覆われて余計に大きく見える。 


「やっぱ、夏の風物詩といえば水浴びよねぇ!昔の人は、いいことしか言わないわ」 


 昔の誰が言ったかわからない風物詩を楽しむため、和美はジーンズも脱ぐ。白のパンティが食い込む尻と、太ももの付け根あたりが、たまらなくエロティックだった。 


 隼人が目をそらす暇もないほどの速さでブラジャーのホックを外すと、窮屈な束縛から解放された巨大な乳房がぶるんとゆれる。乳首は少し大きめで、色は薄く綺麗だった。 男なら、誰しもむしゃぶりつきたくなる逸品がそこにある。


「さあ、いくぞぉー」 


 最後に残ったパンティに手をかけようとしたとき、和美はちらと横目で隼人を見た。その目は細い二重まぶたであり、彼女の容貌を特徴づけるものである。 


「入ろ、いっしょに」 

「え?」 


 一瞬、それもいいな。と思ってしまった自分のバカさ加減を隼人は呪った。そんな彼に、天罰がくだろうとしていた。 


「この暑さの中、“夏の風物詩"を楽しまなくてどうすんのよ。ほら、“貴女"も脱ぎなさい!」 

「い、いや。その……わっ!」 


 逃げようとする隼人を、パンティ一枚の和美が組み伏せた。倒れ込んだ隼人はそれでも逃れようとするが、和美の力は強く、とてもかなわない。EXPERは、格闘技等の戦闘訓練も受けている。


「や、やだァ……やめてよお……」 


 左の腕を隼人の首の下に差し込み、右手でジーンズのベルトを外そうとする和美に、少年は弱々しく抵抗した。こんなピンチのときでも、自分の体に触れる豊満な肉体の質感を、心地よいと思ってしまう自分が情けない。でかい胸が隼人の顔に押し付けられ、視界が遮断したまま、女の白い手が自分の下腹部をまさぐる感触に興奮すら覚えた。だが、それでも無意味な抵抗はした。


「ずいぶんと、ブカブカのジーパン履いてんのねぇ?最近の子供たちの流行りかしら」 


 隼人が履いているジーンズは、彼より大柄な啓子からの借り物であった。それを、ベルトできつく締めている。 


「“女同士"でしょ。観念なさい」 


 そう言いながら、和美は隼人のベルトを外し、器用にジーンズのボタンまで外した。 


「やめて……痛いよぉ……やめてぇ」 


 せつなげな哀願をものともせず、和美は隼人の股間のファスナーを下ろすと、強引にジーンズをずりさげた。その下に履いているパンツも啓子から借りているものである。それを抑え、最後に必死の抵抗をする隼人の手を、和美は無惨にもはらった。ついに、彼女の両手がパンツにかかる。


「いくわよぉ。いっせーのせっ!」


 和美にパンツを脱がされたとき、隼人の白い顔は恥ずかしさで真ッ赤に染まっていた。




「??」




 和美の目は一瞬、隼人の股間に釘付けになった。あるはずのない“モノ"がそこにあったからだ。







「………………………………………………きゃああああああああああああああっ!」






 今度は和美の絶叫が響いた。滝の音にかき消されなければ、人が駆けつけてくるところだった。





「ごめんなさい、ごめんなさい。あなたが男の子だったなんて、夢にも思ってなかったのよ……本当に本当に本当よ」


 あまりの恥ずかしさと怖さで泣き出してしまった隼人に、和美は謝罪した。とりあえず、今はふたりとも服を着ている。絶世の美少年が流す真珠のような涙が、輝きながら足下に落ちた。いくら超常能力者とはいえ、素顔は11歳の少年であった。それが、若い女に無理やり服を脱がされ、“恥ずかしいところ"を見られてしまったのだ。泣いてしまうのも無理はない。


「本当にほんとうにホントにごめんなさい。だから、機嫌をなおしてください。お願いよ」


 それでも泣きやまない隼人に、今度は土下座してあやまる。地面に額をこすりつけるようにして、和美は何度も何度も詫びた。


「わたしって、悪ノリしやすいタイプで……悪気はなかっ……いや、悪気はあったんだけど。あァ、わたしってば、なに言ってるのよ……あの……その……本当にごめんなさい」


 数分後。泣き止んだ隼人が、ようやく頷いた。それを見たとき、和美はずいぶんと、ホッとしたのである。





 
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