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第三章 怪奇、幽霊学習塾! 退魔剣客ふたたび
第3話 食肉
しおりを挟むフランクフルトの味は予想以上に良かった。微妙についた焦げ目が香ばしく、ケチャップとマスタードが、それに強気のアクセントを付け足している。肉自体も、スパイシーに香辛料が効いていた。
一口かじり終えた久美子の唇が肉汁に濡れ、艶を増す。その周囲についたケチャップとマスタードを赤い舌で舐め取ると、二口目の肉棒に口づけた。
熱いのだろうか?美しいシスターは、いやらしい食肉行為のさなか、苦しそうに目を閉じ、端正な顔を歪めた。その姿は好色な王に口淫を強要され、それでも、どうにかして気をひこうと、そそり立つ男根を喉の奥にまで咥え、懸命に“奉仕"する後宮の若い美女を思わせた。清楚で健気な彼女は、奥の中で他の女たちを出し抜き、のし上がろうとする野心を秘めている。そんなストーリーを思い描いてしまうではないか。
公園に乾いた音が響いた。カップルの男が頬をおさえている。女が平手で打ったのだ。
「な、なにすんだよ……?」
と、男。
「あんた、今、あの女を、やらしい目で見てたでしょ!」
と、女。
「あたしといっしょにいるってのに……最低よ!」
「み、見てねぇよ、カン違いすんなよ」
「ふぅん、じゃあ、“これ"は、どういうことかしら?」
女は男の股間をまさぐった。
「勃ってんじゃないのよ!」
「バ、バカ……さっきのキスで、こうなったんだよ」
女は立ち上がった。
「別れるわ」
「はぁ?」
「さよなら」
「お、おい、待てよ」
コートを翻し、早歩きで立ち去ろうとする女を男は追った。その様子を見て、久美子は思った。
(また、私のせいで、男が妄想に狂ったか……)
と……
自身が男どもから、いやらしい目で見られている、という自覚はある。そう思うことに罪はない。むしろ、美しいことが罪であった。
彼女が小学生のとき、東京の一流大学に通う従兄が久美子の実家を訪れた。頭脳だけでなく体格にも恵まれ、ハンサムだった。
“やぁ、君が久美子ちゃんか"
そう言って、頭を撫でてくれた彼の手の感触は今でも覚えている。スポーツマンでもあり、たくましい手だった。久美子は“兄さん"と呼んでいた。
“いっしょに風呂に入ろう"
と、誘われた。思春期を迎える前の少女は何も考えず従った。
“頭を洗ってあげるよ"
風呂場でそう言われたので素直に背を向けた。従兄はシャンプーを手に取り、幼い久美子の髪を洗いはじめた。
“なにかしら?"
彼女は異変に気づいた。自分のちいさな尻のあたりに大きなモノが押し付けられている。硬くて高熱を放っていた。それがなんなのか?当時の久美子は、まだ知らなかった……
“いっしょに寝ようか?"
従兄が言った。その日の夜のことだった。性に目覚める前の少女は疑問など持たなかった。
久美子のベッドの中で顔を寄せ合いながら、従兄は話をしてくれた。旅行で鹿児島を訪れた彼の滞在日数は四日ほどだと言う。
“短いのね、寂しいですわ"
幼い日の久美子が言った。言葉遣いが丁寧な少女だった。
“バイトがあるんだよ"
とは、従兄。互いの吐息がかかるほどに距離が近かった。
“また、来てくださるの?"
“来てほしい?"
久美子は、ちいさく頷いた。
“じゃあ、キスをしてくれたら、また来るよ"
従兄が言った。
“そんなことをしたら、私は、兄さん以外のところへ、お嫁にいけなくなりますわ"
“それは、唇にした場合さ。ここならいいんだよ"
そう言われ、久美子は、従兄の頬にキスをした。
“じゃあ、約束通り、来年も来るよ"
彼は笑った。そして続けた。
“今、キスをしたことは、おじさんやおばさんには内緒だよ"
翌日、早く従兄に会いたいがために、ランドセルを背負い、そして走り、久美子は急ぎ下校した。
自宅の玄関を開けると、そこには従兄の靴しかなかった。母は夕食の買い物に出ていた。
“驚かせてあげますわ"
悪戯心が芽生え、久美子は、こっそりと二階への階段を登った。
部屋の扉は少し開いていた。やはり、いるようだ。わっ、と大きな声で驚かせてやろう。きっと、びっくりするに違いない。そう思い、覗いた彼女は信じられない光景を見た。
従兄は、久美子の下着を被り、そして……自慰をしていたのだ。
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