“魔剣" リルムリート

さよなら本塁打

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第三章 怪奇、幽霊学習塾! 退魔剣客ふたたび

第4話 久美子の自慰

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 “兄さん、なにをしているの?" 


 それを見た久美子。だが、怖くて口に出せなかった。ただ、その場に固まってしまった。 


 “そんなところをいじるなんて、汚いですわ" 


 その、“そんなところ"が硬く、逞しくなっていた。男性器が大きくなることを、少女は初めて知った。それまでは父親のモノしか見たことがなかったのである。そして昨夜、風呂場で自分の尻に押し付けられた物の正体が、それだと知った。 


 “久美子、久美子……" 


 彼は小学生の従妹の名を呼びながら、懸命に擦っていた。 


 “なぜ、私の名を呼ぶの?" 


 久美子の美貌は、そのころ既に花開いていた。そんな彼女の下着を被りながら自慰にふける従兄。異常な行為は少女の美しさが、させたものだった。 










 翌年以降も、従兄は年に一、二度、長期休暇を利用し、久美子の実家を訪れるようになった。 


 “キスをしてくれたら、また来年もここに来るよ" 


 一緒に寝ながら、そう言うのが恒例になっていた。久美子は毎回従い、頬に口付けた。なぜ逆らわなかったのか?当時、幼く無力だった彼女は、年に数日、共に過ごす彼の“狂気"を怖れていたのかもしれない。親に言うこともなかった。 










 久美子が自宅マンションに帰り着いたのは、夜の十一時すぎだった。明日は非番なので少し気が楽である。灯りを付け、石油ストーブに火を付け、小さなソファーに腰掛け、そして頭に被ったヴェールを外す。長い髪に指を通しながら、テーブルに置いてあったリモコンでテレビをつけた。スポーツニュースのジングルが流れ出し、プロ野球のオープン戦の様子が画面に映る。 


 彼女が住んでいる部屋は、1DKほどのものである。生命の危機にさらされる退魔士の給料ならば、もっと広い物件を借りられるのだが、久美子は、ここを選んだ。特に誰かを呼ぶことはない。恋人はいなかった。常に整然と片付いているあたり、彼女の性格をうかがい知ることが出来る。 


 足下にある買い物袋の中身は、帰りがけにスーパーで買ってきたチキンカツ弁当だ。こんな遅い時間から料理をしようなどとは思わないので、晩飯は出来合いで済ませることにした。立ち上がった久美子は伸びをし、電子レンジのほうへ歩きだそうとした。 


 壁に姿見の鏡が立てかけてある。それに映る聖女の姿を見た彼女は立ち止まった。まだ、修道服を着たままである。 


(相変わらず、綺麗ね……) 


 自分の顔を確認し、久美子は思った。どこか硬質の美貌には、清楚さと色香が共存している。 


(私のいやらしい姿を想像して、勃起してしまったのね) 


 昼間、公園で出会ったカップルを思い出した。男は、フランクフルトを食べる久美子を見て欲情したのである。 


(私のせいで、別れたりしなければいいけど……) 


 憐れな男に同情してやった。自分の美しさは、人前に出るだけで“罪"を作る。 


(彼女の平手打ち、いい音がしたわね) 


 そして、それに見合う“罰"も…… 


 ストーブの炎が妖しく揺れた。美しい女主人の心のうちに同意するかの如く。久美子は鏡の前で服を脱ぎはじめた。暖まりはじめた空気に白い柔肌が晒される。 


 床に落ちた、清楚で厳格な黒い修道服。その下は豹柄のブラジャーとパンティだった。 


(フフッ……すごく、いやらしいわ……) 


 久美子は下着姿の鏡像に見惚れた。着痩せするくせに、胸はFカップとたわわなものである。形の良い太股との境界にある腰は見事にくびれ、絶妙の均整を持つ身体だ。 


(私……今夜も、素敵だわ) 


 仕事が終わり、疲れて帰ってきた彼女は、美しい自分の姿を鏡に晒して心身の充足をはかる。特に、いやらしい下着を着けた姿が、お気に入りだった。 


(さっきの男に、こんな姿を見せたら、どうなるのかしらね) 


 久美子は背を向け、尻を突き出した。鏡の中の“女豹"が、それに倣う。そこを覆う布きれの奥に、馬鹿な男どもを惑わせる“壺"がある。 


 目の前に、さきほどのカップルの男がいた。 


(どうしたいの?どうしてほしいの?) 


 訊いてみた。男は鼻息を荒くしながら、服を脱いだ。性器が天井を向いている。 


(フェラがいいのね?) 


 男は頷き、久美子の頭を抱えた。赤黒く腫れ上がった汚い一物を美しい唇に近づけた。 


 そのとき、男の姿が変わった。従兄の顔になっていた。 


(兄さん……) 


 久美子は、従兄の性器に熱い吐息がかかるほどの距離で、上目遣いに責めた。 


(私をこんな女にしたのは、兄さんですわ……) 


 従兄の自慰を目撃したことで久美子の性癖は、その方向性を決めた。いつの間にか、男どもにいやらしい目で見られることが大好きな女になっていた。どこに行っても、誰に会っても、自分を見る彼らの目は、いつも欲情にたぎっている。 


 “男たちは、私をオナペットにしているのだ"


 そう思うと、たまらなく興奮した。男どもの“熱視線"の海の中で輝き、その間を泳ぐ人魚のような存在であることに生きがいすら感じていた。 


 “見て……私、綺麗でしょ……"


 口に出して言ったりはしない。街を歩けば、たくさんの愚かな男どもの目を意識できる。答えは、そこにあった。刺さるようなそれが快感だった。


(どんないやらしいことを、私にしているの?)


 心の中で訊いてみる。すれ違った男たちは、頭の中で久美子の美しい身体を散々に蹂躙している。


(どんないやらしいことを、私にさせているの?)


 久美子の美しい唇と白い手で、いきり立つ自分の性器を愛撫させているに違いない。


(どんなフィニッシュかしら?)


 久美子は鏡に尻を向けたまま、四つん這いになった。


(こんな下品な体位なのね?)


 腰を動かす。それを抱える従兄が背後にいた。


(ああ……兄さんよ、兄さんのせいなのよ……)


 従兄に貫かれるシーンを想像した。豹柄のパンティが溶けそうなほどに、濃く熱い愛液が溢れてくる。仰向けになり、久美子は、その中に手を入れた。


 いまだ男根の味を知らない彼女の性器だが“未成熟"でもなかった。自慰が好きな女である。


(兄さんが教えてくれたのよ、これは気持ちが良いことだって)


 久美子に覆いかぶさる従兄は、すぐに入れようとした。


(“前戯"なしではダメよ……)


 だが、彼女は、それを制した。


(ここが好きなの……)


 言って久美子は、両腕をあげた。白い腋が晒される。従兄の幻影が舐めてくれた。


(あぁ……)


 喘ぐ久美子。元は黒々と腋毛が繁っていた。今は脱毛済みである。数ヶ月前、首払村くびはらいむらで“神"に辱められたとき、そこにも強い性感帯があることを知った。


(フフッ……恥ずかしいわ。だって、シャワーを浴びる前ですもの……)


 生えてこなくなった毛の代わりに、久美子の腋は雌の匂いを発するようになっていた。汗ばむと、そこは余計に薫り立つ。処女でありながら男に愛される身体になっていく。その変貌もまた、“神"の所業か?


 久美子は、濡れた花芯をいじりはじめた。


(兄さん……)


 そして、従兄の罪を責めた。


(これは、“仕返し"ですわ。兄さんは、私でいやらしいことをしていたんですもの。だったら、私も……)


 久美子は自慰にふけった。結局、彼女も、あのときの従兄と同じことをするようになったのである。







 
 
 
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