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さらにそれから30分ほどたった頃だろうか。
あのあとルイスがさらに紅茶のお代わりを持ってきて(これ以上飲むとトイレに行きたくなりそうだったが)、ハインリッヒとともに質問を交えながら話していたところに突然ドアがノックされた。
「失礼するぜー」
ドアを開けて入ってきたのは先程別れた騎士団長のレーマンだった。彼がその調査をする人物なのだろか。
「あの、レーマンさんが調査するんですか?」
「いや、違げぇ。調べんのはこいつだ」
と言ってさらに大きく扉を開いた。そこには私を調査するとおぼしき人物がいたが、その異様な姿に思わず体が固まった。
まず目がいくのはその顔全体を覆っている幾重にも重なったヴェールのようなものだろう。真っ白なヴェールはその奥に存在する表情を見せることを許さない。
そして同じくそのヴェールと同じ色をした、髪と宗教色を感じさせる服。
まるで人からあらゆる色という色を消しさったかのような外見に、年齢どころか性別さえも判断がつかない。
「ヨーゼフ・フォン・ヴァイスだ。見た通り神官をやってもらってる」
レーマンの紹介に合わせるように、彼(男性名なので恐らく男)は挨拶をするようにお辞儀をした。
そして固まったままだった体が彼の動作によって解けたように動きだした。
「あ、こんにちわ....」
「........」
気まずっ!!
挨拶を返したものの、さっきから一言もしゃべらないヴァイスにどう接したらいいのか分からない。
「やっと来ましたか。待ちくたびれましたよレーマン」
「悪かったって。つぅか、ふらふらしてたこいつが悪い。てかいつもこいつを探すのを俺一人に任せんなよ」
「仕方ないでしょう。貴方がヴァイスを見つけるのが一番早いのですから」
彼らの話を聞くぶんに、どうやら目の前の彼はかなり放浪癖の持ち主らしい。
「........」
そろそろ無言の状態に限界が近づいてきた。彼の雰囲気からして何か不機嫌だというわけでは無いようだが、それでも表情が読めないことにはこの空気に耐えられない。
「........」
「うん?まじで?」
「............」
「えぇ....まぁいいけどよ」
ん?どんな会話??
謎のコミュニケーション空間に思考が止まる。本来コミュニケーションとは意思伝達が可能な手段による、つまりは言語のやりとりに置いてのみ可能な行為だ。少なくとも片方が沈黙を保ったまま行われることはない。
....それとももしかしたらヴァイスがもの凄く小声なだけかもしれないし、レーマンがそれを聞き取れるくらいもの凄く耳がいいのかもしれない。
私の訝しげな目に気を払うこともなく、レーマンがつかつかとこちらに近寄ってきた。
「レーマンさんって耳いいんですか?」
「は?そりゃ他のやつらよりかはいいかもしんねぇけど」
何でそんなこと聞くんだ?みたいな顔をしている。いや、おかしいのはそっちだ。
そしてそのまま流れるように手を私の胸元に置くと、服の胸元をグイッと引っ張った。
はい........?
「よしっ、こんな感じか。そのまま動かないでくれ
」
「え、いや、あの」
「あ、動くなって。写せねぇだろ」
何を写そうとしているの!?
あまりにも平然と行われるので普通にも思えてしまう彼の行為に流されてしまいそうになるが、行為そのものはセクハラだ。立派な犯罪行為である。
「うっし、これで終わりだ」
何かを書き写していたらしい彼はどうやらその作業が終わったらしく、写していた紙をヴァイスに渡していた。
「終わったぞー」
「........」
「おう。後は任せたぜー」
目の前のやりとりにもそうだが、あまりにも平然とセクハラをしたレーマンに、じとりとした目を向ける。
「ん?どうした、リン。言いたいことがあんなら、言わなきゃ分かんねぇぞ」
「........いや、何でもないです」
「何でそんな、この世の理不尽を煮詰めたような顔してんだ?」
いや、もうつっこまないよ!!つっこまないからね!?
「さてと、もういいでしょう。レーマン、ヴァイス。二人はもう休んでよろしいですよ」
「........」
「おう、ありがとな。そんで鑑定が終わるのは明後日ぐらいになるらしいから、それまで待ってて欲しいってよ」
「そうですか。それならば明日のうちに、彼女の国内の案内などを行いましょうか。貴方は明日ここを経つ予定でしょう。私が引き受けます」
「あー、そうしてくれ。悪いな、任せっきりにしちまって」
「構いませんよ。貴方には貴方の仕事があるのですから、陛下のためにもそれを果たすのが責務でしょう」
「そうだな。どこに連れていくかはルートヴィッヒが決めんのか?」
「ええ、その予定です」
テンポよく進んでいく会話に、彼らが二人で仕事の話をするのが日常であることがわかる。ひどく若い気もするが、やはり彼らはこの国でかなりの階級に位置する存在なのだろう。
それから十分後、いくつかの仕事の調整をし終えたのかレーマンはヴァイスを連れて部屋を出ていった。
「さてと、まだもう少し話しを進めたいのですが、そろそろ日も暮れる頃ですし、今日はこの辺でお開きといたしましょうか」
「つ、疲れたー」
や、やっと終わったー。長かったー。
「まぁ、無理も無いでしょう。こちらに来てから一回も休息をとることなくいたのですから。お腹は空いてますか?夕食を用意させているので、良ければお取りになってください」
ハインリッヒの言葉にホッと息をつく。気づけば、すでに窓から見える景色は真っ暗だ。相当話し込んでいたらしい。
「あ、ありがとうございます....」
こっちの世界の食事かー、どんなのだろう。初の異世界料理。楽しみだ。
あのあとルイスがさらに紅茶のお代わりを持ってきて(これ以上飲むとトイレに行きたくなりそうだったが)、ハインリッヒとともに質問を交えながら話していたところに突然ドアがノックされた。
「失礼するぜー」
ドアを開けて入ってきたのは先程別れた騎士団長のレーマンだった。彼がその調査をする人物なのだろか。
「あの、レーマンさんが調査するんですか?」
「いや、違げぇ。調べんのはこいつだ」
と言ってさらに大きく扉を開いた。そこには私を調査するとおぼしき人物がいたが、その異様な姿に思わず体が固まった。
まず目がいくのはその顔全体を覆っている幾重にも重なったヴェールのようなものだろう。真っ白なヴェールはその奥に存在する表情を見せることを許さない。
そして同じくそのヴェールと同じ色をした、髪と宗教色を感じさせる服。
まるで人からあらゆる色という色を消しさったかのような外見に、年齢どころか性別さえも判断がつかない。
「ヨーゼフ・フォン・ヴァイスだ。見た通り神官をやってもらってる」
レーマンの紹介に合わせるように、彼(男性名なので恐らく男)は挨拶をするようにお辞儀をした。
そして固まったままだった体が彼の動作によって解けたように動きだした。
「あ、こんにちわ....」
「........」
気まずっ!!
挨拶を返したものの、さっきから一言もしゃべらないヴァイスにどう接したらいいのか分からない。
「やっと来ましたか。待ちくたびれましたよレーマン」
「悪かったって。つぅか、ふらふらしてたこいつが悪い。てかいつもこいつを探すのを俺一人に任せんなよ」
「仕方ないでしょう。貴方がヴァイスを見つけるのが一番早いのですから」
彼らの話を聞くぶんに、どうやら目の前の彼はかなり放浪癖の持ち主らしい。
「........」
そろそろ無言の状態に限界が近づいてきた。彼の雰囲気からして何か不機嫌だというわけでは無いようだが、それでも表情が読めないことにはこの空気に耐えられない。
「........」
「うん?まじで?」
「............」
「えぇ....まぁいいけどよ」
ん?どんな会話??
謎のコミュニケーション空間に思考が止まる。本来コミュニケーションとは意思伝達が可能な手段による、つまりは言語のやりとりに置いてのみ可能な行為だ。少なくとも片方が沈黙を保ったまま行われることはない。
....それとももしかしたらヴァイスがもの凄く小声なだけかもしれないし、レーマンがそれを聞き取れるくらいもの凄く耳がいいのかもしれない。
私の訝しげな目に気を払うこともなく、レーマンがつかつかとこちらに近寄ってきた。
「レーマンさんって耳いいんですか?」
「は?そりゃ他のやつらよりかはいいかもしんねぇけど」
何でそんなこと聞くんだ?みたいな顔をしている。いや、おかしいのはそっちだ。
そしてそのまま流れるように手を私の胸元に置くと、服の胸元をグイッと引っ張った。
はい........?
「よしっ、こんな感じか。そのまま動かないでくれ
」
「え、いや、あの」
「あ、動くなって。写せねぇだろ」
何を写そうとしているの!?
あまりにも平然と行われるので普通にも思えてしまう彼の行為に流されてしまいそうになるが、行為そのものはセクハラだ。立派な犯罪行為である。
「うっし、これで終わりだ」
何かを書き写していたらしい彼はどうやらその作業が終わったらしく、写していた紙をヴァイスに渡していた。
「終わったぞー」
「........」
「おう。後は任せたぜー」
目の前のやりとりにもそうだが、あまりにも平然とセクハラをしたレーマンに、じとりとした目を向ける。
「ん?どうした、リン。言いたいことがあんなら、言わなきゃ分かんねぇぞ」
「........いや、何でもないです」
「何でそんな、この世の理不尽を煮詰めたような顔してんだ?」
いや、もうつっこまないよ!!つっこまないからね!?
「さてと、もういいでしょう。レーマン、ヴァイス。二人はもう休んでよろしいですよ」
「........」
「おう、ありがとな。そんで鑑定が終わるのは明後日ぐらいになるらしいから、それまで待ってて欲しいってよ」
「そうですか。それならば明日のうちに、彼女の国内の案内などを行いましょうか。貴方は明日ここを経つ予定でしょう。私が引き受けます」
「あー、そうしてくれ。悪いな、任せっきりにしちまって」
「構いませんよ。貴方には貴方の仕事があるのですから、陛下のためにもそれを果たすのが責務でしょう」
「そうだな。どこに連れていくかはルートヴィッヒが決めんのか?」
「ええ、その予定です」
テンポよく進んでいく会話に、彼らが二人で仕事の話をするのが日常であることがわかる。ひどく若い気もするが、やはり彼らはこの国でかなりの階級に位置する存在なのだろう。
それから十分後、いくつかの仕事の調整をし終えたのかレーマンはヴァイスを連れて部屋を出ていった。
「さてと、まだもう少し話しを進めたいのですが、そろそろ日も暮れる頃ですし、今日はこの辺でお開きといたしましょうか」
「つ、疲れたー」
や、やっと終わったー。長かったー。
「まぁ、無理も無いでしょう。こちらに来てから一回も休息をとることなくいたのですから。お腹は空いてますか?夕食を用意させているので、良ければお取りになってください」
ハインリッヒの言葉にホッと息をつく。気づけば、すでに窓から見える景色は真っ暗だ。相当話し込んでいたらしい。
「あ、ありがとうございます....」
こっちの世界の食事かー、どんなのだろう。初の異世界料理。楽しみだ。
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