便座の魔王世界を流す。

餅助

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1ロール目 夏はよく水を飲んで腹を下すが、ばあちゃん曰く「セロリ食えば治る」と言われて食い続けた結果、食あたり起こした幼き日のあの夏の夜。

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 新宿から電車で30分。都会の喧騒が嘘のように消え去るこの場所。都会だかそうじゃない、なんとも中途半端な住宅街に俺の家はある。
車の往来がまばらに聞こえるが 、それより子供の遊び声や、おば様たちの井戸端会議の声の方が耳によく入る。
そんな静かな街だ。不満はない。あるとするならば、
「あっつ......」
7月の暮れ。猛暑日が続き、汗でシャツがベトベトだ。
雪国育ちの俺には、この気温と湿度は厳しい。
東京から出ても関東という日本の中心。アスファルトは地続きだということか。地熱がジリジリ、蜃気楼。肺に入る空気が温くて息苦しいったら無い。
だがそれでも俺は、額の汗を濡れタオルで必死に拭き取り、書類にペンを走らせる。
いい感じにまた集中出来そうだ。いいぞ、そのままそのまま。
だが、
窓から差し込む容赦のない光。
それが腕時計に反射。メガネのレンズで強化され、フラッシュをぶち込まれた。
「ンア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!クッソッタレェ!」
おれは鬱陶しくなって腕時計をリサイクルショップで値切った作業机に叩きつけた。
猛暑のいらいらが爆発したが、それもつかの間。
「もうすぐ昼だな.....」
目を擦りながら、一応万はした腕時計の安否を確かめた。時刻は11時半。そろそろ昼飯か。

PRRRRRRRR!!!

背伸びをひとつと同時、机の端の固定電話が鳴る。
「まぁ、この案件を聞いてからコンビニ走ろ」
2リッターペットボトルの水を仰ぎ、喉を濡らしてから受話器を取った。

「お電話ありがとうございます!アライドテルズです!」

 遅ればせながら、俺の名前は荒井戸 露彦あらいど つゆひこ。しがない仲介業者。俺の夢はこの1DKを根城にあるべき社会を作る会社を作ること。
今日も今日とて仕事の依頼や人材紹介に精を出し、世界に貢献する偉大なーー

GYRRRRRRRRRRRR......

「んんぐ!!詳細は後ほどおり返しお電話差し上げますので!!では!!」

腹下しデブである。
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