人間さんと暮らしてみましたが、ちっとも馴染めません。

白光猫(しろみつにゃん)

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幼馴染み(別視点)

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 王太子の執務室で、俺はここぞとばかりに惰眠をむさぼっていた。
 人払いはしてあるし、やかましい部下もいない。昼寝にはおあつらえ向きの環境だった。疲れた身体には実にありがたい。

 そこへ突如、白い閃光とともに、部屋の主が机から【生えて】きたのである。
 ……心臓が口から飛び出るかと思ったぞ。

「レオ。おまえは、そこで何をしている?」
「……それはこちらの台詞です」

 俺の名前はレオドナール=ケバルというが、幼馴染みのこの王子だけは、俺を昔の愛称のままに【レオ】と呼ぶ。
 騎士の誓いをたて、俺が王族に仕えるようになっても、それは変わらなかった。

「恐れながら殿下……、机から人間が生えてくれば、誰だって驚きます」
「前に話しただろう? この部屋に魔法陣を隠したと」
「てっきり床かと思っていました」
「うちの使用人は目敏くて苦労している。だがお前が見破れなかったのであれば、この細工はもうしばらく使えそうだな」

 見破るどころか、その上に突っ伏して爆睡してましたとも。
 なんてことだ。完全に油断していた。

「レオのそんな有り様は、滅多に見られないな。なかなかに面白い」

 いつもよりも遥かに高い目線から、殿下がとどめを刺してくれた。

 黄金に輝く髪に、誰もが見惚れる端正な容貌。
 怜悧な青い眼差しが、支配者の余裕を感じさせながら、じっと俺を見下ろしてきている。この角度から眺めているせいか、憎らしいことに、今日の王子は貫禄五割増しの大迫力だ。

「……机の上に載った殿下こそ、臣下には見せられないお姿ですよ」

 やられっぱなしも癪なので、抵抗を試みるも、

「椅子ごと床にひっくり返っているおまえに、言われたくはない。俺の椅子の座り心地は良かったか? おまえが気に入っていたようだと、あとでガレノに伝えておこう」
「……勘弁してください」

 白旗(シロハタ)である。
 この王子の舌鋒の鋭さは半端ないのだ。なにせ、あのキツネ目男の飼い主だからな。
 幼馴染みゆえの距離感が、普段は嬉しくもあり、くすぐったくもあるのだが、こういうときは、逆にその距離が仇となる。

「……殿下、この会話は不毛なのでやめましょう」
「そうだな。そんな場合ではない」

 話すことが苦手な俺だが、殿下が相手だとなぜか饒舌になってしまう。
 それは殿下も同様らしく、こうして無駄話を切り上げることも、もはや定番となっている。
 意見が一致した俺たちは、お互いの珍妙な位置関係を正して、改めて向き合った。

「いろいろと世話をかけたようだな。礼を言う」
「……」
「そんなおまえを見込んで、頼みたいことがある」
「……そのようですね」

 先程から、ずっとキラキラと視界をかすめている件ですよね?

 分かっていますよ。決して無視していたわけではないのです。
 ただ少し……、現実を受け止めるのに、時間が必要だったのです。

 殿下の腕の中では、生きた宝石が、不思議そうに眼を瞬かせている。


 ……頭痛がしてきた。
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