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砂の国
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「ここは深くて、昔人間も入ってこれなかったみたいでさ、石像が壊されてないんだよ。ちなみにこの石像が熱波の兄貴の初恋なんだぜ」
思いもよらない事を聞かされた。大柄なあやかしが束風を喰いいるように見ていたとは思ったけれど、まさかこんなことがあろうとは。
「うはぁ。…まぁ石像に恋する王様の昔話もあるしなぁ…あると言えばあることなのかぁ…」
他人の恋話を聞くのもなんとも照れ臭く、凩は頭を掻いた。
恋した石像によく似た姿が歩いていれば、目も奪われるだろう。いや、もう既に心を奪われているに違いない。
あの目を見た時にそうではないかと思ったけれど…。
「なぁ、それってどんな話なの?」
凩は思い出せる限りで、石像に恋した王様の話を砂塵に話した。石像に恋し、その石像を恋人のように扱い、妻のように接し、ついには神様の力で石像が本物の人間になる話を。
凩の話を聞きながら、石像を見つめる砂塵の横顔を見て、砂塵もまたこの石像に恋をしていたのではないか、と思ってしまった。
石像にあまりにもうっとり見入っていたからだ。
その目は、熱波が束風を見つめるのによく似ていた。
「おまえら、旅の途中って言ってただろ?急ぐの?もし急いでいないならさぁ、ここで少しゆっくりしていかないか?こんな洞窟じゃなくてちゃんとした綺麗な屋敷もあるし、酒もあるし。どう?」
「お酒があったら、束風は喜ぶと思うよ」
「そうか!」
砂塵はぱっと顔を輝かせた。
「でもこんな砂漠に旅なんて、おまえら相当変わってるよな?」
「え?…おれたちは常夏の国を目指していたんだが…ここは違うのか?」
「い、いや、違わないぞ。ここは年中熱いからな、常夏の国だぞ」
意味もなく手をばたつかせ焦ったように砂塵の目が泳いだ。
「青い空、白い雲、どこまでも広がる青い海に、白く輝く砂浜、色とりどりの極彩色の花々…常夏の国ってそんなんだと思ってたんだけどなぁ」
束風の刺す様な視線を思い出して、たわわな美女、と口に出すことはやめた。人生いや、あやかしの生においても言わぬ方が事が円満に進む事があるのだ。きっと。
「青空は美しいぞ!でも海は…砂海で、紅い砂だな。赤ではだめか?白い砂でないとだめか?赤い砂の方が白地は映えると思うぜ?花は屋敷にはいっぱい咲かせるから、きっと気にいると思うぞ」
砂塵は喰いぎみに言い募った。
砂塵はじりじりと凩ににじり寄り、凩の手首をぎゅっと握りしめた。
「他にも見せたい拷問部屋とか処刑部屋とかがあるんだけど、長旅で疲れてるだろ?屋敷でゆっくりしないか?」
砂塵は無邪気な笑顔を浮かべたままだ。星が浮かんでいそうな瞳に、ばっさりと椰子の葉の様に睫毛が長い。熱波に顔立ちが似ていることから、あやかしの成体となればさぞああいった感じの燃えるような熱気を纏った偉丈夫になるんだなと、思おうとして凩は手を握られたまま硬直していた。
何かさらりと、おかしな事を言われた。拷問部屋?処刑部屋?え!?
これは、聞き流すべきなのか。
拷問とか処刑といった事は外土では日常的な当たり前なことなのか。そんな物騒な所なのか。
「やだなぁ、凩。そんな引き攣った顔をしないでよ。侵略者から国を守るのが俺の役割だから、そこはもう滅多に使わない俺の仕事部屋みたいなもんなんだ」
凩の手首を握る砂塵の手は見る間に膨れ上がり、凩の小さな白い拳を上からすっかり包んでしまえる様な黄褐色の掌になった。太い指、大きな手の甲。縄目のついた様な筋肉質な腕。もはや背は見上げる様に高い。
「さ、砂塵?」
「そうそう、これが俺の本当の姿だよ」
別人と思える顔立ちの中で目だけが同じように子供の様な無邪気さを残していた。
「凩は侵略者でも盗人でもないんだから、そんな怯えた顔をしなくて大丈夫だよ。怖がりだなぁ」
凩の手を掴み、目の高さが合う様に覗き込まれ、砂塵は促してきた。さぁ、俺が本当の姿を見せたのだから、凩の本当の姿を見せてよ、凩の大人になった姿を、と。
思いもよらない事を聞かされた。大柄なあやかしが束風を喰いいるように見ていたとは思ったけれど、まさかこんなことがあろうとは。
「うはぁ。…まぁ石像に恋する王様の昔話もあるしなぁ…あると言えばあることなのかぁ…」
他人の恋話を聞くのもなんとも照れ臭く、凩は頭を掻いた。
恋した石像によく似た姿が歩いていれば、目も奪われるだろう。いや、もう既に心を奪われているに違いない。
あの目を見た時にそうではないかと思ったけれど…。
「なぁ、それってどんな話なの?」
凩は思い出せる限りで、石像に恋した王様の話を砂塵に話した。石像に恋し、その石像を恋人のように扱い、妻のように接し、ついには神様の力で石像が本物の人間になる話を。
凩の話を聞きながら、石像を見つめる砂塵の横顔を見て、砂塵もまたこの石像に恋をしていたのではないか、と思ってしまった。
石像にあまりにもうっとり見入っていたからだ。
その目は、熱波が束風を見つめるのによく似ていた。
「おまえら、旅の途中って言ってただろ?急ぐの?もし急いでいないならさぁ、ここで少しゆっくりしていかないか?こんな洞窟じゃなくてちゃんとした綺麗な屋敷もあるし、酒もあるし。どう?」
「お酒があったら、束風は喜ぶと思うよ」
「そうか!」
砂塵はぱっと顔を輝かせた。
「でもこんな砂漠に旅なんて、おまえら相当変わってるよな?」
「え?…おれたちは常夏の国を目指していたんだが…ここは違うのか?」
「い、いや、違わないぞ。ここは年中熱いからな、常夏の国だぞ」
意味もなく手をばたつかせ焦ったように砂塵の目が泳いだ。
「青い空、白い雲、どこまでも広がる青い海に、白く輝く砂浜、色とりどりの極彩色の花々…常夏の国ってそんなんだと思ってたんだけどなぁ」
束風の刺す様な視線を思い出して、たわわな美女、と口に出すことはやめた。人生いや、あやかしの生においても言わぬ方が事が円満に進む事があるのだ。きっと。
「青空は美しいぞ!でも海は…砂海で、紅い砂だな。赤ではだめか?白い砂でないとだめか?赤い砂の方が白地は映えると思うぜ?花は屋敷にはいっぱい咲かせるから、きっと気にいると思うぞ」
砂塵は喰いぎみに言い募った。
砂塵はじりじりと凩ににじり寄り、凩の手首をぎゅっと握りしめた。
「他にも見せたい拷問部屋とか処刑部屋とかがあるんだけど、長旅で疲れてるだろ?屋敷でゆっくりしないか?」
砂塵は無邪気な笑顔を浮かべたままだ。星が浮かんでいそうな瞳に、ばっさりと椰子の葉の様に睫毛が長い。熱波に顔立ちが似ていることから、あやかしの成体となればさぞああいった感じの燃えるような熱気を纏った偉丈夫になるんだなと、思おうとして凩は手を握られたまま硬直していた。
何かさらりと、おかしな事を言われた。拷問部屋?処刑部屋?え!?
これは、聞き流すべきなのか。
拷問とか処刑といった事は外土では日常的な当たり前なことなのか。そんな物騒な所なのか。
「やだなぁ、凩。そんな引き攣った顔をしないでよ。侵略者から国を守るのが俺の役割だから、そこはもう滅多に使わない俺の仕事部屋みたいなもんなんだ」
凩の手首を握る砂塵の手は見る間に膨れ上がり、凩の小さな白い拳を上からすっかり包んでしまえる様な黄褐色の掌になった。太い指、大きな手の甲。縄目のついた様な筋肉質な腕。もはや背は見上げる様に高い。
「さ、砂塵?」
「そうそう、これが俺の本当の姿だよ」
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「凩は侵略者でも盗人でもないんだから、そんな怯えた顔をしなくて大丈夫だよ。怖がりだなぁ」
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