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砂の国

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 冷気だけでなく着物も裂けて身体を小さく丸めて横向きに寝ていたこがらしの足が露わになった。

 砂塵は凩の手を取ると強く引いて仰向けにさせ、強引に膝頭を掴むと、足の間にすかさず身体を割り込ませ、凩が足を閉じれないように押さえつけた。流れるように襟の合わせ目に手をかけて両方にはだけさせ、白い首も細い鎖骨も舌先で転がしたくなるような小さな乳首も自分の下に曝け出させた。
 着物も帯も、身体を隠せずもう何の意味もないものになっていた。


 凩は、決してされるがままになっていたわけではないのだが、抗っても歴然たる力の差があるのだ。


「お前、どうしてこんなゴミの中に寝ているんだ」
 砂塵が切り裂いた白い冷気の布団の下で凩は銀杏や紅葉の落ち葉のふんわりしたとこに身体を横たえていた。それが凩に馴染みのある心地よいものだからだ。

「俺のものになれば羅紗でも絹でも黒貂せーぶるの毛皮でも何でも敷き詰めてやるのに」

「おれはこれでじゅうぶんだし、それにこれはごみじゃないよ」


 砂塵はぐしゃりと葉を掴み潰し床の下に払う。

 凩の寂しい心をいつも慰めてくれていた木の葉の彩りは、砂塵には何の意味も無いものだった。

 凩は、理解されぬ事が悲しかった。

「そんなことはどうでも良いんだ、なぁ、凩。教えてくれないか?なんでお前からそんなに束風の冷気が滴るみたいに溢れてるのか、なぁお前あいつの稚児なのか?」


 息がかかるほど顔を寄せられ、手首を掴まれて伸し掛かられ、太腿から足の付け根のやわらかい皮膚にねっとりと硬いものが押し当てられる。


「ねぇ、おれは」

 凩が答える前に噛み付くようにくちづけられた。同時に足の間の未熟な枇杷の実のような男のしるしを握られ、こねられ凩は唇を塞がれたま悶絶した。

「凩はかわいい皮かぶりだな」
 言葉で嬲られながら、砂塵の熱い掌が凩の陰茎の先、皮の部分をゆるゆるとしごく。
 凩は、声を飲み込むことも、膝を閉じる事もできずに、砂塵の手に乱された。

 あっ…あ… や…やっ…

 なんとか逃れて押し返そうとした手は、砂塵の肩を痛いほど掴む。
 ゆるゆる、やわやわとすられて登りつめ果てそうな矢先で砂塵の手は止まり、身体重みで凩を押し潰す。

「束風ともこういうことを、しているんだろう?…全身からやつの気が溢れるほど注いでもらっているんだろう?何故身体を大きくしてもらわないんだ。凩、俺としよう。お前の身体が育つほど、ここに注いでやる」
 指先が別の場所に滑り、砂塵は凩の耳朶を舐め回し、貝殻の奥を探るように舌先を忍ばせる。

 凩の身体は砂塵の下で、一度、二度弱々しく跳ねた。
 性技に疎い身体が、複数の攻めに耐えられるはずもなく、砂塵の意図せぬ形で凩はいってしまった。

 凩の眦から涙が溢れる。
「…てない…してない」

 していないしていないと凩がすすり泣きながら訴える。だが砂塵は信じることが出来ずにいた。
 
「おれは、死にかけてからずっと…一人では吸えなくて、束風が指を切って、おれに吸わせてくれてたんだ…だから、こういうのは、してない」

「俺がそんな言葉を信じると思うのか」


 凩は、信じて貰えぬ事が悲しかった。

 外地そとちのあやかしは貪婪どんらんで喰らうだけではなくて、享楽的に淫奔に弱いお前を貪ろうとするかもしれないと言われていた。

 色に溺れても良いと言われた。

 それ相応に大人であるのだから、長い間出会えていないのだし番ではない相手とも試してみれば良いと言われていた。

 ただ、歯車が嚙み合わぬように、高さの酷く違う竹馬に乗るように、小さい臼と大きすぎる杵のように合わないものは合わない、虚しいことだよと言われてきた。


 砂塵が落ち葉をゴミだと言った時から。

 それを掴み潰して床下に払い落とした時から、砂塵は俺の番ではないのだろうと凩は思い始めた。

 どんなに気が甘くても、砂塵ではない、と。

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