48 / 53
第48話 聖女マリアナ
しおりを挟む
「復活した始まりのダンジョンのダンジョンマスター。そして、我が主の熾天使のブランシュじゃ」
「熾天使のブランシュ……」
聖女マリアナが、まじまじとブランシュを見つめる。その眼差しは強く、少し嘘や疚しい気持ちがあれば見抜いてしまう。第6ダンジョンのように、熾天使達によって仕立て上げられた都合の良い聖女達とは違い、本当の資質と能力を持った正真正銘の聖女。
ザキーサに対抗するだけの力と迫力は、周りの空気を緊迫させ、呼吸することさえも忘れさせる。
「初めまして。熾天使代理のブランシュよ。ザキちゃんのお友達かしら?」
しかし、ブランシュは初めてザキーサに会った時と同じで、マリアナに対しても全く物怖じしていない。
「ふふっ、ザキちゃん呼ばわりするのね。面白い、気に入ったわ」
そして、マリアナは聖女らしからぬ大笑いを始めると緊迫感が和らぐ。それに対して、ザキーサの機嫌は急に悪くなる。
「何がおかしい、性悪の引きこもり聖女」
「腐っても古代竜よ。ちゃん付けして呼ぶとは、中々の良いセンスをしているわね。確かに、魔力の質はサージとは少し違う。でも全くの他人とは思えないわ」
そして笑いながらも、聖女マリアナは魔法を発動すしている。俺達の足元に現れた巨大な魔方陣は、転移魔法を行使するためのものだが、規模も大きく術式も複雑で見たことがない。
「これって、転移魔法か?」
「ふんっ、余が教えてやった術式じゃ。大したことないわ」
「あら、アレンジして手を加えたのは私よ。耄碌して忘れたかしら」
俺達のレベルを遥かに凌駕する魔法には、抵抗しても対処出来ないだろうし、ザキーサが受け入れているならば問題はない。されるがままに、俺達は転移魔法によって迷いの森の中へと連れてゆかれる。
景色が一瞬にして変わり、明るかった森とは打って変わって暗い森になる。見たこともない木々には薄っすらと人の顔が見え、枝葉は手足のように動き、転移した俺達の周りを取り囲む。
「心配しふぁくてふぃい。ふぉレント達ふぁ結界をふぁっているふぁけ」
迷いの森の中に引き籠もったはいいが、聖女マリアナは食に飢えていた。限られた物しかない迷いの森の中で、同じものを繰り返し食する禁欲を強いられる生活。
それでも、全く目に触れなければ我慢出来ていたが、突然森の中に漂い出した誘惑の香り。ブランシュ直伝のサンドイッチが、マリアナの理性を完全に破壊させ暴走させてしまった。
「マリアナさん、少し炙ると美味しくなるわよ」
口に詰め込んだサンドイッチが無くなると、マリアナはまじまじとブランシュを見つめる。
「さんは付けるな。マリアナで良い」
そして、魔法で軽くサンドイッチを炙ると、再びサンドイッチをがっつく。ザキーサとも急速に距離を縮めたブランシュは、聖女マリアナとも距離を詰めている。
マリアナは時折サンドイッチの具材の質問を投げ掛け、それに的確に答えるブランシュ。姉妹のようにも見え、ピクニックを楽しんでいるだけの時間が過ぎてゆく。
用意してあったサンドイッチは、全てザキーサとマリアナによって食べ尽くされ、呆気にとられて見ているだけの俺達と、作り手として自慢気なローゼ。
「さて、満足したなら本題じゃ」
「その前に一ついいかしら。ここには誰も入って来られないし、誰かに見られることもない。姿を隠す必要はないのだから、イチャイチャとくっつく必要はないわよ」
食欲が満たされたマリアナは、聖女らしい気品のある姿に変わり、好戦的だった姿は想像出来ない。だが、それが取り繕った姿であることは、今さら誤魔化せはしない。
転移した瞬間にバスケットごとサンドイッチを強奪し、サンドイッチにがっつく聖女には、今さら説得力も威厳の欠片もないが、ザキーサと同じで触れてはいけない禁忌。
「分かってるわ。私を迎えに来たのでしょ、早く行きましょう」
「えっ、何でそうなるんだ?」
ダンジョンに聖女がいれば、やれる事は多くなる。人々に天啓を与えることで、ダンジョンに都合よく誘導することも出来る。だが、それは話し合いの出来る聖女である必要がある。しかし、聖女マリアナは俺の想定を遥か上を行っている。
「ザキーサがダンジョンに居るなら、私にも居住権があるはずよ」
「熾天使のブランシュ……」
聖女マリアナが、まじまじとブランシュを見つめる。その眼差しは強く、少し嘘や疚しい気持ちがあれば見抜いてしまう。第6ダンジョンのように、熾天使達によって仕立て上げられた都合の良い聖女達とは違い、本当の資質と能力を持った正真正銘の聖女。
ザキーサに対抗するだけの力と迫力は、周りの空気を緊迫させ、呼吸することさえも忘れさせる。
「初めまして。熾天使代理のブランシュよ。ザキちゃんのお友達かしら?」
しかし、ブランシュは初めてザキーサに会った時と同じで、マリアナに対しても全く物怖じしていない。
「ふふっ、ザキちゃん呼ばわりするのね。面白い、気に入ったわ」
そして、マリアナは聖女らしからぬ大笑いを始めると緊迫感が和らぐ。それに対して、ザキーサの機嫌は急に悪くなる。
「何がおかしい、性悪の引きこもり聖女」
「腐っても古代竜よ。ちゃん付けして呼ぶとは、中々の良いセンスをしているわね。確かに、魔力の質はサージとは少し違う。でも全くの他人とは思えないわ」
そして笑いながらも、聖女マリアナは魔法を発動すしている。俺達の足元に現れた巨大な魔方陣は、転移魔法を行使するためのものだが、規模も大きく術式も複雑で見たことがない。
「これって、転移魔法か?」
「ふんっ、余が教えてやった術式じゃ。大したことないわ」
「あら、アレンジして手を加えたのは私よ。耄碌して忘れたかしら」
俺達のレベルを遥かに凌駕する魔法には、抵抗しても対処出来ないだろうし、ザキーサが受け入れているならば問題はない。されるがままに、俺達は転移魔法によって迷いの森の中へと連れてゆかれる。
景色が一瞬にして変わり、明るかった森とは打って変わって暗い森になる。見たこともない木々には薄っすらと人の顔が見え、枝葉は手足のように動き、転移した俺達の周りを取り囲む。
「心配しふぁくてふぃい。ふぉレント達ふぁ結界をふぁっているふぁけ」
迷いの森の中に引き籠もったはいいが、聖女マリアナは食に飢えていた。限られた物しかない迷いの森の中で、同じものを繰り返し食する禁欲を強いられる生活。
それでも、全く目に触れなければ我慢出来ていたが、突然森の中に漂い出した誘惑の香り。ブランシュ直伝のサンドイッチが、マリアナの理性を完全に破壊させ暴走させてしまった。
「マリアナさん、少し炙ると美味しくなるわよ」
口に詰め込んだサンドイッチが無くなると、マリアナはまじまじとブランシュを見つめる。
「さんは付けるな。マリアナで良い」
そして、魔法で軽くサンドイッチを炙ると、再びサンドイッチをがっつく。ザキーサとも急速に距離を縮めたブランシュは、聖女マリアナとも距離を詰めている。
マリアナは時折サンドイッチの具材の質問を投げ掛け、それに的確に答えるブランシュ。姉妹のようにも見え、ピクニックを楽しんでいるだけの時間が過ぎてゆく。
用意してあったサンドイッチは、全てザキーサとマリアナによって食べ尽くされ、呆気にとられて見ているだけの俺達と、作り手として自慢気なローゼ。
「さて、満足したなら本題じゃ」
「その前に一ついいかしら。ここには誰も入って来られないし、誰かに見られることもない。姿を隠す必要はないのだから、イチャイチャとくっつく必要はないわよ」
食欲が満たされたマリアナは、聖女らしい気品のある姿に変わり、好戦的だった姿は想像出来ない。だが、それが取り繕った姿であることは、今さら誤魔化せはしない。
転移した瞬間にバスケットごとサンドイッチを強奪し、サンドイッチにがっつく聖女には、今さら説得力も威厳の欠片もないが、ザキーサと同じで触れてはいけない禁忌。
「分かってるわ。私を迎えに来たのでしょ、早く行きましょう」
「えっ、何でそうなるんだ?」
ダンジョンに聖女がいれば、やれる事は多くなる。人々に天啓を与えることで、ダンジョンに都合よく誘導することも出来る。だが、それは話し合いの出来る聖女である必要がある。しかし、聖女マリアナは俺の想定を遥か上を行っている。
「ザキーサがダンジョンに居るなら、私にも居住権があるはずよ」
0
あなたにおすすめの小説
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~
Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。
それでも、組織の理不尽には勝てなかった。
——そして、使い潰されて死んだ。
目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。
強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、
因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。
武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。
だが、邪魔する上司も腐った組織もない。
今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。
石炭と化学による国力強化。
情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。
準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。
これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、
「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、
滅びの未来を書き換えようとする建国譚。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
勘当された少年と不思議な少女
レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。
理由は外れスキルを持ってるから…
眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。
そんな2人が出会って…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる