精霊のジレンマ

さんが

文字の大きさ
10 / 329
ヒケンの森のオニ族

10.初めての接触と違和感

しおりを挟む
追いかけるか、どうするか判断に悩んだ。
この先、一瞬の判断が致命的になるかもしれない。だが、まだ判断出来る知識も経験もない。

森に逃げ込むゴブリン達。
後ろでは、立ち尽くすオニ達。

「おい、まだ生きてるぞ!」

オニ達に声をかける。慌ててオニ達が集まってくる。

「ソーキ様、今すぐ手当てを」

鞄からビンを取り出して傷口にかけながら、肩口に刺さった矢を引き抜く。一瞬だけ血が溢れ出すが、徐々に傷口が塞がっていく。ソーキと呼ばれたオニは、白眼をむいている。たぶん失神しているのだろう。

俺は森に消えていくゴブリンを見送る。どこの方向に逃げたかくらいは確認した方が良いだろう。
まあ、クオンに任せておけば大丈夫だろうけどな。

「改めてご助力、感謝します。私は、ヒケンの森のオニ族ソーショウ。あなた様は?」

クオンが影に潜って出てこない。かなり警戒している。

“気をつけて”

とクオンが訴えかけてくる。

ライに貰った指輪を見せながら、最低限の事のみ答える。

「俺は迷い人のカショウ。精霊化した体を戻す為に旅をしている」

「それは珍しいですね。もし良ければ、是非私どもの村にお越し頂いて、お礼をさせて頂きたいのですが?」

「村は近いのか?」

「ここから、1日半くらいの所です」

「精霊を探しながら旅をしている。近くに行くことがあったら寄らせてもらおうと思うが?」

少しソーショウの表情がくもる。

「ソーキ様は、オニ族4部族の中でも族長にあたるお方になります。その恩人を何もせずに別れたとあっても、後で私が叱られます」

「ゴブリンが戻ってきたら、どうする?迷い人でアシスについては知らないが、駆け引きは好きじゃない」

「すいません。それでは村まで護衛をお願い出来ないでしょうか?村に戻れば、それなりの対価をお支払い出来ます」

「まずは、対価を示してからじゃないのか?もう1つ、もっと早く助けられたんじゃないのか?族長なんだろ?」

「族長と言っても我らの主ではありません。我らの主は、族長を束ねるソーギョク様。我らの任務はソーキ様の救出になります。詳しくは申せませんが、ソーキ様が目を覚ましてから判断されてはいかがでしょうか?」

信用出来るのか?都合よく利用されそうなな予感しかしない。
黙っていると、ソーショウが言葉を続ける。

「今日はここで野宿します。ソーキ様が目を覚ますまで一緒にいかがですか?この辺りの事でも、知りたい事があるのではないですか?それに戻ればソーギョク様なら精霊について知っていると思いますし、協力もしてくれるはずです。」

「分かった。取り敢えずソーキが目を覚ますまでは付き合う。」

そうと決まると、草むらから森の中に移動し夜営の準備をする。夜営の準備は、ソーショウと一緒に居たソーイとソーサの2人が行い、盾持ちのオニは離れた所で周囲の警戒をしている。

その間に、俺はゴブリンの持ち物を回収しに行く。ゴブリンは消えてしまうが、何故か武器や防具、持ち物は残される。

常にマジックソードを維持できるわけではないし、いざという時の備えは欲しい。
という淡い期待があったが、結局回収できたのは弓矢のみで、使えるかどうかは微妙な感じがする。

ちなみにクオンが、草むらの中に埋もれた小指の爪ほどの大きさを魔石を回収していた。

回収を終えて戻ると、夜営の準備も終わっている。蚊帳のようやテントを張って、中ではソーキが寝ている。

ゴブリンの弓矢を持っている事に気付いたソーショウが話しかけてくる。

「何か良い物はありましたか?」

「あまり無いな、知ってたのか?」

「良い物があれば、放ってはおきません。手入れされてる武器も見たことはないですね」

「ゴブリンの弓は誰が作っているんだ?ソーショウ達の弓とは、造りがちがうだろ?」

 「私達オニ族は、閉鎖的な環境で暮らしているので、そういう事情にはあまり詳しくなくて」

「それでよく情報を教えるって言えたもんだな!」

「カショウ様はよりは、詳しいという事です」

「ここには、他の種族も暮らしているのか?」

「ヒケンの森にはオニ族と物好きなドワーフが数人居る程度ですよ。信じてもらうにはオニ族について知ってもらう必要がありますね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

ガチャから始まる錬金ライフ

あに
ファンタジー
河地夜人は日雇い労働者だったが、スキルボールを手に入れた翌日にクビになってしまう。 手に入れたスキルボールは『ガチャ』そこから『鑑定』『錬金術』と手に入れて、今までダンジョンの宝箱しか出なかったポーションなどを冒険者御用達の『プライド』に売り、億万長者になっていく。 他にもS級冒険者と出会い、自らもS級に上り詰める。 どんどん仲間も増え、自らはダンジョンには行かず錬金術で飯を食う。 自身の本当のジョブが召喚士だったので、召喚した相棒のテンとまったり、時には冒険し成長していく。

異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音(旧・神木 空)
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

異世界勇者のトラック無双。トラック運転手はトラックを得て最強へと至る(トラックが)

愛飢男
ファンタジー
最強の攻撃、それ即ち超硬度超質量の物体が超高速で激突する衝撃力である。 ってことは……大型トラックだよね。 21歳大型免許取り立ての久里井戸玲央、彼が仕事を終えて寝て起きたらそこは異世界だった。 勇者として召喚されたがファンタジーな異世界でトラック運転手は伝わらなかったようでやんわりと追放されてしまう。 追放勇者を拾ったのは隣国の聖女、これから久里井戸くんはどうなってしまうのでしょうか?

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

処理中です...