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オオザの崖のゴブリン
47.ゴブリンキング戦②
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ムーアがアイテムルームから取り出した、御神酒をゴブリンキングに向かって投げる。
御神酒の入ったビンは、ゴブリンキングに届く前に地面に落ち、中の御神酒が溢れ出す。
『酔眼朦朧』
酒の臭いが更に強くなり、ゴブリンキングの周りに充満する。ムーアの魔力だけではなく、御神酒を投げ込み更に強化する。
『あなたが酔うがどうかは知らないけど、臭いは強く感じるはずよ。神々も愛するお酒の香りはどうかしら?誰がどこに居るか分かるかしら?』
ゴブリンキングが杖を掲げ、ウィンドトルネードを放つ。
その先には石柱があり、石柱を粉々に打ち砕く。
「ギョエエエエーーーッ」
と奇声を上げて、辺りを探るが何も分からない。
ムーアは足元に次々と御神酒を撒き、更に酒の臭いを強くする。香りの濃度を濃くしたり薄くしたり、何処に誰が居るかを掴ませない。
「ギョエエエエーーーッ」
またしても奇声を発し、杖を掲げ手当たり次第にウィンドカッターを放ってくる。
酔眼朦朧を操るムーアをマジックシールドで守りながら、話しかける。
「こちらの居場所は分からなくても、倒し方が分からないぞ」
『それなら大丈夫よ、あなたの攻撃なら通用するはず』
「どうして分かる?」
『さっき放ったバーレッジがあるでしょ。今までは全く躱すことの無かった攻撃を、唯一あなたのバーレッジだけは振り払ったわ。あなたの攻撃なら通用するはずよ!』
「バーレッジは簡単に振り払われたけどな、大丈夫なのか?」
『マジックソードがあるでしょ!魔石を直接狙えば大丈夫よ!』
「この乱れ打ちの嵐の中を、近付ければな」
『1度だけ、チャンスをつくるわ』
更に集中力を高め、魔力を込める。
『酔眼朦朧』
重ね掛けし、更に立ち込める酒の濃度を上げる。
「もう1度魔石を狙うわ!」
ルークとカンテがサンダーボルトを放つ。前回とは違う。サンダーボルトが当たった瞬間、ゴブリンキングの身体が一瞬で発火する。
「ギョエエエエーーーッ」
ゴブリンキングの叫び声が響き、ウィンドカッターの嵐が止まる。
『時間が無いわよ、長くは持たないわ』
俺は走り出すと同時に、マジックシールドの1枚をマジックソードに変化させる。
メーンのサンダービームが俺を追い越す。ゴブリンキングの胸の炎を吹き飛ばし、胸を貫き、魔石が露になる。
ゴブリンキングの胸の穴が塞がるまでに、届かなければチャンスは無くなる。全力で走るが、地面が砂地の為に上手く力が伝わらず、思ったスピードが出ない。
地面にマジックシールドを突き立て、踏み台にする。
全力疾走からの跳躍。一直線にゴブリンキングの魔石を狙う。
跳躍した瞬間、一瞬だけゴブリンキングの顔の炎が揺らめく。微かに出来た隙間は、俺を認識するに十分な隙間。
俺を撃ち落とすだけの魔法で十分。それで勝負が決まる!
ゴブリンキングの杖に魔力が集まる。
「届けーっ!」
俺の咆哮も虚しく跳躍は失速する。少し手前で地面に足が付く。
再度力を込めるが、すでにウィンドカッターは放たれている。
ゴブリンキングに一直線に飛び込む俺に対して、真っ直ぐに迎え打つウィンドカッター。
回避は出来ない。全力で進むしかないが、ダメだと覚悟した瞬間、身体が軽やかに動く。砂地の地面を無視して、羽が生えたかのように軽やかに身体が加速する。
ウィンドカッターが俺の居なくなった空間を虚しく通り過ぎる。
ゴブリンキングの魔石に向かって、マジックソードを突き出すと、パリンという軽い感触がして魔石が砕け散る。
俺の腕はマジックソードごとゴブリンキングの身体を突き抜け、ボロボロになったマントに当たって止まる。
直ぐにゴブリンキングの身体の消滅が始まる中で、キラキラと深紅の粉が俺に降りかかり、そして俺の身体に付くと消えて無くなる。
「ウオオオォォォーーーッ」
今度は後ろから咆哮がする。石柱の真ん中の現れていた影が、はっきりとした姿に変わる。
しかし、動きがおかしい。盾を持った左手、右脚の肉が溶けるように落ちていく。
右手に持った長剣を一振すると、閃光が走り石柱が真っ二つになる。身体のバランスが崩れている為に、まともに狙いを定める事が出来ない。
片膝をつき、持つことが出来なくなった盾が地面に落ちる。
「古の滅びた記憶は、必ずや返してもらう!」
そう言うと、踵を返し長剣を支えとして、暗闇に向かって走り出す。
俺たちは、追うことが出来ない。今はまだ近付いてはいけない!そんな予感がして、ただ後ろ姿を見送る。
御神酒の入ったビンは、ゴブリンキングに届く前に地面に落ち、中の御神酒が溢れ出す。
『酔眼朦朧』
酒の臭いが更に強くなり、ゴブリンキングの周りに充満する。ムーアの魔力だけではなく、御神酒を投げ込み更に強化する。
『あなたが酔うがどうかは知らないけど、臭いは強く感じるはずよ。神々も愛するお酒の香りはどうかしら?誰がどこに居るか分かるかしら?』
ゴブリンキングが杖を掲げ、ウィンドトルネードを放つ。
その先には石柱があり、石柱を粉々に打ち砕く。
「ギョエエエエーーーッ」
と奇声を上げて、辺りを探るが何も分からない。
ムーアは足元に次々と御神酒を撒き、更に酒の臭いを強くする。香りの濃度を濃くしたり薄くしたり、何処に誰が居るかを掴ませない。
「ギョエエエエーーーッ」
またしても奇声を発し、杖を掲げ手当たり次第にウィンドカッターを放ってくる。
酔眼朦朧を操るムーアをマジックシールドで守りながら、話しかける。
「こちらの居場所は分からなくても、倒し方が分からないぞ」
『それなら大丈夫よ、あなたの攻撃なら通用するはず』
「どうして分かる?」
『さっき放ったバーレッジがあるでしょ。今までは全く躱すことの無かった攻撃を、唯一あなたのバーレッジだけは振り払ったわ。あなたの攻撃なら通用するはずよ!』
「バーレッジは簡単に振り払われたけどな、大丈夫なのか?」
『マジックソードがあるでしょ!魔石を直接狙えば大丈夫よ!』
「この乱れ打ちの嵐の中を、近付ければな」
『1度だけ、チャンスをつくるわ』
更に集中力を高め、魔力を込める。
『酔眼朦朧』
重ね掛けし、更に立ち込める酒の濃度を上げる。
「もう1度魔石を狙うわ!」
ルークとカンテがサンダーボルトを放つ。前回とは違う。サンダーボルトが当たった瞬間、ゴブリンキングの身体が一瞬で発火する。
「ギョエエエエーーーッ」
ゴブリンキングの叫び声が響き、ウィンドカッターの嵐が止まる。
『時間が無いわよ、長くは持たないわ』
俺は走り出すと同時に、マジックシールドの1枚をマジックソードに変化させる。
メーンのサンダービームが俺を追い越す。ゴブリンキングの胸の炎を吹き飛ばし、胸を貫き、魔石が露になる。
ゴブリンキングの胸の穴が塞がるまでに、届かなければチャンスは無くなる。全力で走るが、地面が砂地の為に上手く力が伝わらず、思ったスピードが出ない。
地面にマジックシールドを突き立て、踏み台にする。
全力疾走からの跳躍。一直線にゴブリンキングの魔石を狙う。
跳躍した瞬間、一瞬だけゴブリンキングの顔の炎が揺らめく。微かに出来た隙間は、俺を認識するに十分な隙間。
俺を撃ち落とすだけの魔法で十分。それで勝負が決まる!
ゴブリンキングの杖に魔力が集まる。
「届けーっ!」
俺の咆哮も虚しく跳躍は失速する。少し手前で地面に足が付く。
再度力を込めるが、すでにウィンドカッターは放たれている。
ゴブリンキングに一直線に飛び込む俺に対して、真っ直ぐに迎え打つウィンドカッター。
回避は出来ない。全力で進むしかないが、ダメだと覚悟した瞬間、身体が軽やかに動く。砂地の地面を無視して、羽が生えたかのように軽やかに身体が加速する。
ウィンドカッターが俺の居なくなった空間を虚しく通り過ぎる。
ゴブリンキングの魔石に向かって、マジックソードを突き出すと、パリンという軽い感触がして魔石が砕け散る。
俺の腕はマジックソードごとゴブリンキングの身体を突き抜け、ボロボロになったマントに当たって止まる。
直ぐにゴブリンキングの身体の消滅が始まる中で、キラキラと深紅の粉が俺に降りかかり、そして俺の身体に付くと消えて無くなる。
「ウオオオォォォーーーッ」
今度は後ろから咆哮がする。石柱の真ん中の現れていた影が、はっきりとした姿に変わる。
しかし、動きがおかしい。盾を持った左手、右脚の肉が溶けるように落ちていく。
右手に持った長剣を一振すると、閃光が走り石柱が真っ二つになる。身体のバランスが崩れている為に、まともに狙いを定める事が出来ない。
片膝をつき、持つことが出来なくなった盾が地面に落ちる。
「古の滅びた記憶は、必ずや返してもらう!」
そう言うと、踵を返し長剣を支えとして、暗闇に向かって走り出す。
俺たちは、追うことが出来ない。今はまだ近付いてはいけない!そんな予感がして、ただ後ろ姿を見送る。
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