精霊のジレンマ

さんが

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フタガの石峰のハーピー

83.蠢く陰謀

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光を放ち続ける光の玉に、危険を感じるホーソン。

「ホーソン、これのどこが危険なんだ?」

「これが光ではなく火や水だったら、どうなりますか?際限なく放たれる、制御する事が出来ない炎や水。これが街の中に一斉に投げ込まれたら、どうなると思いますか?」

俺とムーアは顔を見合わせる。確かにその考えは、思い浮かばなかった。そして、ホーソンは更に続ける。

「どれだけの魔法が、この玉の中に入っているのか分かりません。大抵のマジックアイテムは、魔力を流し発動させた魔法を見れば、その性能は分かります。しかし、この玉はいつから光っているのですか?」

「知っているだけでも、2日以上は光っている。恐らくは、日ではないくらいの長い期間で光続けていると思う」

「それだけの魔法を放ち続ける事が出来ますか?」

「無理だな」

「だけど、これは誰かが出した魔法である事は間違いないんです!」

「・・・」

これ以上の会話は、俺達の秘密にも関係してくる内容で、言葉に詰まる。
流石はドワーフの鑑定で、しかも学者肌のドワーフ。

『もう契約は済んでいるし、ホーソンは信用して話しても大丈夫よ!』

「そうだったな」

ホーソンに、ヒケンの森のゴブリンから鉱山のコボルトまでの話をする。
謎の石柱に魔力を吸収される精霊達。吸収された魔力により、ゴブリンやコボルトがポップアップしていた事は間違いない事実。
そして魔力の吸収だけではない。ブロッサは意思とは関係なく、湖に毒を流させられていた。リッターも同じで、光の魔法を出していたのだろう。

「確かに、精霊達の魔法を取り込む方法なら可能かもしれませんね。光る玉以外にも、鉱山の中の物はないんですか?」

「クオン、出してくれ」

クオンに声を掛けると、影の中から色々な物が出てくる。石柱の欠片に、精霊達を縛っていた鎖、ゴブリンキングの冠にボロボロのマント、オルキャンの持っていた折れた剣、チェーンメイル、焼け焦げたマント。

「オルキャン」

そして、焼け焦げたマントを見た瞬間、ホーソンが身構えて大きな声を上げる。

「どうした、ホーソン。オルキャンを知っているのか?」

「忘れるわけがないでしょ、この悪趣味なマント。100年以上前になりますが、悪行・横暴の限りを尽くして失踪した先代領主」

マントは焼け焦げてはいるが、大きく刺繍されたオルキャンの顔は判別出来る。

「オルキャンは、タカオの街の領主だったのか」

「ええ、この街の嫌われ者ですよ。コイツに捕らえられて帰ってこなかった者は多くいます!どこで、このマントを手に入れたのですか?」

「北の廃鉱の再奥。この光の玉を作った首謀者の1人で、コボルトの魔石を額に埋め込まれていたよ」

「まだ生きていたんですか?」

「額の魔石を砕いたら、オルキャンの身体も消滅してしまった。すでに魔物と化したオルキャンが、生きていたといえるかは分からないがな」

「そうですか・・・。まだ何か隠されていますね。この街の闇は思ったより深そうです」

そう言ったきり、しばらくホーソンは黙ってしまう。長い年月をかけて、蓄積された思いがあり、まだ終わってはいない。

「この街のドワーフは信用出来るのか?」

「職人レベルでは信用出来る者は多いです。しかし、内壁の中にいる領主に近い者達は、皆オルキャンが居た頃と変わっていません。信用する事は難しいでしょう」

「ホーソンは信用出来るのか?」

苦笑いを浮かべてホーソンが答える。

「学者肌のドワーフは少ないので、マッツ様とは少し面識がある程度です。私は内壁の中に入った事もありませんし、ここら辺に住むドワーフで内壁の中に入った事のある者は、ごく僅かでしょうね」

『内壁の中の事を知らないの?それじゃあ、使えないわね!』

「ムーア、使えないって。それは少し厳しいんじゃないか?」

『だって、もっと繋がってれば簡単に解決出来るじゃない!』

苦笑いが、引きつった笑みに変わるホーソン。予想に反した会話に付いてこれない。

「何だか残念な事になってますけど、繋がってた方が良かったですか?」

笑顔で肯定するムーアに、俺は諦めろと首を横に振ってみせる。

「それで信用出来ないなら、これからどうする?」

「私達がタカオの街で騒ぐと、ドワーフにも狙われる危険性があります。イスイの街の領主を頼ってみてはいかがでしょうか?」

「この街の事は大丈夫なのか?」

「知った者に連絡します。ハーピー達に備えるにしても、結局は街の中です。一番早く解決するならば、イスイの街に行くべきです」
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