84 / 329
フタガの石峰のハーピー
84.イスイの街の蟲人
しおりを挟む
イスイの街は首都トーヤの手前にある街になる。いくつかの街道がイスイの街で合流する為、各地から様々な種族や物資がイスイの街に集まる。
イスイの街自体は、ハーピーの棲みかからは離れている。一番近いのはタカオの街である事は変わらないが、イスイの街に繋がる街道がハーピーの行動範囲に入ってしまう。
険しい山や地形により、限られた狭い場所を縫うように街道が作られている。
そしてこの街道を通る隊商や旅人は、度々ハーピーに襲われる。この街道を迂回しようすると移動には倍以上の日数がかかり、商売するのには難しい。
そしてイスイの街も、別の街へと迂回されてしまうと街としての強みを失ってしまう。
隊商や旅人の警護する役目をイスイの街が担っているが、ハーピーに襲われる脅威だけでなく、街の立場も関係してくる。
「それだけで、イスイの領主が信用出来ると言えるのか?」
「イスイの領主は蟲人族です」
『それなら、信用出来るわね』
ムーアは納得したようだが、俺はピンと来ない。
「それは、どういう事なんだ?」
「アシスでハーピーを一番脅威に感じるのは蟲人族です」
『虫はハーピーの好物なのよ。ドワーフ族と蟲人族が並んでいたら、狙われるのは間違いなく蟲人族よ。ハーピーの行動範囲が広がれば、狙われるのは1番近いタカオの街かしら?それとも好物のあるイスイの街かしら?』
「そんな種族が領主をしていて大丈夫なのか?」
「空を飛べる魔物に対しては空を飛べる種族が対応する。これは種族間合議で取り決めされた事なので、絶対の決定事項です」
俺の納得していない顔を見て、ムーアが捕捉してくる。
『アシスでも空を飛べる種族は少ないのよ。蟲人族はその少ない種族の1つ。それにハーピーの好物が虫であって、蟲人族の天敵というわけではないわ。そして狙われた隊商や旅人から、蟲人族に目を逸らさせる効果もある』
「わざとハーピーを誘ってるのか?」
『ドワーフ族よりは、蟲人族の方がハーピー向きの種族という事よ』
「分かったよ、それならイスイの街を目指そう。だけどホーソン、この店は大丈夫なのか?」
「もうボロボロの店ですから、続けるにしても大変です。どうするかも含めて、後は知り合いに任せます。持っていきたい道具はありますが、まだ影の中には入るんですか?」
そう言いながら、もう店の中の荷物を整理し始めている。
「寝ないで済むのは便利ですね。時間があれば、ゴブリンキングの王冠と杖をみせて欲しいのですが?」
そして楽しそうでもある・・・。
そして夜が明け、改めて街の被害を目の当たりにする。ハーピーに襲われた西の区画は、どの店も被害が出ている。しかし、明らかに被害の程度が違う。
ホーソンの店のように屋根が落ち壁が崩れている店もあれば、少しキズが付いた程度の店もある。
少し呆然した表情で、大通りの中央で立ち尽くすホーソン。
「ホーソン、大丈夫か?」
「あっ、はい、大丈夫です。これは余りにも酷すぎます。あからさま過ぎです」
俺や精霊には分からず、ホーソンにしか分からない違い。
「何があったんだ?」
「領主様と繋がりのある店は、比較的に損害が軽微なんです。もちろん損害の酷い店もありますが・・・」
「ホーソン、お前も無事だったのか!」
そこに知り合いらしきドワーフが走ってくる。
「領主様が保護してくれる御達しがでたぞ。お前も一緒に来い!」
「セス、私はカショウ様に付いて、この街を出る事にしたんだ。半壊した店だけど、セスに預けたいんだが大丈夫かな?」
「やっと決める事が出来たのか。それなら何も言わんし、くれる物は何でも貰ってやる。俺様に任せとけ!」
「店も残ってる物も、好きに使ってくれ構いません」
「それで、いつ街を出るんだ?」
「すぐに街を出ます。戻るかどうかは分かりません」
そして右手を差し出して、今は無くなっている店の扉の鍵を差し出す。
「セス、気を付けて下さい」
「おう、任せとけ!店は俺がでかくしといてやる。そしたら店番で使ってやってもイイぞ」
そう言って鍵を受け取ると、セスは内壁方向には向かわず、裏通りへと入っていく。恐らくはホーソンの店へと向かったのだろう。
「カショウ様、行きましょう!」
「あれだけで大丈夫だったのか?」
「はい、私の言いたいことは伝わりました。それより、先に進みましょう。今は少しの時間でも貴重です!」
イスイの街自体は、ハーピーの棲みかからは離れている。一番近いのはタカオの街である事は変わらないが、イスイの街に繋がる街道がハーピーの行動範囲に入ってしまう。
険しい山や地形により、限られた狭い場所を縫うように街道が作られている。
そしてこの街道を通る隊商や旅人は、度々ハーピーに襲われる。この街道を迂回しようすると移動には倍以上の日数がかかり、商売するのには難しい。
そしてイスイの街も、別の街へと迂回されてしまうと街としての強みを失ってしまう。
隊商や旅人の警護する役目をイスイの街が担っているが、ハーピーに襲われる脅威だけでなく、街の立場も関係してくる。
「それだけで、イスイの領主が信用出来ると言えるのか?」
「イスイの領主は蟲人族です」
『それなら、信用出来るわね』
ムーアは納得したようだが、俺はピンと来ない。
「それは、どういう事なんだ?」
「アシスでハーピーを一番脅威に感じるのは蟲人族です」
『虫はハーピーの好物なのよ。ドワーフ族と蟲人族が並んでいたら、狙われるのは間違いなく蟲人族よ。ハーピーの行動範囲が広がれば、狙われるのは1番近いタカオの街かしら?それとも好物のあるイスイの街かしら?』
「そんな種族が領主をしていて大丈夫なのか?」
「空を飛べる魔物に対しては空を飛べる種族が対応する。これは種族間合議で取り決めされた事なので、絶対の決定事項です」
俺の納得していない顔を見て、ムーアが捕捉してくる。
『アシスでも空を飛べる種族は少ないのよ。蟲人族はその少ない種族の1つ。それにハーピーの好物が虫であって、蟲人族の天敵というわけではないわ。そして狙われた隊商や旅人から、蟲人族に目を逸らさせる効果もある』
「わざとハーピーを誘ってるのか?」
『ドワーフ族よりは、蟲人族の方がハーピー向きの種族という事よ』
「分かったよ、それならイスイの街を目指そう。だけどホーソン、この店は大丈夫なのか?」
「もうボロボロの店ですから、続けるにしても大変です。どうするかも含めて、後は知り合いに任せます。持っていきたい道具はありますが、まだ影の中には入るんですか?」
そう言いながら、もう店の中の荷物を整理し始めている。
「寝ないで済むのは便利ですね。時間があれば、ゴブリンキングの王冠と杖をみせて欲しいのですが?」
そして楽しそうでもある・・・。
そして夜が明け、改めて街の被害を目の当たりにする。ハーピーに襲われた西の区画は、どの店も被害が出ている。しかし、明らかに被害の程度が違う。
ホーソンの店のように屋根が落ち壁が崩れている店もあれば、少しキズが付いた程度の店もある。
少し呆然した表情で、大通りの中央で立ち尽くすホーソン。
「ホーソン、大丈夫か?」
「あっ、はい、大丈夫です。これは余りにも酷すぎます。あからさま過ぎです」
俺や精霊には分からず、ホーソンにしか分からない違い。
「何があったんだ?」
「領主様と繋がりのある店は、比較的に損害が軽微なんです。もちろん損害の酷い店もありますが・・・」
「ホーソン、お前も無事だったのか!」
そこに知り合いらしきドワーフが走ってくる。
「領主様が保護してくれる御達しがでたぞ。お前も一緒に来い!」
「セス、私はカショウ様に付いて、この街を出る事にしたんだ。半壊した店だけど、セスに預けたいんだが大丈夫かな?」
「やっと決める事が出来たのか。それなら何も言わんし、くれる物は何でも貰ってやる。俺様に任せとけ!」
「店も残ってる物も、好きに使ってくれ構いません」
「それで、いつ街を出るんだ?」
「すぐに街を出ます。戻るかどうかは分かりません」
そして右手を差し出して、今は無くなっている店の扉の鍵を差し出す。
「セス、気を付けて下さい」
「おう、任せとけ!店は俺がでかくしといてやる。そしたら店番で使ってやってもイイぞ」
そう言って鍵を受け取ると、セスは内壁方向には向かわず、裏通りへと入っていく。恐らくはホーソンの店へと向かったのだろう。
「カショウ様、行きましょう!」
「あれだけで大丈夫だったのか?」
「はい、私の言いたいことは伝わりました。それより、先に進みましょう。今は少しの時間でも貴重です!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界勇者のトラック無双。トラック運転手はトラックを得て最強へと至る(トラックが)
愛飢男
ファンタジー
最強の攻撃、それ即ち超硬度超質量の物体が超高速で激突する衝撃力である。
ってことは……大型トラックだよね。
21歳大型免許取り立ての久里井戸玲央、彼が仕事を終えて寝て起きたらそこは異世界だった。
勇者として召喚されたがファンタジーな異世界でトラック運転手は伝わらなかったようでやんわりと追放されてしまう。
追放勇者を拾ったのは隣国の聖女、これから久里井戸くんはどうなってしまうのでしょうか?
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様にて、先行公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
現世に侵略してきた異世界人を撃退して、世界を救ったら、世界と異世界から命を狙われるようになりました。
佐久間 譲司
ファンタジー
突如として人類世界に侵略を始めた異世界人達。圧倒的な戦闘能力を誇り、人類を圧倒していく。
人類の命運が尽きようとしていた時、異世界側は、ある一つの提案を行う。それは、お互いの世界から代表五名を選出しての、決闘だった。彼らには、鉄の掟があり、雌雄を決するものは、決闘で決めるのだという。もしも、人類側が勝てば、降伏すると約束を行った。
すでに追い詰められていた人類は、否応がなしに決闘を受け入れた。そして、決闘が始まり、人類は一方的に虐殺されていった。
『瀉血』の能力を持つ篠崎直斗は、変装を行い、その決闘場に乱入する。『瀉血』の力を使い、それまでとは逆に、異世界側を圧倒し、勝利をする。
勝利後、直斗は、正体が発覚することなく、その場を離れることに成功した。
異世界側は、公約通り、人類の軍門に下った。
やがて、人類を勝利に導いた直斗は、人類側、異世界側両方からその身を狙われるようになる。人類側からは、異世界の脅威に対する対抗策として、異世界側からは、復讐と力の秘密のために。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる