異世界へはロイヤルカーペットにのって

志麻友紀

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【19】あらためて、王宮。

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『それでね主、アタシったら恥ずかしいことに、酔っぱらって、朝目覚めたら、あのボウヤの首を枕にして寝ていたのよ!』

 ダラハの町を飛び立って、銀竜アズラエルの背の上、リョウは彼? いや、彼女なのか? ともかく、アズラエル姐さんの、相変わらずの弾丸トークを聞いていた。
 アズラエルに乗って王宮に帰ることに、シャルムダーンは不満げだった。彼は当然イスラフェルと相乗りで帰るつもりだったらしいが。

「僕には僕の竜が“神様”より与えられましたから」
『そうよ、アタシの主がアタシの背に乗らないで、その破廉恥ボウヤの背にまたがるなんてあり得ないわ!』

 アズラエルの声も重なって、こうして空へと舞い上がったのだが。
 そのとたん。

『ねぇ、ねぇ、主、訊いてよ~』

 と、始まったわけだ。

『本当にあの若いボウヤは頑固なのよ。アタシのことを愛してるといいながら、アタシのことをどうしても“妻”だって、上に乗るのは自分だって言い張るのよ!』

 ボウヤとはイスラフェルのことだ。アズラエルは五百歳、イスラフェルは生まれて百歳のまだまだお尻に卵の殻がついている“ボウヤ”だとアズラエル姐さんは言い張るわけだ。
 そして、人間が宴のあいだじゅう、竜達にも羊や鶏。そして最上位のイスラフェルとアズラエルには、酒樽にはいったワインもふるまわれたのだという。

『お肉は美味しかったし、ワインも極上だったわよ。アタシは頑固なボウヤとの言い争いにも疲れて、酒樽に顔をツッコんでごくごくワインを呑んだわけ。それで眠くなっちゃって』

 このオネェドラコン、その酒で一度失敗して闇堕ちしたのを忘れたのか? と思ったら。

『あ、人間達がいくら感謝で捧げてくれた酒樽とはいえ、なにがあるかわからないって、あのボウヤが先に毒味して、なにも入ってないって確認してくれたのよ。ああいうところは紳士だし、いいいおとこなのにさ。なんで、アタシが上になるのは嫌だっていうのかしら、ホント頑固』

 ため息をつくアズラエル姐さんに、リョウはぼつりとつぶやく。

「男らしいから、下になるののが嫌なんだと思うけど?」
『なんでぇ? アタシを愛しているなら、出来るはずでしょ!』
「君だって、イスラフェルのこと好きなら、年上として、そこは譲ってやってもいいんじゃないか?」
『年上だからこそ、譲れない矜持プライドってものがあるのよ!』

 そんな一人と一竜の様子をぴったり隣で飛行しながら、こちらをガン見しているシャルムダーンに、イスラフェル。たぶん自分達がどんな会話してるか、耳をそばだてているのだろう。

『どうして、こううまくいかないのかしら。愛って難しいわねぇ』

 アズラエルのつぶやきに、リョウは「全くだ」と返事した。



   ◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇



 この世界に召喚されて、一番最初にはいった王都ムシャラ。
 半日も滞在しておらず、ダラハの町に旅立った。アズラエルの背から眺めたとき、懐かしさはなかったが、やはり美しい街だと思う。
 白い砂岩で作られた建物が並ぶ、整えられた大通り。所々に街路樹の緑が揺れる。
 大小の広場の中央には必ず、静かに水が噴き上げる泉水がある。砂漠のただ中にあって、その豊かな水こそが、この豊かなオアシスの町の象徴の一つ。
 そして、もう一つは。街の中央にあるひときわ大きな王宮。
 大きな特徴ある滴のような形の膨らんだ中央の屋根にさらに小さめの屋根が四つ回りを取り囲んでいる。その屋根の緑のタイルも美しい。
 中央の大きな屋根の下。列柱が並ぶ最上階の大きなテラスへと、金銀の竜は降り立った。飛竜達もそれに続く。
 リョウがこの世界に来たときは、飛竜と竜騎兵達が出迎えた。
 今回はその竜騎兵と共に帰還し、出迎えには白い髭のイムホテプが当然いた。が、その横にターバン飾りに大きな宝石、豪奢な衣装をまとった年かさの男達。それからきらびやかなアラビアンナイトのお姫様のようなドレスをまとった美女がいた。
 雲のように高く結い上げた黒髪にも宝石が輝く。ヴェールを頭から被っているが、彼女の黒真珠のような瞳、赤い紅を塗られた唇をばっちりと見せていた。
 リョウが被っているような、内側から外は見えるが、外からヴェールの内側が見えるものとは違う。
 そう、リョウは朝の仕度からヴェールを被っていた。ダラハの街の人々の見送りにもヴェールをまとったまま、手を振り、シャルムダーンの手をとられて、アズラエルの背へと乗った。
 そして、王宮へと帰還して、シャルムダーンが当然のように、自分に手を伸ばすのを、その手を取ってアズラエルの高い背から、抱きあげられるようにして降りる。
 別に自分一人でも降りられるんだけどな~と思いつつ。
 そのとき、突き刺さるような視線を感じて、そちらを見れば、互いにヴェール越しの視線が合った。リョウの顔が見えないヴェールと違い、透け透けの自分の美貌を見せびらかすためのような逆? ヴェール越し。
 黒真珠の瞳の美女が、明らかに笑ってない敵意ある視線でこちらを見ていたのだ。
 怖っ……と直感的に思った。




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