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【2】蒼のプリンス その2
しおりを挟むメガネをかけていても、村の村長のお下がりのそれは、ちょっと度数があわなくて遠くがぼやけて見えないのだ。
それからプリンスと生徒会長は共通ではない。彼はこの学園の生徒を束ねる生徒会長で、さらにプリンスというセンチネルとしての高位の称号を持っている。
プリンスとは学園長の後継者を意味する。彼こそが将来のこの国、ブリューゲル学園の王様なのだ。
そう、このブリューゲル学園は国でもある。すべてのセンチネルとガイドの自主と独立と権利を守る。
キング……学園長は、運命のボンドである、副学園長……クイーンとともにこの学園の頂点に立つ。
そのクイーンの後継者はプリンセスと呼ばれるが、その座は今、空位だ。
プリンスであるウォーダンの力が強すぎて、それを制御出来る専任のガイドが見つからないからだ。今でも彼の制御は優秀なガイドの生徒二人がかりだという話だった。
「ま、僕には関係ないけどね」
チィオを抱えたままフェリックスはつぶやく。
そんな雲の上のことより、今日、割り振られるセンチネルとうまくやれることのほうが、大事だった。
◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
「え? ペアを組んでくれる人がいない?」
「うん、ロルフ君が急病で欠席になってね」
本日の大演習担当のセンチネルの講師が申し訳なさそうにいう。今日はハートリー先生とメディ先生ではない。彼らは少し離れた場所でウォーダンに話しかけていた。彼らの担当は今日はあちらだ。
ロルフはこのあいだの演習で、最下位の得点だったセンチネルだ。彼が休んだのでセンチネルの数が一人足らずに、ガイドのフェリックスはあぶれる形になった。
誰と誰がペアを組むかは、普段なら講師が決めることだけど、大演習は“実戦”であるから、センチネルにはどうしてもこのガイドとは組みたくないという、拒否権が一度きり許されている。
フェリックスはクラスメイト全員のセンチネルに拒否されたのだ。それでも先の実習最下位のロルフは、残ったフェリックスと組むしかなかったのだが。
彼が休みならば仕方ない。あきらかに落ち込むフェリックスに本日の担当のガイド講師が「今回の場合、あなたには規定の実績がつくから」といってくれる。
大演習に参加出来ないまま、実績をもらったって、嬉しくもなんともないけれど。
────今度こそペアを組んだセンチネルとうまくやって、ガイドとして『よかった』っていってもらいたかったのに……。
「参加もしないで実績をもらえるなんて、よかったじゃない。落ちこぼれさん」
そこに黒猫を肩に乗せたネラが嫌みったらしく、声をかける。さらにその横にスコルが立ち、胸をはってやけに威張るみたいに言った。「今日の俺のガイドはネラだ」と。
大演習では普段の演習において成績優秀な者には、ガイドを指名する権利が与えられている。その性格はともかくスコルの得点はクラスで一番だし、ネラもガイドとしては優秀だ。
「お前は大人しくそこで見学してろ。このあいだの演習みたいにセンチネルの妨害をする、ガイドなんていらないからな」
スコルの言葉に続いて。
「そうそう、今日は足をひっぱる奴がいないから安心だよな」
「うんうん、このあいだ危うく実績が無くなるって青くなったし」
「正直、不参加になってくれてホッとしてるよ」
……なんて、クラスメイトの聞こえよがしの声に、フェリックスはうつむくしかない。
やがて演習のためにそれぞれの持ち場につくようにとクラスメイト達は担当の講師に呼びかけられて、チィオを抱えたフェリックスは一人取り残された。
「ロルフの奴を脅して休ませて正解だったな。今日の大演習は俺の見せ場だ。あんな落ちこぼれにまた邪魔されたら台無しだ」
そんなうなだれて取り残されるフェリックスをチラリと振り返り、口許をゆがめてスコルが横を行くネラに話しかける。
「今日は僕の指示どおりにうまくやってよね。“情報”はしっかり横流ししてもらったんだから」
「わかってる」
◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
演習が始まった。
だけど大演習場の控え室にフェリックスは取り残されていた。
本来ならば自分も大演習に参加していたはずなのにと、フェリックスはぎゅっと唇を噛みしめる。チィオが「ちぃ」と心配そうに顔をのぞき込んでくるのに、その頭を撫でた。
「やっぱりここにいた」
「メディ先生」
そこにやってきた人に、フェリックスは眼鏡越しに黄色い目を見開く。
「大演習はもう始まっているよ、行こう」
「え? どこへ?」
手を引っぱられて連れて行かれた先は、ガイド達の詰め所だった。四方の壁に備え付けられた無数の魔導モニターには、戦うセンチネルとそのアニマル達の姿が映し出されている。
「見学も立派な勉強だよ」
「ありがとうございます」
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