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【2】蒼のプリンス その3
しおりを挟むメディに礼をいう。一瞬離れた場所にいたネラがちらりと冷ややかな視線を送ってきたけど、フェリックスは気にしないでモニターを見た。
今日の大演習場は幾層ものダンジョン仕立てだ。石造りの迷路や、深い森のフィールド。そこからいきなり魔獣達が飛び出してくる。
だけど、殆どのセンチネル達は魔獣達が襲いかかって来る前にその動きを予測し、己のアニマルに指示を出して攻撃をしかけていた。ときには茂みや遮蔽物の建物の中に潜む魔獣も察知して、先に葬る。
これはセンチネル特有の鋭敏な五感のおかげだ。彼らはすべての感覚においてすぐれている。それこそ隣室の、紙が一枚落ちたかすかな音さえ聞くことが出来るなんていわれているぐらいだ。
だけど、そんな鋭敏すぎる感覚を常に発動していたら、おかしくなってしまう。そこで必要なのはガイドの作り出すシールドだ。
魔獣退治や、様々な災害救助の活動においてはその鋭敏な感覚と強力な魔力が奴に立つ。
だが、なんの防御もなくむき出しの感覚のままセンチネルをそのような場所に放り出せば、彼らはその感覚と多大な情報にりまわされて、混乱し力を暴走させる事態となりかねない。
それを導くのもガイドの役目だ。彼らの鋭敏すぎる感覚を保護するシールドを調整し、魂を共感させることで、センチネルと感情を共有し、読心によってその精神を安定させる。
壁の大きな二つのモニターには、第一位と第二位のセンチネルが写し出されていた。一位は当然ウォーダンだ。
今、彼がいるのは廃墟の町のフィールド。サラマンダーが蒼い炎を吐くと、たちまち廃屋の壁が凍りついて、その向こうに潜んで今にも彼に飛びかかろうとしていた、大型の四つ足の魔獣が凍りつく。壁ごとバリンと砕けて消えた。
さらに空から毒蜂の群が襲ってくる。これにもサラマンダーはブレスを吐いたが、今度は蒼い炎に包まれ燃えあがり一瞬にして消えた。
地面に毒蜂が落ちて、その火が引火することはない。見事な魔力制御だ。
これがプリンスの力なのかとフェリックスはその戦いの見事さに、頬を紅潮させて見とれた。
第二位だが、なんとスコルだった。新入生が大演習でいきなり二位なんて快挙といえるだろう。
だけど、彼のやり方はウォーダンの戦いとはまるきり正反対だった。必要以上にフィールドを破壊する。またがった巨狼に無駄にブレスを吐かせ壁を破壊して強引に道を作る。炎があちこちに引火するのにも構わずに突っ切っていく。そのたびに各フィールドに詰めている講師のセンチネル達が飛び出して消火などの後始末にあたっていた。
魔獣を倒し得点を稼いでも、こういうプレイは微妙にマイナス判定がつく。だから二位なのだ。ウォーダンより効率的に得点の高い魔獣を倒しているのにもかかわらずだ。
そこでフェリックスはおかしいと気付く。スコルはあまりにも得点の高い魔獣ばかりに遭遇し倒している。それに初めての大演習のダンジョンなのに最短ルートを進んでいることは、別の地図モニターの表示でわかった。
ちらりとスコルとペアを組んでいるネラを見れば、得意げな顔でモニターを見ている。「やった、一番乗り」なんて声をあげた。
実際、スコルがウォーダンより先に、最深部のラスボスがいる部屋の転送陣へと乗っていた。
彼と彼が乗る巨狼の姿が一瞬にして消えて、最後の部屋の光景が映し出される。
真っ赤な瞳のない目が光る。それも三対。待機所にいた全員が「え?」と声をあげた。
それはダンジョンの高い天井につくほどに大きな、三つ首の犬。
SS級の魔獣ケルベロスだった。
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