22 / 120
どうも魔法少女(おじさん)です。【2】~聖女襲来!?~おじさんと王子様が結婚するって本当ですか!?
【3】おじさんは月一で整えられる その2
しおりを挟む「ピート王子とマイアちゃんが、意外にも一番しっかりしてるのもかな」
そのコウジの視線の先には、老貴婦人のダンスのお相手をするピートと、同じく老貴族の紳士と笑顔で踊るマイアの姿があった。どちらのご老人も余生の楽しみとして慈善事業に力を入れている彼らの協力者だ。
コウジがしっかりしているというのは、ピートとマイアの婚約が、すでに一月ほど前に発表されていることだ。結婚については数年後ということになっているが、あの二人なのだから、そこらへん心配ないだろう。
「それでシオンちゃんのほうはどうなんだ?」
聞くのは野暮かと思いながらも、くわえ煙草で口に出す。本日はすみれ色のドレスに身を包んだ美少女は憂い顔でため息を一つ。
「なんのことかしら?と言いたいところだけど、ピート殿下とマイアが婚約してからは、当然わたし達もって空気になってるわ」
そもそもが運命の王子様と魔法少女は当然のように結婚してきたのだから、周囲もそう思って当然だろう。
「だけどシオンちゃんは迷っているか?あのコンラッド王子は堅物だと思うが、そのぶん誠実だとおじさんは思うぜ。
なにより、シオンちゃんのことが好きなのは丸分かりだ」
「はっきりいうのね」とシオンはこのときばかりは年頃の少女らしく頬を赤らめる。
彼女だってコンラッドのことは憎からず思っているだろう。そもそもが女神様の裁量とはいえ、運命のパートナー同士の相性はいいのだ。だから、一人の例外もなく王子様と少女は結ばれてきた。
「コンラッド殿下は、ジーク・ロゥ殿下と同じ第2王子で、第1王子の座が空位の今、実質上皇太子と同じよ。どちらかが将来の王となる」
「俺はコンラッド殿下が次の王様だと思うがな」
ジークが王位なんぞ望んでいないことは、コウジが一番よくわかっている。それにいくら彼が不遇の王子から国の英雄になったとはいえ、あの憎まれた公式愛妾エノワールの息子であることは変わりない。
老害……もとい元老院の長老どもは、いまだそのジークの出自にこだわっているのだ。彼らからすれば愛妾の庶子よりも、準妃の正嫡であるコンラッドが王になることが順当だと考えているだろう。
「わたしはコンラッド殿下が王になろうとなるまいとそばにいて、その仕事を手伝いたいとは思っているわ。国の仕事はやりがいがあるもの。まだまだ色々勉強しなきゃならないけど」
「シオンちゃんは王妃様向きだと思うけどな」
「そこよ。王となれば、かならず正妃だけでなく、準妃も娶らねばならない。これは慣例よ。当然、私が正妃となるでしょうけど。
しかるべき家から強い魔女の血を持つ貴族の娘が選ばれるでしょうね」
「決まり事だからって納得出来ることじゃないよな」
ああ、それがあったか……とコウジは今さら思う。
王に嫁いだ歴代の魔法少女がこの制度にどうおりあいをつけてきたかわからないが、しかし、現代日本の女性の価値観からすれば、夫が複数の妻を持つことにはたしかに抵抗がある。
まして、シオンのようにしっかりした考えの少女ならばなおさらだ。
「あなたのほうはどうなのよ?」
「ん?」
「コンラッド殿下はね。長老達の意見はともかく、ジーク・ロゥ殿下こそが次の王に相応しいと考えているようよ」
コウジはその言葉に軽く目を見開く。たしかにコンラッドはジークのことを高く買っているようだったが、そこまでとは……だ。
「そして、ジーク・ロゥ殿下が王となれば、当然あなたを正妃の座に据えるのでしょうけど」
「おじさんをか?冗談キツイぜ」
コウジはくわえ煙草の口許をゆがめて茶化そうとしたが、シオンがそれを無視して続ける。
「この場合、正妃とはいわず、正王配と言うべきかしら?だけど、準妃は当然必要とされるでしょうね。ジーク・ロゥ殿下がいくらあなたを大切にしようとも、次の皇太子は望めないのだから」
「…………」
むしろ、シオンの場合よりも、もっと準妃が重要視されるだろう。
王の役目は国を統治するだけではない。次の血を確実に残すことが、王国の安定につながるのだから。
「あの頑固者がそれに納得すると思うか?」
頑固者とはジークのことだ。コウジが誰かと踊ることさえ許さないほど自分に執着している男がだ。
「そうよね」
「だから、コンラット殿下が次の王様だってヤツは考えている」
「だけど、たとえ王にならなくたって、英雄の血を残したいと考える人達だっていることも確かよ」
「…………」
シオンはそれだけ言い残して、広間の中央へと出て行った。そんな彼女にさっそくダンスを申し込む貴族があり、彼女はその手をとっていた。
◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
ラストダンス。
当然のようにコウジの手を取りにきた、ジークとともに踊り出す。その顔をじっと見れば「なにかあったか?」と聞かれる。
「なにもないぜ」
「シオン嬢とずいぶん話していたようだが」
「なに、嫉妬か?」
「うん」
素直に答えるのに思わず吹き出してしまう。まったく、このかわいい男はコウジに関してはこの手の感情を隠しもしない。
「彼女にはコンラッド殿下がいるのに?」
「それでも気に入らない」
「俺だって、お前がご婦人の手をとって踊るのを壁際で見ていたぜ」
「なら、もうあなた以外とは踊らない」
「それはダメだ。ちゃんとお相手するのも円滑な社交のコツだって、執事のケントンさんも言っていただろう?」
「そのかわり、最初と最後のダンスは俺としてくれ」と言えば、王子様は「ああ」と満足げに頷く。
この様子じゃ、万が一にだってジークが準妃を娶るなんて日がくるとは思わないが。
それでも“英雄の血を残したいと考える人々”というシオンの言葉は、コウジの胸に小さな棘のようにひっかかった。
307
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!
水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。
それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。
家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。
そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。
ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。
誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。
「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。
これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される
水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。
絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。
長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。
「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」
有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。
追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。