33 / 120
どうも魔法少女(おじさん)です。【2】~聖女襲来!?~おじさんと王子様が結婚するって本当ですか!?
【9】おじさん舐められる※ その2
しおりを挟む「……それで、あなたが無駄に街を歩き回っていたのは……」
「いんや、散歩はおじさんの趣味だぜ。そこらへんすぐにぷらぶら歩きたくなるのも」
「はぐらかさないで!」とシオンが尖った声をあげる。
いつもの?ごとくのなんでもやる課。執務机に行儀悪く足をのっけるコウジの前に仁王立ちするシオンのいつもの図だ。そこにワゴンをおして、マイアが「お茶の時間ですよ」とやって来るのも。
「なによ、お茶になんかごまかされないわよ!」
「え?でも、今日はシオンちゃんの好物の焼き芋のタルトなのに」
「…………」
シオンは無言で執務机前にある応接セットに腰を下ろした。やはり、彼女も年頃の娘。お芋には弱いらしい。
コウジも応接セットの前に移動して立ったまま、手を伸ばしたのは好物のラムレーズンサンドだ。それを口にくわえると『お行儀が悪いわよ』とばかりシオンににらまれたが、それも気にせずにもぐもぐとやる。
「それで、あなたの傷はどうなの?」
“襲撃事件”の昨日で今日。ケロリとした顔で王宮にやってきたコウジをシオンが気遣う。マイアも「お身体は大丈夫なんですか?」と聞いてくる。優しい良い子達だ。一人はツンツンしてるけれど。
「“多少”なぐる蹴るされたけどな」とコウジが口にすると、二人とも明らかに青ざめた。災厄と闘った経験はあるとはいえ、本来は平和な日本で暮らしていた十代の少女だ。そんな暴力沙汰が自分達の回りにあるなんて考えたこともなかっただろう。
同時に強姦未遂のことは、とても言えねぇなぁ……と思う。もっともこれは表沙汰にされてはいないが。
「王子様の治癒魔法で綺麗さっぱり治ったけどな。今頃は牢屋のベッドでうなっている奴らのほうが、傷は酷いんじゃないか?」
単純な暴力で受けた傷は治癒魔法で治しやすい。しかし魔法で受けた傷というのは場合によって難しい。ましてジーククラスの魔力となると、相手の魔力回路さえ寸断する威力だ。
コウジの言葉通り、捕らえられたキツネとたぬき、いやいや、元序列第10位と第11位の王子は王侯貴族専用の“貴賓室”の監獄塔の天蓋付きのベッド中で、魔法騎士達は地下牢の粗末な木のベッドでうんうんうなっていることだろう。
そんなわけで、英雄の盟友襲撃事件の聴取は一旦保留となっていた。
コウジとしてはその襲撃“暴行”事件に“強姦未遂”は加わっても、奴らの罪が重くなるだけで、自分自身の精神にはかすり傷さえ負わせられないと思っていた。
が、これにはジークが反対した。
◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
昨夜、ことが終わったあとのベッドでだ。くわえ煙草のコウジを腕枕しながら、王子様はいまだ怒り冷めやらぬ様子で。
「奴らを八つ裂きにしたい気持ちは今でもある」
「命はとるなって言っただろう?奴らの口からことの真相を聞かねえとな」
「ともあれ、あの下劣な者達があなたを穢そうとしたことを公にするのはダメだ」
「別にツッコまれたところで殴る蹴ると一緒だと俺は思うけどな」
「まあやられるつもりはなかったけどな」と剃刀色の瞳に切なげな感情が浮かぶのにコウジは苦笑する。「俺だってお前がいるんだから、やだよ」とその精悍な頬を、手の甲でするりと撫でてやり。
「俺は傷つかねぇよ」
「あなたはそう言う。だが、社交界でこの噂が流れれば“未遂”ではないと口さがない人々が言う」
ああ、なるほどとコウジは納得した。
人の噂というのはタチが悪い。たとえそういうことが無かったと本人達にはわかっていても、話は勝手に面白おかしい方向に転がる。
人の不幸は蜜の味ってヤツだ。
コウジが黙ることにしたのは目の前で憂い顔をしている王子様の為もあるが、二人の魔法少女達のことも浮かんだからだ。
「……魔力接続って、そんな簡単に書き換えられるものなのか?」
「出来る訳がない。私とあなたは運命のパートナーだぞ」
「でしょうねぇ」
だが、あの品性下劣な王子達がコウジを狙ったのは、自分達が失った魔法少女達の身代わりとするためだ。
それはコウジだけではなくシオンやマイアにもあてはまる。
自分達も襲われたかもしれないと、いらない恐怖を彼女達に与えたくはなかった。
このことは二人には伝えていないがコンラッドとピートには手を回し、少女達にはたとえ王宮内であっても影の護衛が付くことになった。
それが今朝の三王子秘密会談の決議だ。
◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
「……前々から、俺とジークの周りにはちろちろ嗅ぎ回る気配があったんだ。尾行は日常茶飯事だったしな」
応接セットにどっかり座ったコウジは、くびりと茶を飲む。
まあ、それだけでなく序列を無くした王子達。それも名家の出の者達は、今回の王の裁定にかなり不満を持っているとの情報もあったのだが。
「それであなたがおとりになって、街をふらふらして彼らをあぶりだしたわけね?」
焼き芋のタルトをつつきながら、シオンが訊く。
「まあ、あんな簡単にひっかかるとは思わなかったぜ」
素行不良の元魔法騎士達がいるとの話で、裏通りに行ったのは偶然だ。奴らが王子達と繋がっているという証拠はなかった。
実はコウジにも以前から影の護衛はついていた。無防備に一人で街をふらふらするほど、コウジもジークも迂闊ではない。
彼らがコウジが魔法騎士くずれに囲まれたときに出て来なかったのは、コウジが念話で「今は、動くな!」と飛ばしたからだ。人質の少女の安全を優先させるのと、彼らをもう少し調子に乗らせて情報を得る為だ。
思いもかけず、あっさりと“黒幕”が登場したわけだが。
────いや、あのバカ王子達が本当に“そう”かはわかんねぇなあ。
しつこく自分とジーク達につきまとっていた影達は、あの二人の王子が雇っていたとわかればあっさりとカタは着くが。
「それでおとりの役目は終わったのだから、このふざけた課は畳むわけ?」
シオンに訊ねられて「いんや」とコウジは首を振る。
「言っただろう?おじさんの趣味は散歩だって」
「あなたは、序列2位の自覚もなく、またふらふらするつもり!」
シオンの説教?を右から左に聞き流しながら、コウジは煙草を吹かした。
292
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまいネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
名前が * ゆるゆ になりました。
これからもどうぞよろしくお願い致します!
表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。校正も自力です!(笑)
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで
二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
* ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
透夜×ロロァのお話です。
本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけを更新するかもです。
『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も
『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑)
大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑)
名前が * ゆるゆ になりました。
これからもどうぞよろしくお願い致します!
表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。校正も自力です!(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。