どうも魔法少女(おじさん)です。 異世界で運命の王子に溺愛されてます

志麻友紀

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どうも魔法少女(おじさん)です。【2】~聖女襲来!?~おじさんと王子様が結婚するって本当ですか!?

【9】おじさん舐められる※ その2

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「……それで、あなたが無駄に街を歩き回っていたのは……」
「いんや、散歩はおじさんの趣味だぜ。そこらへんすぐにぷらぶら歩きたくなるのも」

 「はぐらかさないで!」とシオンが尖った声をあげる。
 いつもの?ごとくのなんでもやる課。執務机に行儀悪く足をのっけるコウジの前に仁王立ちするシオンのいつもの図だ。そこにワゴンをおして、マイアが「お茶の時間ですよ」とやって来るのも。

「なによ、お茶になんかごまかされないわよ!」
「え?でも、今日はシオンちゃんの好物の焼き芋のタルトなのに」
「…………」

 シオンは無言で執務机前にある応接セットに腰を下ろした。やはり、彼女も年頃の娘。お芋には弱いらしい。
 コウジも応接セットの前に移動して立ったまま、手を伸ばしたのは好物のラムレーズンサンドだ。それを口にくわえると『お行儀が悪いわよ』とばかりシオンににらまれたが、それも気にせずにもぐもぐとやる。

「それで、あなたの傷はどうなの?」

 “襲撃事件”の昨日で今日。ケロリとした顔で王宮にやってきたコウジをシオンが気遣う。マイアも「お身体は大丈夫なんですか?」と聞いてくる。優しい良い子達だ。一人はツンツンしてるけれど。

 「“多少”なぐる蹴るされたけどな」とコウジが口にすると、二人とも明らかに青ざめた。災厄と闘った経験はあるとはいえ、本来は平和な日本で暮らしていた十代の少女だ。そんな暴力沙汰が自分達の回りにあるなんて考えたこともなかっただろう。
 同時に強姦未遂のことは、とても言えねぇなぁ……と思う。もっともこれは表沙汰にされてはいないが。

「王子様の治癒魔法で綺麗さっぱり治ったけどな。今頃は牢屋のベッドでうなっている奴らのほうが、傷は酷いんじゃないか?」

 単純な暴力で受けた傷は治癒魔法で治しやすい。しかし魔法で受けた傷というのは場合によって難しい。ましてジーククラスの魔力となると、相手の魔力回路さえ寸断する威力だ。

 コウジの言葉通り、捕らえられたキツネとたぬき、いやいや、元序列第10位と第11位の王子は王侯貴族専用の“貴賓室”の監獄塔の天蓋付きのベッド中で、魔法騎士達は地下牢の粗末な木のベッドでうんうんうなっていることだろう。
 そんなわけで、英雄の盟友襲撃事件の聴取は一旦保留となっていた。

 コウジとしてはその襲撃“暴行”事件に“強姦未遂”は加わっても、奴らの罪が重くなるだけで、自分自身の精神にはかすり傷さえ負わせられないと思っていた。
 が、これにはジークが反対した。



   ◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇



 昨夜、ことが終わったあとのベッドでだ。くわえ煙草のコウジを腕枕しながら、王子様はいまだ怒り冷めやらぬ様子で。

「奴らを八つ裂きにしたい気持ちは今でもある」
「命はとるなって言っただろう?奴らの口からことの真相を聞かねえとな」
「ともあれ、あの下劣な者達があなたを穢そうとしたことを公にするのはダメだ」
「別にツッコまれたところで殴る蹴ると一緒だと俺は思うけどな」

 「まあやられるつもりはなかったけどな」と剃刀色の瞳に切なげな感情が浮かぶのにコウジは苦笑する。「俺だってお前がいるんだから、やだよ」とその精悍な頬を、手の甲でするりと撫でてやり。

「俺は傷つかねぇよ」
「あなたはそう言う。だが、社交界でこの噂が流れれば“未遂”ではないと口さがない人々が言う」

 ああ、なるほどとコウジは納得した。
 人の噂というのはタチが悪い。たとえそういうことが無かったと本人達にはわかっていても、話は勝手に面白おかしい方向に転がる。
 人の不幸は蜜の味ってヤツだ。

 コウジが黙ることにしたのは目の前で憂い顔をしている王子様の為もあるが、二人の魔法少女達のことも浮かんだからだ。

「……魔力接続って、そんな簡単に書き換えられるものなのか?」
「出来る訳がない。私とあなたは運命のパートナーだぞ」
「でしょうねぇ」

 だが、あの品性下劣な王子達がコウジを狙ったのは、自分達が失った魔法少女達の身代わりとするためだ。
 それはコウジだけではなくシオンやマイアにもあてはまる。

 自分達も襲われたかもしれないと、いらない恐怖を彼女達に与えたくはなかった。
 このことは二人には伝えていないがコンラッドとピートには手を回し、少女達にはたとえ王宮内であっても影の護衛が付くことになった。

 それが今朝の三王子秘密会談の決議だ。



   ◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇



「……前々から、俺とジークの周りにはちろちろ嗅ぎ回る気配があったんだ。尾行は日常茶飯事だったしな」

 応接セットにどっかり座ったコウジは、くびりと茶を飲む。
 まあ、それだけでなく序列を無くした王子達。それも名家の出の者達は、今回の王の裁定にかなり不満を持っているとの情報もあったのだが。

「それであなたがおとりになって、街をふらふらして彼らをあぶりだしたわけね?」

 焼き芋のタルトをつつきながら、シオンが訊く。

「まあ、あんな簡単にひっかかるとは思わなかったぜ」

 素行不良の元魔法騎士達がいるとの話で、裏通りに行ったのは偶然だ。奴らが王子達と繋がっているという証拠はなかった。
 実はコウジにも以前から影の護衛はついていた。無防備に一人で街をふらふらするほど、コウジもジークも迂闊ではない。

 彼らがコウジが魔法騎士くずれに囲まれたときに出て来なかったのは、コウジが念話で「今は、動くな!」と飛ばしたからだ。人質の少女の安全を優先させるのと、彼らをもう少し調子に乗らせて情報を得る為だ。
 思いもかけず、あっさりと“黒幕”が登場したわけだが。

────いや、あのバカ王子達が本当に“そう”かはわかんねぇなあ。

 しつこく自分とジーク達につきまとっていた影達は、あの二人の王子が雇っていたとわかればあっさりとカタは着くが。

「それでおとりの役目は終わったのだから、このふざけた課は畳むわけ?」

 シオンに訊ねられて「いんや」とコウジは首を振る。

「言っただろう?おじさんの趣味は散歩だって」
「あなたは、序列2位の自覚もなく、またふらふらするつもり!」

 シオンの説教?を右から左に聞き流しながら、コウジは煙草を吹かした。





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