どうも魔法少女(おじさん)です。 異世界で運命の王子に溺愛されてます

志麻友紀

文字の大きさ
35 / 120
どうも魔法少女(おじさん)です。【2】~聖女襲来!?~おじさんと王子様が結婚するって本当ですか!?

【11】おじさん包囲網~王子様からは逃げられない!~ その1

しおりを挟む
   



「婚約の儀の段階ならば、伯爵位でもよろしいでしょう。私の称号を一つコウジに譲ってもよろしいかと」

 固まったコウジの隣でジークが口を開く。おい、お前なんで当たり前みたいに、王様の言葉に同意しているんだ? 

「いや婚約者であるお前の称号では、身内のこととなってしまう。ここは王である私が下賜したという形を取らなければな」

 「あの廃絶した伯爵家はどうだ? 王家の血を引いている」「領地がいささか小さいので、同時に断絶した子爵家の領地も買い足しましょう」「伯爵と子爵の称号を二つ授けるか? それならばさらに格があがる」などと勝手に話を進める王様と王子様にコウジは「ちょっと待ったぁ!」と声をかける。

「王様、正気ですか? この俺とジークが婚約!? 結婚!?」
「余は冗談は言っておらぬし、酒も飲んではおらぬぞ」

 「そもそも昼間だ」と王様が生真面目に答える。「いや、このとんでも美形王子様とおじさんですよ! お・じ・さ・ん! 男です!」

 「反対しないんですか!?」となんで自分がこんなこと聞いているんだと、コウジは思わずぐしゃぐしゃと髪をかき回す。ケントンの『我慢ですよ』という言葉が浮かんだが、我慢なんて出来るか! 

「フォートリオンは同性同士の婚姻も女神アルタナの愛により許している。問題はない」
「い、いや、それは確かなんですけどね。王族は前例がないというか、なんというか」
「前例など作るものだろう。我が国の婚姻の法は、王族のみ除外するとは書かれておらぬぞ」

 この王様、頭のネジが一本ぶっ飛んじゃったのか? と思う。

「そ、それはそうなんですけどね。俺としては爵位なんかいらないし、ジークとの関係もこのままで、別に形なんて取らなくてもですね」

 コウジとしては自分がお貴族様になるのも柄じゃないし、仰々しいだろう婚約式だの、まして結婚式なんて考えるだけで、小っ恥ずかしくてその場でジタバタ細い足を動かして悶絶したくなる。

────この隣に座る王子様とおじさんが結婚式、結婚式……あ、想像しちゃダメだ。

 白い鳩が青いお空に飛んで、教会の鐘がカランコロン、その下の光景は考えたくない。王子様とおじさんが腕組んで出てくるなんて、どんなコメディだよ! 

「コウジ」

 横から低い声がして、コウジがいまだ髪に差し入れていた手を取り、ジークがぎゅっと両手で握りしめる。優しく包み込むように、だがその少し強い力は絶対にこの手を離さないと語っているかのようだ。

「あなたは覚悟を決めると言ってくれたな?」
「あ、ああ。だからって結婚なんて形を取らなくてもだな……俺はお前のそばにいるぞ」
「いいや、それは私が嫌だ。あなたが私の伴侶であることを、私は外にもしっかりと示したい」
「いやいや、俺はだから別にいいって……」
「覚悟を決めたならば、私との結婚も構わないはずではないか?」
「う、それは……」

 ずいっと超絶美形の顔が目前に迫る。すでに“言質”はとられている。なぜ言った? あのときの自分。たしかに“覚悟”はした。だけどあれは、なにがあってもジークのそばにいるということで、王子様と正式に婚約、結婚なんてことではない。

「コウジ、私と結婚しよう」
「う、あ、それはなぁ……」

 くれますか? ではなくて、しようとは断定か? 王子様と思う。言葉に詰まるコウジをじっと剃刀色の瞳が見つめる。

「私は永遠にあなたを愛している」
「お、俺もずっと好きだぜ」

 永遠はちょっとわかんねぇけど、少なくともずっと……は努力したいと思っている。

「ならば生涯を共にいる約束を、私と結婚してくれますね?」
「う、そ、それは……」
「結婚してくれますね?」
「わ、わかった……」

 普段は結構に無口なクセして、こんなときにはゴリゴリに押しの強い王子様の三段論法にうなずくしかなかった。
 しかし、ここで負けては? ならないと、コウジはジークに手を握りしめられたまま、前を見る。

「これで本当にいいんですか? 王様ぁ!」
「いいもなにもコウジ。君はすっかり忘れているようだが、ジークはすでに皆の前で君との関係を公言しておるのだぞ」

 あ、たしかに忘れていた。みなさんの前で、この王子様、俺の口をかっぷりかじった上に、王様に向かって自分達のことは『ほっといてくれ』と言ったんだった。
 いや、そこでどうして王様、“ほうっておいてくれなかったんだ”と言いたいが。

────まあ、世間体とかありますよねぇ。

 あれがあったから、この王様としても渋々認めざるをえなかったのか? とコウジは思ったが、その心を読んだかのように、フィルナンドは「そうではない」と言う。

「いまさら外聞がなんぞと、四十五人も子を作った余が気にすると思うか?」
「はぁ……」

 そうでしたね。この王様四十五人も王子を作った恥知らず……もとい、大変精力的な方でしたね。
 もっともそれは災厄に踊らされた結果とも言えるが。

「結婚を許可するのは親心……というのも白々しいな。四十五人もいれば顔や名前さえおぼろな者もいる。薄情と言われてもしかたない。
 冷徹に切り捨てることもな」

 それは三王子以外の王位継承権をすべての王子達から取り上げようとしていることか。それから、逃亡した第10王子と第11王子に肉親として情けをかけることなく処断したことか。
 統治者としては冷徹は必要な資質だろう。情けに囚われて国を滅ぼした例など、いくらでもある。

「だからこれは不遇の身にありながら、長年国に尽くしてくれた英雄にたいする、王としての感謝のようなものだよ」

 フィルナンド王がその微笑みにかすかな苦さを滲ませる。だが、そこにはたしかに父親としての顔もあったのは事実だった。





しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!

水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。 それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。 家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。 そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。 ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。 誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。 「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。 これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。