36 / 120
どうも魔法少女(おじさん)です。【2】~聖女襲来!?~おじさんと王子様が結婚するって本当ですか!?
【11】おじさん包囲網~王子様からは逃げられない!~ その2
しおりを挟む翌日のなんでもやります課。「ご婚約おめでとうございます」とマイアの言葉にコウジは「まだ、婚約してねぇけどな」と執務机の椅子に埋もれるように、力無く微笑んだ。
茶菓子が出された応接セットに移動する気力もない。マイアがそこにお茶と小皿にのせた焼き菓子を持ってきてくれた。良い子だな。
その応接セットの椅子にこしかけたシオンが、王都で発行される新聞の束をながめながら言う。
「すべてトップニュースよ。一夜にしてプリンスになったご気分は?」
「おじさんがプリンスってガラじゃないだろう?」
「そうですね。王子様と結婚するんだから、プリンセスですよね」
「……いや、マイアちゃん、それはもっとやだ」
姫おじさんはない、ない。
「だいたい、反発があると覚悟していたのに。なんだよ。この歓迎ムード」
シオンの持ってきた新聞の束はコウジも朝、屋敷で読んだのだ。執事のケントンがアイロンをかけたものを手渡されて。
そこには百年に一度の慶事に王都は歓びに包まれるだの、英雄と盟友、ついに結ばれるだの。純愛を貫くなんて小っ恥ずかしい見出しまで踊っていた。
純愛、純愛ねぇ……国民の皆さんは知るまい。あのクールな王子様は夜はケダモノになって、このおじさんをヒンヒン啼かせているなんて。
そんなコウジにシオンが「なにそのアナログの考え」と冷ややかに言う。
「元々同性同士の結婚が女神アルタナの元で、認められている世界よ。ある意味でわたし達の世界よりよっぽど進んでいるわよ。
少数派とはいえ差別はないんじゃない?」
「そりゃ、差別はありませんと建前として、誰もがいうさ。だけどなあ。貴族や王族の結婚となると話は別だぞ」
「英雄の血を望む者はいるって、前、言ったのはシオンちゃんだぜ」といえば、彼女は一瞬決まりが悪そうな顔となる。
「だけど陛下自らが、ジーク・ロゥ殿下とあなたの結婚を祝福されたとならば、話は別よ。それに、あなた達は運命のパートナーだもの。たとえ同性同士であっても、やはり王子と魔法少女は結ばれるのだと、夢物語のように王都の民達は語り合っているわ」
「魔法少女じゃなくて、おじさんだけどな」とコウジは苦笑する。
民の歓迎ムードに驚いたコウジだが、シオンの言うとおり国王の祝福もあるが、やはり最大の理由は、二人が運命のパートナーということだった。
このフォートリオンの歴史で王子と魔法少女達はひとつの例外もなく結ばれてきたのだ。それは数々の伝説や物語として伝わっている。
そこに英雄の王子と盟友のおじさんの物語が加わるのかと思うと、少し複雑であるが。
「で、シオンちゃんはどうして不機嫌なんだ?」
コウジが子猫を保護したり、捜し物を手伝ったりして新聞に載る度に「自覚が足りない」と怒鳴りこんできた彼女だが、今回の記事に自覚は関係ないだろう。
そのシオンの表情がどこか冴えない。というより悩んでいる風だ。
「ピート殿下とマイアに続いて、あなたとジーク・ロゥ殿下との婚約でしょ?
当然、コンラッド殿下とわたしも……と周囲は期待するわ」
なるほどとコウジは思う。
王子と魔法少女は例外なく結ばれてきたのだから、コンラッドとシオンも当然と周りは考えるだろう。
しかし、シオンは以前、コンラッドとの結婚を迷っているとコウジに話した。
その理由は、将来コンラッドが王となったとき、当然正妃となるだろうシオンとは別に、準妃を娶ることになる。それにあった。
フォートリオン国王は正妃と準妃、二人の妃を娶る制度がある。これは聖王グラフマンデが二人の魔法少女をパートナーとしたときからの習わしだ。
同時に、王家の血を確実に残す制度とも言えた。
とはいえ、現代日本の考え方からすると配偶者に自分以外の相手がいるなど抵抗がある。過去の魔法少女達かどう折り合いをつけてきたかはともかく、シオンは自立心の強い少女だ。
コンラッドのことは好ましく思っているが、準妃の制度にやはりひっかかって踏み切れないのだと、コウジに語っていた。
「ジーク・ロゥ殿下は、生涯あなただけだと、国王に確認して、それを認めさせたというじゃない?」
「ああ、あの王様があっさりとうなずいたんだよな」
婚約式は大神殿にて行われるのだが、そこで女神アルタナにジークは生涯コウジだけだと誓うという。神に対しての宣誓は絶対だから、これでジークが将来王となろうとも、準妃の座は空位のままとなる。
「コンラッド殿下もね。それを聞いて、わたしに準妃を娶ることは将来絶対ない。ジーク・ロゥ殿下と同じく婚約式で、神前に誓ってもいいとおっしゃってね」
「いいじゃないか」
「正直、嬉しかったわ」とシオンがほんのり頬を赤らめる。しかしすぐに元の憂い顔となって。
「だけどね、それを聞いたロジェスティラ様が反対なされたの」
コンラッドの母であり、彼女はこの王国の準妃だ。「反対というより、たしなめる口調ね。若さゆえの激情で神前で誓えば取り返しがつかなくなる。よく考えなさいって……」とシオンはため息を一つ。
「王家の血の存続の“保証”として準妃という制度も、愛妾という制度もあるわ。同格の序列2位のジーク・ロゥ殿下が神前で男のあなただけと誓えば、当然、王家の血統を繋いでいくのはコンラッド王子か、ピート王子ってことになる」
シオンの言葉にマイアが「ピート君も……」と軽く目を見開く。それにシオンは「当然よ。序列3位だもの」と返す。
「え、でもピート君もわたしだけだって……」
「そこは序列3位の気楽さね。嫌みじゃないのよ。ただコンラッド殿下は生まれた時から序列2位の王子で準妃の御子だったってこと」
序列第1位が空位の今となっては、準妃の御子たるコンラッドが正統な王家の血を伝える唯一の王子と考える石頭は多そうだ。
「もちろんわたしだって、準妃なんて制度は受け入れがたいわ。いまでもそれがあるならコンラッド殿下との結婚は出来ないと思っている」とシオンは続ける。
「だけど王家の血の存続を一番とするロジェスティラ様の事情もわかるよね。あの方はそれが当たり前のこととして育てられて、生きてきた貴婦人だもの。
嫌いにはなれないわ」
シオンの事情もなかなかに複雑なようだ。
283
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまいネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
名前が * ゆるゆ になりました。
これからもどうぞよろしくお願い致します!
表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。校正も自力です!(笑)
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで
二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
* ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
透夜×ロロァのお話です。
本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけを更新するかもです。
『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も
『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑)
大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑)
名前が * ゆるゆ になりました。
これからもどうぞよろしくお願い致します!
表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。校正も自力です!(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。