どうも魔法少女(おじさん)です。 異世界で運命の王子に溺愛されてます

志麻友紀

文字の大きさ
69 / 120
どうも魔法少女(おじさん)です。【3】~魔王降臨!!おじさんの昔のオトコ!?~

【4】方向違いのアフターケアはほどほどに その1

しおりを挟む
   



「……神様よ。俺達を呼び出すときは、もう少し時と場所を考えちゃくれねぇか?」

 散々抱き合ってそのまま寝たと思う。あれ? はいったまんまだったか? と考えたが、いまは服を着て二人立っている。
 まっ白な空間、おなじみとなったいつもの重役机に社長の椅子に腰掛けた顔の見えない神の姿がある。

「ちゃんと服は着せてあげただろう?」
「そういう問題じゃねぇって、前にも言ったよな?」
「コウジの世界の神よ。私達を呼んだのはあのフィラースという勇者の件か?」
「ジークさんよ。お前はどうしてそう冷静なの!? 俺達素っ裸で寝ていたところを、いきなり呼び出されたんだぞ!」
「今は服を着ている」
「いや、そうなんだけど。しかし、シテいたこと考えるとな、少しは恥じらいとかだな……」
「あなたと私の愛に恥じ入るところは一つもない」

 ドーンって、後ろに効果音の書き文字が見えそうな勢いで堂々とジークが言った。黒に銀の飾りの超絶美形の王子様は、もうそれだけで様になる。

「ただ、あなたの肌を誰かに見られるのは、それが神といえども私は嫌だ」
「う、うん、ああ、そうか」

 もうわかっていたことだがこの王子様の思考はどこかずれている。いや、真っ直ぐすぎて逆にずれちゃっているのか? よくわからん。
 わかるのは並どころか普通にハンサムだって、こんなクサイセリフ言ったら吹き出しちゃうのに、これぐらい浮世離れした美形だともう、許せるところだ。どころかカッコいい。こっちが直視出来ない。おじさんの頬も熱くなる。

「相変わらずラブラブだねぇ。安心して、私は見てないから」

 「それが信用出来ないんだな」とぼやくコウジに、神は「ひどいなぁ」と返す。まあ、神様なんだから、どこだって見ようと思えば見えるのだろうが。

「それより、俺達を呼び出したのはフィラースのことだろう?」
「うん、相変わらず話が早くて助かるよ」
「どういうことだ? 魂はともかく、このコウジって男は俺の妄想をあんたが形にしたもんだろう? 
 その架空の“俺”の記憶の中の男がどうして勇者として召喚された?」
「ところがねぇ、君の記憶も経験も能力も、別に私が一から作ったものではないのだよ。むしろ“借りた”という表現のほうが正しくてね」
「はぁ!?」

 神様いわく「まったくの無垢のものを創造するほうが簡単だよ。まっさらな大地に生まれ立ての命。それがどう育っていくのか、見守ればいい」と。
 逆にすでに“出来上がっているもの創る”のは、神様でも完璧には出来ないという。

「生まれ育った命というのは、様々な因果律によって変化し続けた結果だ。神とて、それを操作することは禁忌とされている。運命に委ねるしかないんだよ。
 コウジという男にしても同様。育った命一つを創り上げることは、天地を開くことより難しいんだよ。どこか破綻が出る」

 「じゃあどうしたんだよ?」とコウジが問えば「だから借りたんだよ」と神は言う。

「コウジという男がいたんだ。彼は君の記憶通りなら外国人部隊から傭兵となって、フィラースという男に出会った」

 その男の身体とすべての記憶を神様は“流用”し、そこにコウジの魂を入れたのだという。

「おい、じゃあ元のコウジはどうなったんだ?」

 まさかこの身体もゾンビじゃないだろうな? とコウジがギョッとしたのは、例のモルガナ女神の件があったからだ。
 モルガナ女神は、このコウジの世界の神に頼んで、日本人の少女の死んだ身体だけもらい、自らがそこに乗り移ることで強力な聖女となったのだ。
 コウジは自分の身体を一瞬薄気味悪く感じたが、神は「ちがう、ちがう」という。

「その身体は私が一から創造した新品だから、安心しなさい」
「くたびれたおじさんの身体が新品ね」

 神曰く、元のコウジの記憶や経験に身体をコピーして新しく創ったのだという。

「だいたい、君の元になった身体はバラバラになって即死だからね。それを再生するほうが手間がかかるよ」
「元になった俺は死んだのか?」
「ああ、もうとっくの昔に転生に入っているよ。まっさらな魂に戻って生まれ変わるんだ」

 「まあ、次が人間とは限らないけどね」と神は少しぞっとしないことを言う。

「だからね、君の傭兵時代までの記憶が鮮明なのはそのせいだよ。中目黒のお掃除屋さんっていうのは、さすがにサンプルがなくてねぇ」

 「君のおぼろげなイメージから創るしかなかった」と神はため息を一つ。コウジは無精髭のあごに手をあてて、それで納得したとうなずく。

「だから修羅の町、中目黒の記憶はどこかかきわりっぽくて曖昧なのかよ」
「だけどその芯となった人格と記憶と経験に身体はしっかりしているからね。破綻はないだろう?」
「ま、今のところ精神も錯乱したことねぇし、身体に異常ないし、ま、いいか」

 傍らで相変わらずの鉄面皮で自分達の話を聞いていたジークにコウジはにっかりと笑う。まったく無表情に見えても、その剃刀色の瞳に心配の色があるのがわかった。もうそれぐらいの仲だ。
 「不安にはならないのかい?」と神に聞かれてコウジは「なにが?」と問う。

「君の意思一つ、その行動一つがすべて、私の考えの通りかもしれない。自分のものではなく」
「生まれた命の運命はいじれないってさっき言ったのは神様、あんただぜ。
 それにそれがどうしたっていうんだ? 俺が俺で決めて動いていると思ってりゃそれでいい。どうせ真実なんてものは見方しだいでコロコロ変わる」

 戦場で幾度もした経験だ。戦う者達の互いの正義のぶつかり合いに、戦争で何もかも失ったと逃げ惑う難民達からすればどちらも悪魔だ。その戦いに金をもらって命を賭ける自分達はもっとクズだっただろう。

 ああ、これも元のコウジの思考か? とコウジは口の片端をゆがめる。コウジ、コウジってややこしいなと内心舌打ちして、自分は自分だと開き直る。これが自分のなりたかった男でその生き様だ。借り物だとしても、今、俺はここにいると煙草をくわえて、ちらりと横にいるジークを見る。
 剃刀色の瞳が今の話を聞いても真っ直ぐ自分を見ていることにどこか安堵する。

「まったくね、君は私の最高傑作だよ」
「おいおい、こんなおじさんをか? よしてくれ」
「完璧な人間を創りたいと、どこかの神が言っていたのを思い出したよ」
「そんなもの神様じゃないか?」
「そうだよ。だから私達は私達を超えるモノは創れないんだ」
「…………」

 妙な話になったとと思いつつ、コウジははぐれた話題を引き戻すことにする。

「それじゃフィラースは、実在する人物ってことか?」

 しかし、小国とはいえ砂漠の国でそんな革命なんて起こったか? と思う。いや、コウジの記憶は鮮明だが、しがないコンビニのバイトだった自分の記憶にはない? と。もっとも、こちらのほうは自分の名前も覚えていないのだから逆に信頼も出来ないが。

「彼は確かにいた。だが、それは元の君が生まれる前の話だよ」

 「東と西の二つの大きな世界が対立していた時代だ……と言えばわかるかな?」と言われてコウジはうなずいた。なるほど壁の崩壊前なんて、たしかにコウジが生まれるもっと前だ。
 東と西のどちらにも属さず翻弄されない国を作るとあの革命家は意気込んでいた。実際革命は成し遂げられたが、その後はその大国両方の思惑エゴに彼の夢は彼の血の中に沈んだ。

「疑問なのは明らかにコウジの国の生まれではない、あの男が勇者としてどうして召喚された? 彼はあなたの民ではないだろう?」

 ジークの質問はコウジも疑問に思っていたことだった。四十四人の魔法少女+おじさんをほいほい異世界に送りこんじゃうこの神様だが、それは日本限定だったはずだ。実際コウジも他の少女達もすべて日本人だ。

「勇者の場合はねぇ“緊急措置”として、そこの神の了承を得ずに召喚出来ることになっているんだよ」

 「神々の間でいちいち許可のやりとりなんてしていたら、あっという間に数百年ぐらいたっちゃうからねぇ。そのあいだに一つの世界は魔界に呑み込まれているよ」と神は続ける。
 世界の敵である魔王を倒せるのは勇者のみ。だからどこの閉鎖的な世界においても、その魂が“最適”となれば召喚出来るのだという。

「問答無用で呼ばれるのはわかったが、なんであいつだったんだ?」

 神の話だと呼ばれる勇者は日本限定でも、地球限定でもなく、神々が創ったすべての世界から呼ばれるってことだ。
 となると、無数の選択肢のなかで、どうしてフィラースが召喚されたのか、逆に疑問だ。

「さて勇者召喚なんて無数のサイコロを振るようなものだからねぇ。どうして選ばれたのか? なんて呼んだ神々にもわからないが。
 思い当たることとすれば、君と彼の因果律ってやつかもね」
「因果律?」
「そう、ロマンチックに言えば“運命”ってものだねぇ」

 神様なのにやけに俗っぽい言い方で、彼は笑った。顔はやはり全然見えなかったけど。





しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまいネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。校正も自力です!(笑)

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで

二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 透夜×ロロァのお話です。 本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけを更新するかもです。 『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も 『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑) 大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑) 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。校正も自力です!(笑)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。