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どうも魔法少女(おじさん)です。【3】~魔王降臨!!おじさんの昔のオトコ!?~
【4】方向違いのアフターケアはほどほどに その2
しおりを挟む勇者召喚の翌日。
発端はモルガナ女神の勇者を呼び出したのだから、今すぐにでも魔王と戦わせようという無茶ブリからだった。「さあ、勇者を呼んだのだから魔王を追い出して、わたしの国を取りもどすわよ!」とまあ、とこまでも身勝手なお言葉だ。
白い羽をせわしなくパタパタと動かす“蛾”もとい女神様に、他のみんなは当然反対した。勇者の実力もわからないのにいきなり魔王と戦うなんて……とだ。
「じゃあ、どうすればいいのよ?」と苛立つ女神に口を開いたのはフィラース自身だ。
「私も私の力を確認したい。模擬戦はどうだろうか?」
そこでコウジが「場所は作れるのか?」とアンドルに訊ねれば「お作りします」と七三分けのデコに血管を浮かべながら答えた。かつては第1王子だった自分が下僕のようなことをしているのが、心の中では罵詈雑言吐いていても、女神様の制御によって従わなければならないのがこの男だ。
そして、たちまちローマのコロシアムのような広い空間が出来た。まったく神様の力ってのは便利なものだぜ。
「フィラース、そのままの姿で戦うつもりか? 武器はいるだろう?」
彼は召喚されたときのいかにも現代人ぽい、シャツにスラックスの姿のままだった。コウジの問いにフィラースは「ああ」と答えて。
「大丈夫。イメージすればいいらしい」
「イメージ」
「そう勇者として必要な装備を」
フィラースが軽く目を閉じれば彼の身体は瞬間光に包まれ、その一瞬後には空色のマントをなびかせ銀の胸当て、手には光輝く聖剣を持った戦士の姿に変わっていた。
一瞬にしてコロシアムを出現させる神様の力もすごいが、勇者として選ばれた者に備え付けられた力すげぇな……とコウジは思う。自分が初めから強力な魔法少女もとい、魔法おじさんだったことを棚にあげてだ。
手慣らしとばかりに、最初は小型の魔獣が呼ばれた。自分に突撃してくる魔犬の群をフィラースはその聖剣の一振りでかき消した。光に飲まれて影形もなく彼らは消える。
さらに空から襲ってくる魔鳥には、剣をくるりと回転させて弓に変える。放たれた一つ矢が無数の光となって、鳥たちを貫き落とす。
「あいつの武器も変化するのか」とコウジがつぶやければ、じろりとジークの視線を感じた。いやいや、勇者様に張り合うなど大人げないぞ王子様。
そのあともフィラースは弓を今度は戦斧に変えて、中型の二本足で歩くトカゲの群を蹴散らした。さらに大木なみに太い胴体を持つ蛇の頭を一撃で切り落とした。
ヒューとコウジは思わず口笛を吹いた。これだけ出来りゃ十分だろうと思ったが、初めは「模擬戦なんて生ぬるい……」なんてブツブツ言っていたモルガナ女神は興奮した様子で。
「まだまだ、勇者の実力はこんなものではないわ! これぐらい倒してもらわないと!」
と白い羽をひらめかせ、その鱗粉をまき散らして出現させたのは。
「あんなもの呼び出すか!」
出たのは、最凶の魔獣であるドラゴンだ。大蛇ならともかく初戦でこれはまずいだろうと、コウジは取りあえずの保護の結界のための煙草を投げ込もうとしたが。それを横に伸ばした手で遮られた。
「ジーク?」
「あの勇者ならば大丈夫だ」
剃刀色の瞳はじっと空色のマントをなびかすフィラースの背を見ている。
ドラゴンがブレスを吐く。広範囲のその炎は直撃だ。避けられない! と思ったが。
そのとき勇者の周りに光の盾が幾つも現れて取り囲みそれを防いだ。強力な結界だ。
そして、ブレスが途絶えた瞬間を狙うように、勇者の手から、今度は槍に形を変えた武器が現れた。
それは光の弧を描いてドラゴンの口へと突き刺さった。断末魔の咆哮が轟き女神の呼び出した魔獣の巨体が一瞬にして消えた。
目にした勇者の力に誰もが言葉がない。モルガナだけが「すごいわ、すごいわ。これなら魔王も一撃よ」なんてはしゃいでいる。まったく、いきなり竜なんて呼び出してはた迷惑な女神様だ。
しかし、フィラースは「まだまだだな」と満足していない様子だった。「なにかご不満が?」と七三のアンドルが内心はどうあれうやうやしく訊ねる。
「今、相手をした魔獣たちは、いずも知性のない本能だけで攻撃してくる者達ばかりだ。魔王に彼を守る側近達は知性ある者達だ。その戦いも経験しておきたい」
そして、フィラースは黄金色の瞳で一人の男を見た。
「ジーク・ロゥ王子よ、お相手願いたい」
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