どうも魔法少女(おじさん)です。 異世界で運命の王子に溺愛されてます

志麻友紀

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どうも魔法少女(おじさん)です。【3】~魔王降臨!!おじさんの昔のオトコ!?~

【11】綺麗さっぱり忘れる男 その1

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 さて、すべて話すべきか、話さないべきか。
 話してコウジに不利益になることはない。
 かといって得になることもない。

 唇に指を押し当ててコウジは口寂しいと感じた。あ、煙草。魔力が封じられているんじゃ、出て来ねぇか……と思う。

 するとフィラースが銀の箱をことりと小卓においた。上半身は裸、下半身は蛇という美しい女妖が蓋に浮き彫りにされた、芸術品と言ってよい代物だ。
 彼の手が蓋をあけると、そこには細巻きの葉巻が並んでいた。コウジはそれを口にくわえるが、あ、火が出せねぇと思う。

 するとポッと葉巻の先に火がつく。「どうも」とつけてくれたフィラースに礼を言う。深く吸って吐く。

「魔界の最上級のものだが、気に入ったか?」
「いんや、俺には上等すぎるな」

 よい香りだが強すぎる。一本だけで当分お腹いっぱいになりそうだ。

「それで話す気になったか?」
「なんだその、取調室のカツ丼みたいなの」

 「カツ丼?」と訊くフィラースに「日本の魔法の料理だよ。これを出すと口を割らなかった犯人が、ぺらぺらしゃべり出す」と冗談めかして返せば「それはどんな自白剤よりすごいな」と彼は苦笑する。
 そして笑いをおさめて「疑わないのか?」と聞いてくる。

「なにを?」
「その葉巻になにか混ぜられてないか? とね」
「あんたはそういうことはしないさ」

 コウジはあっさりと答えてから少し考える。顎に手をあてざらりと無精髭を撫でた。

「必要ならするか」
「そうだな」
「だけど、知られて困ることもないぜ」

 ぷかりと煙をはいて、グラスに残ったシャンパンを飲み干す。

「ならば話せ」
「やだね」
「不利益にはならないと言ったのはそちらだぞ」
「話しても得にはならないし、あえて話す必要を感じねぇ」

 そうだ。あえて話すことではない。
 これを知っているのはコウジにコウジの世界の神に、それから。

「あの男は知っているのか?」
「ジークか? 当然だろう」

 言って、金色の瞳にちらりとのぞいた陰にしまった思ったとたん、手首を引っぱるようにつかまれてベッドへと身体が投げ出されていた。
 男の身体がのしかかってくるのにコウジは目を見開いた。いや、この体勢は覚えがあるが、しかし目の前に迫る顔は、端正なのは同じだが、髪の色は銀ではなく金色で、瞳の色も冷徹そうに見えて自分を見る目はいつだって熱いあの剃刀色ではなく、金色だ。

「冗談だろう?」
「自白剤や暴力でなくとも、しゃべらせる方法はいくらでもあるということだ」

 するりとシャツの裾から手が入りこんでこようとするのを止めて「わかった! 話す、話す!」と慌てて口を開く。手が引いていくのに、ホッと息をついて身を起こす。

「適当に煙に巻いてごまかそうなどと考えるなよ」
「わかってる。ここまできて隠すつもりなんてねぇよ」

 そう意地になることでもないが、しかし、この男が本気で自分に手を出すつもりだったとは思えない。あれはただの脅し……。

────と、思いたいよなあ。あの目の色はなんかヤバかったけど。






「……というわけで、俺はあんたの知るコウジの記憶を引き継いだ。この身体は神様がコピーしたもんだし、入っている魂はしがないコンビニのバイトだった若造だ」

 こんな荒唐無稽な話、誰が信じるかと思うが、相手もまた無念の死を遂げてから、異世界召喚されて勇者となったあげくに、神々の企みの裏をかいて、魔勇者となった男だ。
 「そうか」と彼はあっさりと納得し。

「ではお前は正確には私の知るコウジではないというのだな?」
「そうだな。コウジとしての記憶はあるが、まんまクローンとも言えねぇな」

 傭兵だったコウジは傭兵のまま死んで、その魂はすでに転生にはいっていると、あのいい加減な神様から教えられた。
 そもそも、このコウジは死なずに生きて日本に帰って、修羅の国中目黒で掃除屋をしていたのだ。さすがにこの中二病の設定は、フィラースに話さなかった。

 それから、幼いジークと出会い死んで、彼と運命の王子とそのパートナーとの契約を結んだおかげで、自分はコウジという身体を得て、この世界に再びやってきたことも。
 これは自分とジークだけの大切な思い出だ。

 だから、他の魔法少女の異世界召喚に巻き込まれて身体を失ったせいで、コウジの記憶と身体のコピーを与えられたのだと、そこらへんはかなりはしょった。

「ではお前は私の知る本当のコウジではない」
「何度も繰り返し言ってるだろう?」
「話してお前は自分の不利益にはならないと言ったが、そうは思わないな。お前が本当のコウジでないと私が知って、ならば不要だと始末されるとは思わなかったのか?」

 「いいや」とコウジは肩をすくめた。

「そもそも、あんたは“コウジ”にさほどの思い入れはない」
「どうして、そう思う? 私の側近にと望んで国に残れと引き留め、この異世界にやってきてからも私は再度、お前を誘ったはずだ。元の世界に共に戻らないか? と」
「それはあんたに自分が無念に死んだ記憶がない、大統領として国を創る希望に燃えていた時の話だろう……ってのは置いておいてだ。
 そうであっても、あんたは傭兵だったコウジに個人的な感情は“多少”あったとはいえ、必要としていたのは“道具”としての能力だ」

 革命を成し遂げて高い理想を掲げて人々を導いてきた男は、その実、目的の為にはコウジのような傭兵も雇うような現実主義者でもあった。
 これからの大国に頼らない政治に困難が伴うことも承知していただろう。けして真っ当なやり方だけでは成功もしないこともだ。





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