どうも魔法少女(おじさん)です。 異世界で運命の王子に溺愛されてます

志麻友紀

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どうも魔法少女(おじさん)です。【3】~魔王降臨!!おじさんの昔のオトコ!?~

【11】綺麗さっぱり忘れる男 その2

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「あんたが俺を引き留めたのは“側近”なんて曖昧な役職で、俺に裏の汚れ仕事をさせるためだとわかっていた」

 短期の契約関係ならば、お互い仕事と割り切れる。しかし、長い付き合いとなれば個人的な関係も生まれるし、感情の齟齬も出てくるだろう。それをコウジは嫌ってはなれた。

「もっとハッキリ言えば、汚れ役なんてのは所詮最後にはすべての責任をなすりつけられて、トカゲの尻尾切りもいいところの末路が見えていたからな。
 いくら報酬がよくたって、そんなものには手を出せねぇよ」
「本当にハッキリ言う。そういうところは、私の知るコウジそのままだな。
 だが、私は個人的にも結構、お前を気に入っていたんだ。さすがに使い捨てて見捨てるなんて考えていなかったさ。
 多額の報酬と永久の国外追放というところだったろうさ」
「それはあの国の大統領だった“甘かった頃”のあんたならな。
 だけど今のあんたは、昔なじみだろうとなんだろうと、不要となれば始末するつもりだった」

 「なぜ、そう思う?」心外だとばかりに黄金の目を見開くフィラースに、コウジは大した役者だとばかり「はっ!」と鼻で笑う。

「あんたは転送で無防備になった俺達に、ためらうことなく最大級の閃光を放ったじゃないか」

 あれが直撃すれば全員確実に即死していただろう。そこに昔なじみのコウジがいる手加減も、短いながらもいままで共に戦ってきた仲間達に対する情けなど微塵もなかった。
 そして、そのことを指摘されてもフィラースの表情には少しの揺らぎもなかった。彼はそれが当たり前のことのように口を開いた。

「だが、その攻撃を自らが盾になって受けて、お前は気を失うだけですんだ」

 そういえばそうだったな……とコウジは思い出す。あの直撃をうけたあとからの記憶がない。

「なんで俺、助かったんだ?」
「本当に覚えていないのか?」

 首をかしげれば、そのままフィラースにまたベッドに押し倒されていた。おい、なんでまたこの体勢なんだ!?

「お前の話からすると、この身体は神が作ったことになる。そのあたりに秘密がありそうだな」

 そこはコウジも少しは思い当たる。あの神様は久々に直接創ったのが自分だと言っていた。
 御使いなんてのは話半分に聞いておいて、やっぱりこの身体は少し、特別製なのか? と思う。
 シャツの裾から再び入りこもうとする手に「おい、冗談はよせ」とコウジは眉間にしわを寄せる。

「あんたは女好きだっただろうが」

 そうこの革命家、なかなかモテた。その上に関係を結んで別れた女に恨まれないという、特異な才能を持っていた。天性の人たらしとも言えるが。

「お前のパートナーである王子が、あれだけの力を持つのもお前に秘密があるかもしれないぞ」

 たしかにジークが子供のときに彼とパートナーとなっていた。その絆が彼に力を与えていたのが、確かではあるが。

「魔力連結ってのは、互いの力が対等で循環させてこそだ。片一方だけ偏ってりゃ、逆にないほうに吸い取られる。
 あいつは元から魔力が高いんだ」

 聖女の肉体をまとってフォートリオンをその魅了の力で奪い取ろうとした女神モルガナは、己の手駒として複数の王子と契約をした。が、女神アルタナによって彼らの魔力が無くなったとたん、一方的に吸い取られて、美しい少女の姿から老婆の姿へと変貌した。

 コウジの言葉に「ほう」とフィラースは興味深いと声をあげて。

「では、あの王子を捨てて、この私に鞍替えするのはどうだ? お前のいうとおりならば、私達はお互いを高め合えると思うのだが」
「断る」
「にべもないな。あの王子がそんなに良いか? 散々に抱かれて身体から馴染んだか?」

 その言い方にカチンときた。拳で目の前の綺麗な横面を張り飛ばしたのは反射的だ。
 以前、ベッドでジークに手を出したことを思い出す。あのときは平手だったのは、やっぱり可愛い恋人に対して手加減していたのだと、自分のことなのに今さら思い知る。
 同時に目の前の男には怒りしか沸かなかった。

「俺が男にまた開いて屈服してると? 冗談じゃねぇ。俺達はそんな関係じゃない」

 ああ、これも同じようなことをジークに言ったな……と思う。
 抱かれるのではなく抱き合うのだと。
 互いに背中を預けて共に戦うものだろう? と。

「この私を殴るとはな」

 あえてコウジの拳を受けた、フィラースは切れた口の端を指でぬぐう。コウジの痩せた両手首を片手でまとめてベッドに縫い付ける。「ぐ……」と思わず声が漏れたのは、その手の力ではない。その全身から発する魔力で全身押さえ付けられたからだ。

「魔族以外の種族どころか、魔族であっても死罪ものだぞ」
「なら俺をお手討ちにでもするか? 魔勇者様よ」
「いや死罪よりも、お前にはもっと有効な手段がある」

 シャツの中に入りこんだ手に、肌を撫でられて背筋にぞくりと悪寒が走る。

「女好きだったお前が根性で男を抱くか?」
「あの王子が散々仕込んだ身体だ。具合はいいのかもしれん」
「まあな。抱かれ慣れていることは認めるよ。お前が乱暴にしなけりゃ反応するだろうし、突っ込まれりゃ感じるかもな」
「そこは認めるのか?」

 淫乱が……と嘲るように笑うフィラースに対し、コウジも侮蔑も隠さずに不敵に、口の片端をつり上げる。「鼻先をくすぐりゃくしゃみが出る。生理的反応って奴だ」と続けて。

「あんたが俺に暴力を振るったところで、その程度のことだ。身体の傷は癒えるし心にはかすり傷一つも残らねぇよ」

 これはセックスではなく単なる暴行だとコウジは言ったうえで、自分は傷つくことはないと金色の瞳を見据える。

「あんたは俺の記憶に一つもひっかき傷をつけることはない。ここを出たらさっさとあんたのことは忘れるさ」
「……残酷な男だ」

 フィラースがコウジの上から退き魔力による圧も無くなる。そのまま彼は部屋を出ていったがコウジはそちらを見もしなかった。
 ベッドに仰向けになったまま、しばらくしてぽつりと漏らす。

「……顔見てぇな」

 誰のことかなんて……。離れて一日もたっていないだろうし、今のことで心細いわけでも、泣きたいわけでもない。
 ただ無性に会いたいと思った。





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