どうも魔法少女(おじさん)です。 異世界で運命の王子に溺愛されてます

志麻友紀

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番外編

王配様の一日 夜※

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 王子様の王子様は毎日元気だったが。
 若い王様の王様も毎日元気だ。
 まあ、若いだけに。

「そう考えると、おじさんの歳も考えて欲しいんだけどなぁ」

 王宮の夫夫の寝室は一緒だ。一応、王配の部屋はあるのだがそこには寝台はない。いや、あったのだがこの若い王様が「必要ない」と撤去させてしまった。
 つまりおじさんは、夜になれば王様と一緒の寝台でおねんねだ。
 シャワーを浴びてガウンをひっかける。ベッドサイドのテーブルに用意されている寝酒をちびちびやってると、あとから風呂を使ったジークが来た。一緒に風呂に入るときもあるが、その場合は風呂でことに及んで、そのままベッドになだれこむ。

 それだと寝酒が楽しめないので、コウジ的にはあまり面白くもない。酒が好きではないジークはなんとも思わないようだが。ちなみに好きでないだけで、この男はザルだ。弱くもないがほどよく酔っぱらうコウジとすれば、酒の味もわからないで飲めるなんてうまい酒にたいする冒涜だと思うが。

「飲むか?」
「戴こう」

 今日はそういう気分らしい。とはいえコウジのために用意されている寝酒は一つしかないのだが……構うことなく自分のグラスを手渡すと、一気に飲み干されてしまう。

「おいおい、折角の酒が可哀想だろう。もっと味わって呑め……っわ!」

 グラスをことりとテーブルに置くと、その手がコウジを寝台へと押し倒す。
 だいたい、この男が寝酒をもらうといったときは、自分がちびちび呑むそれの“待て”が出来ないときなのだ。だからコウジの酒をさっとと呑み干して、彼を寝台に押し倒す。
 わかっていて「呑むか?」と聞く自分も自分なのだが。

「何があった?」

 素直に押し倒されて、ちょっと半乾きの鏡のような銀髪をくしゃりと撫でてやる。前髪の降りた顔は、年相応の若造だなと思う。
 そういう若い王を災厄を退け国を三度も救った英雄ではあるが、まだまだおわかりになりませんな~などとあなどる輩は宮廷には多いのだ。改革が進んで旧勢力の貴族共の力が弱まったとはいえ。
 いや、だからこその最後の悪あがきの最中というべきか。

「辺境警備隊だが軍隊経験もない冒険者だけでは、統率が取れないだろうと、各部隊をまとめる上官は軍務経験があるものから出したほうがよいと、名を連ねた推薦状を提出された」

 コウジのひたいにこめかみに、頬にと口づけながらジークが話す。こういうときのこいつの唇は器用だなぁと思う。

「それでその軍務経験者とやらは“現役”なのか?」

 軽く唇を重ねながらコウジは訊いた。部隊長に推される軍務経験者となればすべては貴族だろう。

「いや、すべて退役したものばかりだ。軍務についてないのだから“ちょうどいいだろう”と」
「なるほどな。辺境警備隊の詰め所を年寄りどもの茶飲み場にするつもりか」

 実際の魔獣討伐は冒険者どもにまかせて、上官の自分達は現場にも出ずに上から指図しているだけでいいという、魂胆が丸見えだ。
 それこそあの酒場で出会った正直者のように、軍に入ったが、働いた手柄はすべて貴族の坊ちゃまにとられたと、ぼやいていたとおり。
 改革される以前の軍ではそれがまかり通っていたのだ。とはいえ、新王の体勢となった今の軍ではそうはいかない。

「なんてこたえて……やっ…た……?」

 首筋をたどり、喉の凹凸を唇ですっぽり覆われて、コウジは息を呑みながら……たずねる。まったく男の印であるそこが、そんなに気に入りなのか? それはそれで、この男のおじさんがいいんだ……といわれているようで、こそばゆい気分となるが。

「辺境の魔物討伐の先頭に立って戦うとなれば、退役してしばらくたって鈍った“カン”を取りもどしてもらわねば困る。
 “入隊希望者”は冒険者達と同じ条件で、一月基本的な教練を受けてもらうと」

 「そりゃいい」とコウジはくくく……とわらった。退役して腹も出た男達が、現役の冒険者とならんでひいひい駐屯所の広場を走り回ったり、へっぴり腰で木の剣を振るうかと思うと。

「で、奴らはなんと?」
「午前の会議が終わって、午後になってすぐに推薦を辞退するとの書面がそろって届いた」

 「傑作だ」とコウジは薄い腹を震わせて、ひひひ……と声をあげて笑う。その脇腹を大きな手でなぞられて「ん……」とのけぞる。

「お前も人がいいな。そんなもの先にいわないで“入隊”を承知しておいてから、教練に放り込んでやりゃよかったのに」
「時間と費用の無駄だ」
「いえてる」

 くくく……とさらに笑う。胸まで降りてきた青年の頭をなでてやりながら。

「で、それとは別になんだ?」

 古い体制にいまだしがみついて、若い王に隙あらば少しでも自分達の利権を……などと考えている輩とのやりとりは日常茶飯事なのだ。だから、今夜、こんな性急に自分を求めるには、まだなにかあるはずだ。

「長老達に準妃制度の復活を求められた」

 『やっぱり』と思うが声に出せなかったのは、胸の乳首をそのあとキツく吸われたからだ。そこは、毎日のようにジークがいじくりまわしてくれたおかげで、立派な性感帯だ。
 しかし、愛妾ではなく、準妃の復活とはよくまあジークの逆鱗に触れるのを承知でいえたものだ。

 前王の時代までは、正妃の次に準妃という制度があり、王は二人の妃を持つこととされていた。王国の初代聖王グラフマンデが二人魔法少女をパートナーにしたことから、その二人ともを妃とするのが始まりといわれているが。
 しかし現王のジークは自分の配はコウジだけと神殿にて誓いを立てている。準妃どころか生涯愛妾も持つことはないと。

「お前に直訴するなんて、英雄の血を絶やしたくないと爺さん達も必死だな」
「まさか、あなたのところに?」

 胸から顔をあげてジークの剃刀色の瞳がコウジを射るように見る。そのクセ、手は肉のない尻を揉んでさらにアヌスをなぞり、指をいれてきやがったよ……こいつ。これでしゃべれと? 

「ん…んぅ……お前にそれとなく勧めて…くれっ…て……な……」

 深刻な顔でやってきたのは前王の重鎮だった長老達だ。この国の貴族全員が腐っているわけではない。もちろん己の血に誇りを持ち、高貴な生まれとしての責務を果たそうという志の者達もいる。

 だからこそ彼らは王家と尊い英雄の血にたいして信仰に近い想いがあるのだろう。

 王のあなたに対する想いは変わられることはないと……彼らはいった。しかし、英雄王のお血筋を一代で絶やすのはあまりにも、国の損失であると。
 借り腹に欠片ほど愛情もおかけになる必要はない。ただ胤を植え付けてくださるだけどいいと……そう王配であるあなたから、若き王に勧めてくれと彼らはいった。
 まあ、ジークにはそんな細かいことまではいわない。というか、もうコウジにはまともに言葉を話すよゆうがないというか、指で弱い場所をぐちゃぐちゃにかき混ぜられているわけで。

「それであなたはあの老人達になんと?」
「出来ねえ……って……断っ…たよ……! も、早く、ツッコめ……あああっ!」

 灼熱の棒に胎内を貫かれて、歓喜の声をあげる。あとはもう、お互い腰を揺らし、口づけをして舌もなにもかも絡ませて、混ざり合うのみだ。



「……お前にさ、抱きたくもない相手を抱けなんて、俺がいえるかよ」

 さて、今夜も一回、二回、三回……まったく元気だな。夢うつつ。ジークの腕枕でコウジは落ち掛けた意識の中つぶやく。
 それでも昔はこいつは若いし英雄だし、いずれは似合いの令嬢を嫁にすれば、自分は潔く身を引いてなんて考えていたこともあった。
 それで大げんかになったこともあったな……なんて苦笑する。
 だけど、いまやおじさんの自分が王配様だ。このハンサムと結婚なんて、いまだなんの冗談かと思うが。

「抱きたくもない相手を抱いて、それで子供が出来たって、その相手も子供も、なによりお前が不幸だ」
「それをいうなら、あなただって不幸になる。私はいやだ」

 半分夢に入りかけのなか、ひたいに唇の感触。まったくおじさんのデコにチューするか? いや、まあ無精髭に頬ずりするからな。この王様。

「ま、本音言えば、俺が嫌なんだよ。お前が他の奴抱くなんざ」
 国を憂える老人達のいい分をくわえ煙草で、へらへら笑いながら聞き流したが、コウジの胸の奥底から沸いたのは、じりじりとした嫉妬の炎だ。
「誰にも渡したくねぇよ」
「それは私もだ」

 そんなやりとりをして意識は沈んだ。



 そして翌朝、また「今日はなにをする?」と聞かれて、コウジは夢うつつで「ふわふわした奴」とでも答えるのだろう。





   END



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