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【58】蠢く陰謀
しおりを挟む第三騎兵団が高速列車にて、王都中央駅に着いた。その場に待ち構えていたのは魔王討伐に成功した歓待の王都民ではなく、近衛騎士団の白い制服であった。
「ダンダレイス・ クライゲラヒー・モーレイ殿下、あなたにレジナルド・アンソニー・ハロルド・メイス殿下、謀殺の容疑がかけられている。ご同道願おう」
片腕を無くし、袖を翻した姿のローマンの言葉に第三期兵団の者達がざわめく。
「ローマン、一体なにふざけたこといってやがる!」
この近衛の副団長と魔王との戦いで知己となったツイロが声をあげ、前に出ようとするがそれをダンダレイスが腕を横に伸ばして阻んだ。
「わかった、行こう」
「団長!」と団員達から声があがるが、ダンダレイスが「全団は駐屯所にて待機!」と命じれば、それに逆らうことは出来ない。全員胸に拳をあてて「イエッサー!」と返事をする。
ただ、団員ではないアルファードはそダンダレスをじっと見上げた。彼は視線を下にふっと微笑んで「あなたもみんなといてくれ」とちょいちょいと指でひたいを撫でて告げる。「わかった」とアルファードもうなずく。
白い近衛の軍服に囲まれて去って行く、緑の軍服の長身をアルファードは見つめ、きびすを返した。
◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
「納得が出来ません」
王宮にある近衛の詰め所にて、その副団長の執務室に近衛幹部の騎士達が集まり、ローマンに詰め寄っていた。
「宰相命ですから、私達はダンダレイス殿下の身柄の拘束にそれでも従いました」
宰相命は王命に次ぐものだ。近衛の軍人としては、その署名があれば従わねばならない。
「しかし、魔王との戦いに参加した我らは知っております! ダンダレイス殿下がレジナルド殿下を謀殺などとありえません! 我々の力足らずで殿下をお守り出来ず……」
代表で口を開いていた近衛の男が下を向き、それ以上言えずに肩が震える。執務机越しにローマンは口を開く。
「私もレジナルド殿下をお守り出来なかった一人だ。そしてあの場にいることさえ出来なかった」
ローマンの言葉に全員が、服の袖が垂れ下がったままの中身のない左腕を見た。
「だから、殿下の死の真偽を見たわけではない」とのローマンの続けての言葉に「しかし!」近衛の一人が反論しかける。その残された右手をあげて、ローマンは彼を制した。
「貴殿等の話を信じていない訳ではない。王家に忠誠を誓った者達を疑うものか」
微笑を見せたローマンに近衛の騎士達はほっとした顔になる。次にローマンは気難しく眉間に皺を寄せ。
「しかし宰相命は発せられた。ダンダレイス殿下の身柄は王宮にて一時預かりとなる。もちろん、貴殿等の証言があれば宰相殿とて、すぐに間違いに気付かれてダンダレイス殿下を解放されるだろう」
だから心配はない。これは手続き上必要なことだったのだと続け、ローマンは団員達を執務室から送り出した。
「……これでよろしゅうございますか?」
団員達が去ったあと、ローマンが声をかければ奥にある部屋の扉が開いて、出てきたのは小太りの宰相ストルアンに、キャスリーン公爵夫人。そして、その横にはどこか虚ろな表情をしたヒマリがいる。
そして、マントのフードを被った男。その男の膝元にローマンは片膝をつき、胸に手をあて騎士の最敬礼をする。
「ああ、よくやった、ローマン。お前の忠誠嬉しく思うぞ」
フードの内側、赤く光る瞳でレジナルドは己の部下をねぎらった。
「近衛の者達はそのまま上手くごまかしておいてくれよ、副団長殿」
と、口を開いたのはストルアンだ。「なに、私がごねてダンダレイス殿下の拘束が長引いていると、悪者にしてかまわないさ」と声をひそめて笑う。
「そのあいだにわたくしの可愛いレジナルドの謀殺の嫌疑をかけられたまま、あのダンダレイスは病死ってわけね」
開いた扇の内側でその笑みをかくしながらキャスリーンがいう。
「豪奢な貴賓室で出された豪華な昼食にも、ティータイムのお菓子にまで一切手我付けなかったというけれど」
彼女のいう“豪奢な貴賓室”とは王族や上位貴族が王宮にて拘束される際に使用される専用の牢獄のことだ。監獄塔のてっぺんにある部屋は、内装は豪奢であるが、部屋から見える普通の扉の外側からは鉄格子の二重の扉がつき。さらに窓にもはめ殺しの格子がはまっていて脱出不可能なつくりだ。
「まあ、毒を薄く混ぜた水まで飲まないのでは、あの頑丈そうな無駄に大きな身体でも、どこまで持つのかしら、王子が王子を謀殺したなど王家の恥。とりあえずは病死と発表すればよいでしょう」
「そのあとに私が“神の祝福”により復活したと宣言を聞けば、王国は歓びに包まれるでしょうね」
キャスリーンの言葉に、レジナルドは虚ろな表情のヒマリの頭をなでてフードの内側で邪悪な笑みを見せた。
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