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【16】ぶち切れて脱いだ!
しおりを挟む魔法の弾らしく、光輝くそれが触れた瞬間に火球が爆発して霧散する。それに内心で驚いたのは、当の本人のジョウだった。
────こりゃ、銃の威力じゃねぇな。バズーカー砲か?
『ま、魔法だしいいか』とジョウはシグアンを「見たか!」得意げに振り返る。
「お前なんぞに構ってもらわなくても、自分の身ぐらい自分で守れる!」
「まだある! 後ろを!」
「わかってるって!」
叫ぶシグアンに唇の片端を上げて笑う。ごおおっと音を立てて後ろから飛んできた火球の最後の一発に、ノールックで銃をぶっ放して、破壊する。
「どわっ!」
「危ない!」
しかし、格好付けもそこまでだった。
片手で銃口を後ろに向けたときに、一歩前へと踏み出した。そのときに長衣の裾を踏んづけてずっこけそうになったのだ。
「だから調子に乗るな」
「……っ!」
シグアンに抱きとめられて、その厚い胸板に顔を埋めて、ジョウはかあっと頬を熱くする。恥辱が怒りに直結するのが極道? だ。
「……のせいじゃねぇ!」
「ん?」
「俺のせいじゃねぇ! このずるずる長いのが悪い!」
神官達と同じ床に付くような長衣はおよそ戦いには向かないのだ。シグアンの黒衣は膝丈あたりだが。
ジョウはこんなものとばかり、衣の合わせを開いて上着を脱いで、上半身裸となった。下はゆったりしたパンツだ。
そうして、怒りのままに衣を地に叩きつけようとして、なぜか躊躇してその手が止まる。くるくると巻いて帯とまとめて地面にそっと置いた。
「こいつも邪魔だ!」
そして履いていたサンダルも脱ぎ捨てる。動くたびに素足にざらざらと砂が入りこんで、不快なことこの上ない。
シグアンの足元はしっかりとブーツだ。今度から自分も用意してもらおうと思う。
サンダルはぽいぽいと放り投げて、これで自分も身軽だぞとばかりにシグアンを見れば。
「油断するなよ」
その口許には呆れた様な笑みが浮かんでいる。この若造め! 俺のことを世話の妬けるガキみたいな顔で見やがって! と思う。
「そんなものするわけねぇよ!」
その直前にずっこけたことなど、彼方に放り投げてジョウは返した。
戦いは続く。
獣はシグアンとジョウを分断するように、その大きな身体で飛びこんできた。二人は跳んで離れる。
火球は通じないと学習したのだろう。獣がブンと大きな風圧とともに振り上げたのは、長い……蠍の尻尾だ。真っ黒いもやみたいな姿だが、毛がふさふと生えている胴体に、は虫類の尻尾とは、顔半分の目玉といい、なんともキモい。
さらにその尻尾には凶悪なとげとげが無数についていた。人間の胴体ぐらいの太さの凶悪なそれが、鞭のように振り下ろされる。
ジョウの白い顔に影が射す。彼は避けようとしなかった。獣の大きな身体越し、向こうにシグァンの不機嫌そうな顔があった。
じっとこちら見ている。ジョウになにかあれば飛びこんでくる気なんだろう。
────だから、そこで見てろ!
デカい獣の身体ごし、にやりと不敵に笑う。
だいたい、あちらでも巨大な頭が、これまた巨大な口を開いて、ぱっくり開いて白い短髪の頭を丸かじりしようとしていた。
────そいつを囓ったら、激辛風味に火を噴くんじゃないか?
そんなからかいを腹でつぶやくぐらいにジョウに余裕はあった。
根っからの極道。恐怖心なんて母親の胎のなかに置いてきたんじゃないか? と言われてはいたが。
それでもこんな非常識な化け物相手でも恐怖を感じないのは、その化け物の巨体の向こうにむっつり顔の男がいるせいだろう。
心は妙に凪いでいた。
ジョウに蠍の尻尾が振り下ろされるのと、乱杭歯の巨大な口がシグアンを呑み込もうとしたのは、同時だった。
ヒュンと木剣が風を斬る鋭い音と、銃声が響く。
そして、巨大な首が宙を飛ぶのと、尻尾が途中から爆発するように切断される。
二人は木剣と銃を構えたままだ。首と尻尾を切り離された獣だが、いまだ胴体は倒れることなく立っている。
尻尾はともかく、首を刎ねられたら普通生き物は死ぬもんだ。アメーバーとかは別か? とジョウは思うが、こんな巨大なアメーバーなどいない。いや、こっちの世界にはいるのか? いや、それでも四つ足の獣の姿はしてないだろう。
こっちの場合はアメーバーじゃなくてスライムとかか? とつらつらどうでもいいことを思っていると。
「来るぞ、おジョウ」
「だから、その呼び方はするな……と」
ジョウが言いかけて止めたのは。
「きもっ!」
思わず叫んだ。恐怖ではないおぞましさに、ぞぞぞと背に悪寒が走る。
なんと残された胴体の身体中に、例の獣の顔半分にあった、目が出現したのだ。赤に青に黄色の派手なネオンだな~なんて言ってられない。
その上に、その目は四方八方に火球を打ち出したのだから。
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