グレースケールとマチエール

Submissivedog

文字の大きさ
2 / 2
高橋 翠の場合

縦と横の日常

しおりを挟む
ピピッという音とともに、僕の意識は覚醒へと引っ張られる、昨日の非日常から強制的に両腕を引っ張られて日常と向き合わなければならない。

『6時30分、起床時刻ですマスターカーテンを開けますのでウォーキングの準備をなさってください。』
「ぅん…わかってる…」

動きたくないと反抗する身体を無理やり起こしながらひとつあくびをして、それなりにベッドメイキングを終え服を軽装なものに着替えて、一階に降りてリビングにおいてあるポットでお湯が沸くのを待ちつつ、戸棚からお気に入りの紫の缶を取り出しはちみつとミルクを手早く出してティーカップに茶葉を添えて、熱湯で香りを楽しみ十分な量を濯いだら金色の水滴を一つ落とし白を加えて仕上げにはちみつで光沢を出す。これを少し時間をかけて飲んだ後は30分のウォーキングに踏み出し、近場の公園、川沿い、カフェと回って寮に帰ってきて軽くシャワーを浴びるのが僕の日課。今日は授業が一限目からあるから、用意しておいた服を着てリュックを背負って朝ごはんを食べながら大学へ向かう。牛乳パックとサンドイッチだからいつも食べやすくしてくれる厨房の人にはいつも感謝しているし、美味しいのだから本当に頭が上がらない人でもある…この前は雨で風邪ひいたらおかゆなんて用意してくれた。
「今日帰れるのは夕方か…お昼何にしよう」
一日というのもあっという間で、教室移動なども含め教授の一日のまとめなどしていたらすっかりお昼時になっていたので、学食の山菜うどんと辛子明太子おにぎり一つを頬張っていると同じクラスの吉田 玲がやってきて隣で食べ始めた。

「おー、高橋お疲れ様~!人多いから見失って焦ったわぁ」
「お疲れ様、今日は一緒に食べれて嬉しいよ」

カツカレーとサラダをもりもり食べる様を見て、今日も元気だなぁと考えているうちに僕もぺろりと食べ終わると玲も食べ終わってごちそーさん!というと一緒に返却口に食器を返して、一緒に心理学の授業を満腹の眠気に耐えつつ夕方になるまで必修と選択の授業を終え、あとは静かな場所か自習室で勉強してあーでもない、こうでもないって話しながらなんとか解いてそのあとは途中まで一緒に帰って家に帰る。そんな日常が僕の毎日で変わり映えのないのが、たまらなく寂しい時もジワリと暖かくなる時もあって、今日は帰りに本格的な卵サンドイッチのふわふわなものを携えて帰ってきた。冷蔵庫にあるオレンジジュースをグラスに注いでこっそりと頬張って、夕ご飯までのつなぎにして今日出たばかりの課題に取り掛かる。今日出た問題であるとか知識だとかは、当日に入れておかないと先延ばしにして痛い目を見るし、不安なことはない方がずっと楽しく過ごせる。
夢中で課題をしていても、やはり集中力は切れてしまうもので…7割程度終わってくると身体の巡りも呼吸も悪くなってくるので、一度椅子から立って背伸びして気の抜けた声を出して緊張をほぐすのが地味な楽しみでもある。

「んんっ……んぅぁ…!」

一気に脱力して薄目で天井を見つめ、すっと水に溶けるような感覚で目を閉じて感覚に身を任せる。一気に全身の血のめぐりがよくなったような心地よいじわじわとくる刺激に何となく笑みを浮かべながらちらりと時計に目をやるとすっかり夕食の時間になっていた。この量では自分で好きな時間食べれるように、あとはレンチンすればいい状態でプレートに乗っていたりセルフサービスになっている便利な形式になっている。そろそろ食べておこうかな、と席を立ってて階段を下りて自分の名前の書いてあるプレートを受け取ってレンチンしながら今日のお味噌汁とご飯をよそってお茶とかも入れているうちにすっかり温めきって丁度いい感じに食べ時になるのだ。
今日はガーリック強めの塩コショウのシンプルな味付けのされたハンバーグ、海藻サラダ、ブルーベリーヨーグルトにきゅうりの漬物…暖かいご飯とわかめベースのお味噌汁が今日一日の終わりをいやすように胃を占領して、満たしていく感覚はなかなか素敵な感覚だ…食べきってしまうのはあっという間で、食器を洗いつつ部屋に戻って残りの課題を済ませて置きあとはお風呂掃除をして…お湯を貯める間に床に運動用のカーペットをひいて程よく疲れさせるために筋トレとストレッチして程よく息があがったところで、念のために部屋の鍵が閉まっているのかどうかの確認とお風呂のお湯を止めて今日はラベンダーの香りがする入浴剤を湯舟にそっと手放してあとは、いつものことをするだけ。毎日いろんなことで人はストレスと不安定な場所に挟まれてまとわりつかれて生きているのだから、抜け出すために様々なことをするけれど僕の場合は”これ”になる…カーペットにそっと横になるとヘッドホンをつけてタプタプと音を鳴らしながら動画を開く。
ほんの少しの静寂があった後に耳を重点的に、聞かせるような通り抜けるゾクゾクとした感覚に思わず身体をびくつかせながら緊張気味の自分を落ち着けさせるためにつばを飲み込んで、再び動画の内容に聞き入る。その耳に届く声は深くて低くて、夏にとても濃く香る金木犀のようなむせかえりそうなほどに甘くて酔いしれないなんて考えられないこの感覚がたまらなく高揚させるいわゆるASMR、本当に知らない誰かでも声だけは確かに側にいて自分のすべてを見透かされて弄ばれつつも声の主という名の暖かく力強い腕の中という檻の中の箱庭を感じることができる…誰にも頼ったり弱音を吐けない自分にとっては唯一の救いであって、貯め続けたすべてをようやく解き放てるような場所である。甘やかすような声で囁くうちに自分の値踏みをさてつつ、確実に落そうとしているとわかっていながらも逃れられない矛盾に焦がれながら、自分でそれとなく熱くなった部分に触れているうちに口が半開きになって、どんどん脳内で今ある情報に様々な欲望を肉付けしていって自分のくすぶるものを早急に運んでいく。まるでそこに空いたバケツを一生懸命走って別の場所に届けるようにしながらかけていけるように段々脳内でびりびりとした感覚で包まれていって、時期に身体のこわばりを感じながら喉から漏れそうな声を必死に抑えてカーペットにぐったりと転がる。長距離を走り切った時のような高揚感にひたりつつ常備している水をある程度飲み切ってしまったらあとは頭からつま先まできれいにしてしまえば、あとはゆっくり湯船でついさっきのことを思い出してじわりとあつくなるところを頭を振って忘れるようにしてぶくぶくと水面を揺らして、さっきの気持ちを吐き出しきっていく。あとは寝るだけ、これが僕の日常人は必ず隠しているものはあるこれがばれるとかなんだとかあってはならない、僕としての存在を守るためにも必要なことではある。
髪やら歯磨きやら明日のために準備を終わらせてしまったら、あとは寝てしまうだけだが明日は夕方にバイトで書店に行くくらいしか予定がないので遅めに起きてしまおうかなと思いつつ、時間まで図書館でいろんなものを読み漁りたいななんて考えているうちに、アラームをすべてオフにしてから部屋に差し込む光を見つめながら眠りに落ちた。くすぶる何かに気づかないように落ち着けるようにと勤めていないと、自分の中に飼う何かが出てきそうになるのが怖くなる。さっきまで耳に籠った燻っている声の甘さの余韻、それのせいかこの夏40度なんていくこの国をさらに暑くさせるようなものを聞いたからか変な夢を見た気がするがそっと鎮火した

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

壁乳

リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。 最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。 俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 じれじれラブコメディー。 4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。 (挿絵byリリーブルー)

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...