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7. ヤキモチと宣言 - ②【最終話】
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エリーゼが王太子妃候補になり得るのか、という疑問について、翌日俺は早速殿下に聞いてみた。
殿下は青い目を丸くして瞬きしていた。今日の殿下は淡い色の服を着ていて、ふわふわした雰囲気で妖精みたいだ。
「うーん……エリーゼがいいなら?」
「えっ?!」
俺は血の気が引いた。さっと殿下の後ろに立っているエリーゼの顔を見ると、エリーゼが小さくため息をついた。
「殿下、チャールズを揶揄わないでください」
「揶揄ってないよ」
「その言い方では、チャールズは殿下にその気があると誤解します。はっきり可能性はないとおっしゃってください」
殿下は楽しそうに笑った。俺は全く楽しくない。
「誤解させちゃったならごめんね。エリーゼは絶対了承しないから可能性はないって意味だよ。エリーゼは僕のこと嫌いだし」
「えっ」
エリーゼが無言で目を見開いた。
「ね、エリーゼ」
殿下が尋ねると、エリーゼは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「それは……」
「そんなことないです!」
俺は思わず殿下のデスクに両手を付いて抗議した。
殿下は目をまん丸にして驚いていた。
「失礼しました!あの……エリーゼは、確かに昔は殿下に感謝できなかったみたいですが、それをすごく後悔してるし、今は殿下のことが大好きです!そこは疑わないでください。エリーゼも、俺も、殿下のことを心から慕ってます!死ぬまで仕えます」
殿下は何度か瞬きした。
「そうなの?ありがとう」
殿下は俺に礼を言うと、エリーゼの方を振り返った。
「エリーゼはもう僕のこと嫌いじゃないの?殺そうとしてなかったっけ?」
「殿下はいったい何年前の話を……。はい、その……」
エリーゼは少し気まずそうにした。殺したいほど憎んでいたとは言っていたけど、まさか実行しているとは思わなくて驚いてしまった。
エリーゼは何か覚悟したような顔をして殿下と目を合わせた、
「私は今は殿下を心から尊敬していますし、お慕いしております。死ぬまで仕えます」
「そうなんだ」
殿下は本当に驚いているようだった。ルイが殿下を大好きなことは騎士団では有名な話なのに、殿下の耳には入っていなかったのだろうか。
「私は、殿下が、個人情報を詐称しただけでなくご自身を憎んでいるはずの私を秘書官につけたことに驚いております。なぜそんな危険なことを」
「だってエリーゼがいないと困るから」
殿下は困ったように笑った。エリーゼは信じられないものを見るような顔をしているが、多分内心は、そこまで必要とされていることを喜んでいると思う。
誤解が解けて本当に良かった。
良かったなぁ、と思ったが、俺が心配していたことは全く解決されていないことに気付いた。
「はっ、待って……!ってことはやっぱり、殿下は本当はエリーゼを妃に迎えたかったんですか?!」
「え?うーん、エリーゼと僕って夫婦って感じじゃないよね。今の関係の方がいいんじゃないかな」
「本当ですか……?」
「殿下、チャールズを揶揄うのはやめてください」
殿下は、ははっと声を出して笑った。俺を揶揄っているというなら構わないけれど、殿下は俺を気遣っているだけで、本当はずっとエリーゼのことを気にかけていたのではないか、という気がしてきた。
気にかける気持ちが恋愛的な意味かどうかは分からない。ただ殿下が自分の意思で、個人的に連れてきた臣下はルイだけのはずだ。
特別なのは間違いない。
殿下は俺をじっと見つめた。
「ルイじゃなくてチャーリーが女の子だったらプロポーズしてたかも。明るくて元気で、一緒にいると楽しい気持ちになれるし」
「えっ」
「ときめくな。殿下、もう、お戯れはそのくらいに……」
「ははっ、チャーリーもエリーゼも可愛くて大切な臣下だよ。僕も二人のことが好き。これからもよろしくね」
殿下は俺にもエリーゼにも優しく微笑みかけた。
エリーゼは軽く目を見張って、居心地が悪そうにした。
ときめいてる!俺にはときめくなって言ったのに自分は照れてるし喜んでる!
理不尽だ。
殿下は楽しそうに笑っている。
殿下が楽しそうだと俺も嬉しい。でもエリーゼをときめかせるのはやめてほしい。
エリーゼは、俺の前ではこんな、照れてそわそわしている姿は見せない。
複雑な気持ちでエリーゼを見つめていると、エリーゼは俺の視線に気付いて困ったように笑った。可愛い。
可愛いから一瞬で許した。
許したけど、今日の夜は、殿下のことを考えられないように、頭が真っ白になるまでぐずぐずにしてやろうと心に決めた。
殿下は青い目を丸くして瞬きしていた。今日の殿下は淡い色の服を着ていて、ふわふわした雰囲気で妖精みたいだ。
「うーん……エリーゼがいいなら?」
「えっ?!」
俺は血の気が引いた。さっと殿下の後ろに立っているエリーゼの顔を見ると、エリーゼが小さくため息をついた。
「殿下、チャールズを揶揄わないでください」
「揶揄ってないよ」
「その言い方では、チャールズは殿下にその気があると誤解します。はっきり可能性はないとおっしゃってください」
殿下は楽しそうに笑った。俺は全く楽しくない。
「誤解させちゃったならごめんね。エリーゼは絶対了承しないから可能性はないって意味だよ。エリーゼは僕のこと嫌いだし」
「えっ」
エリーゼが無言で目を見開いた。
「ね、エリーゼ」
殿下が尋ねると、エリーゼは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「それは……」
「そんなことないです!」
俺は思わず殿下のデスクに両手を付いて抗議した。
殿下は目をまん丸にして驚いていた。
「失礼しました!あの……エリーゼは、確かに昔は殿下に感謝できなかったみたいですが、それをすごく後悔してるし、今は殿下のことが大好きです!そこは疑わないでください。エリーゼも、俺も、殿下のことを心から慕ってます!死ぬまで仕えます」
殿下は何度か瞬きした。
「そうなの?ありがとう」
殿下は俺に礼を言うと、エリーゼの方を振り返った。
「エリーゼはもう僕のこと嫌いじゃないの?殺そうとしてなかったっけ?」
「殿下はいったい何年前の話を……。はい、その……」
エリーゼは少し気まずそうにした。殺したいほど憎んでいたとは言っていたけど、まさか実行しているとは思わなくて驚いてしまった。
エリーゼは何か覚悟したような顔をして殿下と目を合わせた、
「私は今は殿下を心から尊敬していますし、お慕いしております。死ぬまで仕えます」
「そうなんだ」
殿下は本当に驚いているようだった。ルイが殿下を大好きなことは騎士団では有名な話なのに、殿下の耳には入っていなかったのだろうか。
「私は、殿下が、個人情報を詐称しただけでなくご自身を憎んでいるはずの私を秘書官につけたことに驚いております。なぜそんな危険なことを」
「だってエリーゼがいないと困るから」
殿下は困ったように笑った。エリーゼは信じられないものを見るような顔をしているが、多分内心は、そこまで必要とされていることを喜んでいると思う。
誤解が解けて本当に良かった。
良かったなぁ、と思ったが、俺が心配していたことは全く解決されていないことに気付いた。
「はっ、待って……!ってことはやっぱり、殿下は本当はエリーゼを妃に迎えたかったんですか?!」
「え?うーん、エリーゼと僕って夫婦って感じじゃないよね。今の関係の方がいいんじゃないかな」
「本当ですか……?」
「殿下、チャールズを揶揄うのはやめてください」
殿下は、ははっと声を出して笑った。俺を揶揄っているというなら構わないけれど、殿下は俺を気遣っているだけで、本当はずっとエリーゼのことを気にかけていたのではないか、という気がしてきた。
気にかける気持ちが恋愛的な意味かどうかは分からない。ただ殿下が自分の意思で、個人的に連れてきた臣下はルイだけのはずだ。
特別なのは間違いない。
殿下は俺をじっと見つめた。
「ルイじゃなくてチャーリーが女の子だったらプロポーズしてたかも。明るくて元気で、一緒にいると楽しい気持ちになれるし」
「えっ」
「ときめくな。殿下、もう、お戯れはそのくらいに……」
「ははっ、チャーリーもエリーゼも可愛くて大切な臣下だよ。僕も二人のことが好き。これからもよろしくね」
殿下は俺にもエリーゼにも優しく微笑みかけた。
エリーゼは軽く目を見張って、居心地が悪そうにした。
ときめいてる!俺にはときめくなって言ったのに自分は照れてるし喜んでる!
理不尽だ。
殿下は楽しそうに笑っている。
殿下が楽しそうだと俺も嬉しい。でもエリーゼをときめかせるのはやめてほしい。
エリーゼは、俺の前ではこんな、照れてそわそわしている姿は見せない。
複雑な気持ちでエリーゼを見つめていると、エリーゼは俺の視線に気付いて困ったように笑った。可愛い。
可愛いから一瞬で許した。
許したけど、今日の夜は、殿下のことを考えられないように、頭が真っ白になるまでぐずぐずにしてやろうと心に決めた。
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