【R18】悪役令嬢(俺)は嫌われたいっ! 〜攻略対象に目をつけられないように頑張ったら皇子に執着された件について〜

べらる

文字の大きさ
6 / 6

06 俺、あやうく絆されそうになる

しおりを挟む
 数時間後、俺は巨大なキングサイズのベッドの上で目を覚ました。しかも隣には、なぜかガウン姿のイルフィール皇子。色気がムンムンである。
「気付いたかい。体は平気?」そんな事をあっけからんと言う皇子殿下に、俺は一発殴らせろと言いたかったのだが、それを言う前に胸に軽くキスを落とされ、しばらく体を触られ続けた。一番びっくりしたのは、あれだけ皇子に好きなようにされたあとなのに、まだ物足りなさを覚えている己の体だった。

 そのあと聞かれたのは、やはり精霊祭の話。
 どうやら皇子は、まだ俺と一緒に踊ることを諦めていないらしい。

「僕が悪い男だって分かったでしょ? ちょっとは考え直してくれた?」

 さっきからずっとそんな風に言われて、胸を下から上に緩慢に揉みこまれている。耳もとで囁かれる。最初こそ、私は約束した相手がいます、と断り続けていたのだが、だんだん皇子のスキンシップが激しくなり、またさっきの続きをしそうな雰囲気になってしまった。

(第二ラウンドは困る……!!)

 正直にいうと、さっきのアレは気持ちよかった。
 とんでもなく気持ちよかった。
 だからこそ、クセになってしまいそうな予感がしたのだ。

 このままだと、高潔な悪役令嬢シスベルティアという大事なイメージが崩れてしまう。

「わ、分かりました! 分かりましたから、とにかく私の胸を揉んだり吸ったりするのはやめてくださいまし!! 皇子としての自覚を持ってくださいませ……!!」
「え、じゃあ一緒に踊ってくれる?」
「殿下に嘘をつきました。……本当は、先約がある、というのは嘘なんです」

 てっきり、ウソを吐いた事を責められると思ったのだが、皇子は「ああ、それのことね」と笑っていた。

「もちろん、ウソだって分かっていたよ」
「へぁ!?」
「あれ、覚えてない? 僕に抱かれている時、その手の質問をいくつかしたんだよ。その男の容姿は、とか、同級生なのか、とか。でも君の回答には一貫性がなかった」

 ……そういえば、俺が意識朦朧としているときに、皇子が俺の体をまさぐりながら、そんなことを聞いてきたような……気がしないでもない。行為が激しくて覚えていない。

「安心したよ。君がまだ誰のモノにもなってないって分かったから」

 へぇ……はぁ……さようでございますか。

(あぁ……やっぱこいつ、俺に惚れちゃってるなぁ)

 俺だったからよかったものを、惚れた女に媚薬飲ませて抱きつぶすか普通。腹上死するかと思ったぞ。

(しっかたねぇな、これもシスベルティアが魅力的過ぎるって話だしな)

 本来なら男子を一人もこちら側に入れず、きゃっきゃうふふな百合ライフを描く予定だったが、まぁ、攻略対象の一人とダンスを踊るくらい……目を瞑ってもいいだろう。

「……殿下が、“悪い男”だっていう事は分かりましたわ」
「え?」
「誉れある皇族からのお誘いですもの、そもそも断るような身分ではございませんものね」

 けっして、けっして。
 皇子とのえっちが気持ちよかったわけではない。
 仕方なく、だ。仕方なく。
 ヘンな男をひっかけてしまったという責任感である。

「精霊祭は、……参加せず、寮室に引きこもる予定でした」

 ふと、そんな事を言ってしまった。
 言い終わって、はっとする。
 イルフィール皇子が怪訝そうな顔で見つめてきたからだ。

「それは……なぜ……?」
「なぜって、学友が……いなかったからですわ……」

 ──俺は“悪役令嬢”だ。
 男子に嫌われ、女子にギリギリ嫌われない程度のムーブを放っていた俺だったが、実は友だちと呼べるような人間は一人もいなかった。

 攻略対象に好かれないためにやっていたことだから、自業自得といえばそう。

 好意的な目を向けられても、ヴィオンゾーラ侯爵令嬢という肩書が邪魔をするのか、表面的な付き合いばかり。向こうが踏み込んだ付き合いを望んでいないのなら、俺だって踏み込めない。そんな勇気もない。

 ──だって、それが陰キャの性根だろうから。

(なにがきゃっきゃうふふな百合ライフだよ……むかしと一緒のぼっちオブぼっちじゃんか……)

「じゃあ今日からは、僕がその学友の一人になるのかな……?」
「は?」
「一緒に参加してくれませんか、シスベルティア嬢。僕は、君と精霊祭を楽しみたい」

 なんだ、こいつ。

「私にあんなことをしておきながら、学友だなんて。なんて“悪い男”なのかしらね」

 でも、なんか。
 悪役令嬢の学友として、皇子のような“悪い男”もアリなんじゃないかと思えるようになってきた。

「ああ、僕は悪い男だからね」

(あー、しゃぁねぇ)

「殿下と一緒に参加しますわ」




 ◇




(前言、撤回するわマジで)

 迎えた精霊祭当日。
 出店などを一通り巡り、パーティに参加してダンスを踊ったあとのこと。

 俺は、一瞬でもこの砂糖皇子を「あ、なんかいいやつかも」と思った事を後悔していた。なぜならあの砂糖皇子は、ことあるごとに俺の体を触ってくるのだ。ちょっと触れて「きゃっ」くらいなら可愛いものだが、皇子のソレはがっつり胸を揉んでくるレベル。いつ外で襲われるか分からないと、無駄にドキドキしてしまった。

 やはり男はだめだ。
 この大事なシスベルティアの体を悪しき男どもの手から守らなければならない。

「男は、だめ。ぜったいに、だめ」

 俺は、改めて心に誓いなおしたのだった。











<完>
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

世話焼き幼馴染と離れるのが辛いので自分から離れることにしました

小村辰馬
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢、エリス・カーマインに転生した。 幼馴染であるアーロンの傍にに居続けると、追放エンドを迎えてしまうのに、原作では俺様だった彼の世話焼きな一面を開花させてしまい、居心地の良い彼のそばを離れるのが辛くなってしまう。 ならば彼の代わりに男友達を作ろうと画策するがーー

この悪役令嬢には悪さは無理です!みんなで保護しましょう!

naturalsoft
恋愛
フレイムハート公爵家令嬢、シオン・クロス・フレイムハートは父に似て目付きが鋭くつり目で、金髪のサラサラヘアーのその見た目は、いかにもプライドの高そうな高飛車な令嬢だが、本当は気が弱く、すぐ涙目でアワアワする令嬢。 そのギャップ萌えでみんなを悶えさせるお話。 シオンの受難は続く。 ちょっと暇潰しに書いたのでサラッと読んで頂ければと思います。 あんまり悪役令嬢は関係ないです。見た目のみ想像して頂けたらと思います。

面食い悪役令嬢はつい欲に負けて性悪クズ王子の手を取ってしまいました。

トウ子
恋愛
悪役令嬢に転生したことに気づいた私は、いつか自分は捨てられるのだろうと、平民落ち予定で人生設計を組んでいた。けれど。 「まぁ、とりあえず、僕と結婚してくれ」 なぜか断罪の代わりに王太子に求婚された。最低屑人間の王太子は、私も恋人も手に入れたいらしい。断りたかったけれど、断れなかった。だってこの人の顔が大好きなんだもの。寝台に押し倒されながらため息をつく。私も結局この人と離れたくなかったのよねぇ……、と。 ムーンライトノベルズでも公開。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

痩せすぎ貧乳令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とあるお屋敷へ呼ばれて行くと、そこには細い細い風に飛ばされそうなお嬢様がいた。 お嬢様の悩みは…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴッドハンドで世界を変えますよ? ********************** 転生侍女シリーズ第三弾。 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 『醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!

転生悪役令嬢と可愛いわんこたち

てんつぶ
恋愛
転生したら悪役令嬢(10)だったので、将来の自分の為に周囲と良い関係を築こう。そう思って行動したはずなのに8年後、何故か攻略対象であるはずの婚約者の王子も義弟も懐きまくる可愛いワンコに仕上がってしまった。頭を抱えるものの、やってくるであろう聖女のためにお邪魔虫は逃亡しましょう――と思っていたのに!? ワンコだったはずの王子と義弟に、強い執着をぶつけられる話。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………

naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます! ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話……… でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ? まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら? 少女はパタンッと本を閉じる。 そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて── アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな! くははははっ!!! 静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。

処理中です...