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本編
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しおりを挟む以来、兄は母のいない時間を狙って電話をかけてくるようになりました。
といっても、兄が一方的に話したいことを話し、わたくしがそれに相槌を打つことが多いのです。医大生である兄はたくさんの友人知人がおりましたので、わたくしのような引きこもりには想像もできないような別次元の話になることが多々ありました。有名企業の役員と会食をしたり、不動産の購入で億単位のお金を動かしたりしたそうです。
兄はとても賢いので、きっとうまく立ち回っているのでしょう。
スケールの大きな話を聞くと、自分の存在があまりにも小さくちっぽけに感じてしまうのです。きっと兄は、それすらも見越しているのでしょう。存在感を現わすことで、わたくしが小さく身を縮めている様を眺めているに違いないのです。
そういえば一つ驚いたことがあるのですが、どうやら兄は亀を飼っているようなのです。蜻蛉や蝶を見るとすぐに翅をつまみあげ、わたくしがオタマジャクシの頃から大切に育てていたヒキガエルを丸焼きにして食べていた兄とは思えません。とても真面目に飼育しているようで、縁日の亀掬いで手に入れてからもう十年以上の付き合いになるそうです。兄から、日光浴をしている亀の写真が送られてきました。日向でじっとする姿は──ミドリガメという種類だそうです──本当に可愛らしいものでした。
母が一日を通して留守の時、兄が自宅に来るようになりました。母がいつ帰ってくるか分からないので嫌だと申したのですが、用意周到な兄は、いつの間にかマンションの合鍵を作っていたのです。
「これでいつでも行けるな」
こちらの体調や気持ち如何に関わらず、兄の気分のまま虐められるという話ですから、わたくしはぞっとしました。
「医大生というのは実につまらないよ。合コンだのコンパだの、女とヤッた回数だの、くだらなさすぎて反吐が出る」
兄は今年度が卒業ですし、卒業試験対策が大変なのでしょう。日頃の鬱憤を晴らすようにわたくしをひとしきり虐めて愉しむのでした。わたくしといえば、兄に虐められるのは慣れておりますので、じっと耐えて嵐が過ぎるのを待つのです。幸いにも、わたくしを虐めている時は機嫌が良いので、流れに身を任せるのでした。
「このまえまで処女だったとは思えないね」
その日もまた、わたくしは部屋で兄に虐められておりました。薄ら笑いを浮かべる兄に、否定も肯定もいたしません。相手の嫌がる様子を見て愉しむ趣向の持ち主ですから、反応するだけ損なのです。
わたくしは己の胎から兄が消えるのを待っていました。しかしどれだけ待っても、異物感が消えないのです。いつもの兄なら、すぐに身支度を整えて家を出ていくのに、今日に限って兄はわたくしのなかに居続けているのでした。
実はこのあと出かける用事があるのです。
身支度をととのえる時間を考えると、準備をしなくてはと思うのでした。
「さっきからちらちら時計を見ているね」
兄の楔が、再び動き始めました。過ぎ去ったばかりの波が押し寄せ、わたくしが頭を振りますと、兄が耳もとで囁いてきます。
「もしかして今日、男と会う?」
「……っ!」
正確には、どうしても紹介したい男性がいるというので、母と二人で会いにいくのです。
「あの人の考えそうなことだよ。千夏を僕に奪われないように、手ごろな男と結婚させるなんて」
「どうして、それを…──ぁ、あっ!」
限界まで引き抜かれた楔が、勢いよく押し込まれました。衝撃から逃げたくとも、身体がぴくりとも動いてくれません。
「学校卒業後に見合いをさせることは分かりきっていた。分かっていてあの人に千夏を任せた。こっちにもいろいろ準備というものがあるし、目下の課題は叔父だったからね」
叔父?
兄と叔父の間にも、一悶着あったということでしょうか。
「そっちはかたをつけたからね、あとはもう時間の問題だ。……もうすぐ、千夏を取り戻せる」
これだけ好き放題にしているのに、わたくしの所有権は自分にはないと言うのです。思考をまとめたくとも、邪魔するように兄が覆いかぶさってくるので、兄を喜ばせるような声をあげることしかできないのでした。
「おまえも僕に飼われたほうが幸せだろう?」
捩じ込まれた楔が深部を虐めてきます。じゅくじゅくと熱くうねる狭道をしつこく擦るので、たまらなくなるのです。
「ぁぅ……あ、っ……、あ、ぁ……っ」
涙がじわりと浮かんできました。汗もかかされていますから、きっと兄は、わたくしを干からびさせるつもりなのでしょう。
「千夏……」
「い、ぁ……ぁ…あ……」
「千夏、顔をこっちに向けな」
指示に従えば良くないことが起こると分かっているのですが、つい従ってしまうのです。後ろから覆いかぶさる兄がわたくしの顔を体ごと引っ張り、唇に噛みつきました。執拗な舌技に翻弄されるのはもちろんなのですが、難儀な体勢をしておりましたため、苦しくなってまいりました。
「兄、さん……っ」
先に果てたのはわたくしでした。
数秒遅れて兄が精を放ち、震えるわたくしに最後までその身を擦りつけてくるのでした。
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