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しおりを挟む「っんんっ!!」
最初は優しくついばむように。
唇を優しく食まれて、甘い痺れが背中を駆け巡る。
離れようとしても、ガッシリと頭を手で押さえられているため、動けない。
(これ……どういう状況かしら。わたくし……アルヴァトラン様とキス、してるの……?)
唇への愛撫は終わらない。
「んっ。あ、るう゛ぁとらんさ、ま……」
「違う」
「?」
「アルだ」
その呼び方は、昔の呼び方だ。
リサリスティも10歳くらいまでは、『アル様』と愛称で呼んでいた。しかし身分差もありリサリスティが恥ずかしくなってきたため『アルヴァトラン様』と呼ぶようになった。
「俺をそう呼べ。リサだけには、そう呼ばれたい」
「あ、る様……」
アルヴァトランはまた小さく微笑し、リサリスティに口づけする。
「んんっ……っっ」
今度はさきほどのような、可愛いキスではない。
深くて、濃厚。リサリスティは口を開かされて、アルヴァトランの熱い舌を迎えた。舌先をゆるゆると舐められ、ゾクゾクする。すがりつくものが欲しくて、とっさにアルヴァトランの服を掴んでしまう。
「可愛いな……」
「あ、る…………ひゃぁんっ!!」
耳のふちを唇でなぞられて、声が出る。
「耳が弱いのか?」
「わ、わかりませ……っっんん」
そのまま耳を舌で舐められる。耳もとで唾液交じりにピチャピチャと水音を鳴らされるのは淫靡で、とても……興奮した。
「あ、るさ、ま、どうして急に……っん」
首筋に唇が這う。
はむ、はむっ、と唇で何度も食まれて、そのたびに身体がビクビクした。
「強引なほうがいいと知ったから、強引な手段に出ることにした」
「え……っ」
手を掴まれ、引き寄せられる。
リサリスティの指先に、アルヴァトランの唇が触れていた。
「好きだ、リサ」
真剣な表情。
真剣な声。
リサリスティの呼吸が、止まりそうになる。
「俺と結婚してくれ」
指に柔らかい感触。ちゅっ、ちゅっ、と、リップ音を立てながら、指一本ずつにキスを落とされる。幻覚、あるいは夢だろうか。初恋の人から、好きと言われて、騎士のように指に接吻を落とされている。熱っぽい瞳で見つめられ、こんどはその唇が──
「あ、るさ……っま!」
また、リサリスティの小さな唇を奪う。
今度はより濃厚に。
歯列をなぞり、求めるように舌先をきゅぅ、と絡める。
粘膜がこすれる感触が心地よい。リサリスティは、どんどん頭がぽわぽわとしていって、キスを受けるたびに瞳が潤んでいく。
「返事はどうした」
「こ、……んな状態じゃ、言え、ないっ」
「そうか。だが、はい以外は認める気はないぞ」
また熱くて、深いキス。
愛が深くて、飲み込まれそうなほど。
舌を求められ、リサリスティに懸命に応えた。
くちゅくちゅとした音が、狭い馬車の中で響く。
「あ、る様、待っ、て」
「待てない。俺は、嫉妬しているんだ。リサが好きだという男に、とても嫉妬している。だからこうやってキスすることで、リサをどれだけ想っているか伝えている」
アルヴァトランの指が、リサリスティの頬を優しく撫でる。
はぁはぁ、と荒い息をと整えてから。
リサリスティは、彼の指を優しく掴んだ。
「わたく、しは……アルヴァトラン様を、お慕いしております」
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